『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第14話 監督官ギルバート、紙の盾と風の刃

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王城前での実演直後、黒外套の男が前に出た。公社監督官――ギルバート卿。
「清掃士ミナ。即応作業の濫用は見過ごせぬ。監督局へ来てもらおう」
「了解。風も紙も、正面から通します」
「言質、取ったぞ」

監督局。石と蝋と閉ざした窓の匂い。
応接室の扉に札――「換気禁止」。
「禁止の札、強いですね。呼吸は許可制?」
「発言に気をつけるがよい」
「気をつけます。空気にも」

長机の向こう、卿と書記が三人。マダム・コルネは傍聴席で無言。
「質疑に入る。王都の風は公社の管理下。勝手な開放は危険だ」
「出口のない風だけが危険。私は“出口を作る”清掃士です」
「口でなく数字で」
「では三分、“即応ミニ”。落とす→拭く→風」

「許可しない」卿が制止する。
コルネが咳払い。「特例“即応作業”、封緘と数字が添付されるなら三分まで認められるはず」
「……よかろう。三分で終わらねば即時中止だ」

一手目、落とす(霧)。
微温湯を梁に薄く。ぱらぱら……黒い粉が机に落ちる。
【清浄度:14→36/行動 -4%】
書記の一人がくしゃみを噛み殺す。カイルは親指を立てて黙ってる。えらい。

二手目、拭く(光磨布)。
窓枠と長机の縁を縦拭き。きゅっ、きゅっ。インクのねばりが切れ、手が滑る。
【清浄度:36→72/被弾 -8%/会心 +1%】
「……視界が一枚、明るい」ノラが小声で感嘆。

天井隅の煤が、もわっと人型に。
「来た、“スス・レター”。封緘粉と煤の化け」
「名称が字面から強い」カイルが囁く。
「仕上げ、風。上抜きはNG、会議録が飛ぶ。横抜きで壁の点検口へ」

風路扇を水平に仰ぎ、隅から隅へ細い“線路”。
もやが線路に吸われ、壁の穴へするり。
私は仕上げ拭きをもう一枚。
【清浄度:72→110(短時間)】
【清浄波:小スタン1.5秒/紙粉落下率 -70%(短時間)】

空気が軽くなり、蝋の匂いが後退した。
「三分、2分38秒。数字、貼ります。記録封緘も」
封緘印がぱちん。写しが二部、机に積まれる。

卿は黙って落ちた煤粒を指で弾き、爪先で点検口を一瞥した。
「……技は認めよう。だが“風の道”は勝手に作らせぬ。明日、公開検証だ。場所は王城の演武場。観衆の前で、お前の“安全”を証明せよ」
「観衆の前、歓迎。動線は任せてください」
「勝負は風速ではなく法だ。肝に銘じるがよい」
「法は紙。紙は整えると早く通る」

コルネが小声で耳打ち。「演武場は広いが出口が高所。横抜きの設計、今夜のうちに」
「了解。横→斜め上で二段構えにします」

――――
【作業結果】
清浄度:14→110(短時間)/所要 2分38秒
方式:落とす(霧)→拭く(光磨布)→風(横抜き)
効果:紙粉落下率 -70%(短時間)/会議体感効率 +25%
――――

視界にお知らせ。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:14
体力:138/138 魔力:108/108 運:24
固有スキル〈お片付け〉Lv4
新規:〈風路設計図〉(現場の“横・上・斜”三系統を簡易図で投影/観衆向け可視化)
既存:光磨布/〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 61%/煤は苦手)
――――

「“風路設計図”、来た。明日、見せて分からせる」
「理論上は観衆が味方」ノラ。
「現実上も。旗が揺れれば、人の心は軽くなる」

廊下に出ると、封緘粉の薄靄はもうない。
明日の演武場――観衆、旗、そして利権。
拭いて、乾かして、風。数字で、風を正当に通す。

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