『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第15話 公開審査、風は数字で語る

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王城前の一角に机が三つ。印章の山。壇上の真ん中で、ギルバート卿が杖を鳴らした。
「清掃士ミナ。王都における“無許可の風通し行為”について、公開審査を行う」
「無許可じゃなく“特例即応”。窓口の封緘あります」
マダム・コルネが小さく会釈。「立会い済み。数字を見せて」

広場は人と屋台でぎゅうぎゅう、上には灰色の層。旗はさっきより元気だが、通りの真ん中だけ息切れしている。
「現状確認。敵は三つ。屋台煙の滞留/観覧と通過の混線/公社の“塞板(仮)”」
「最後の敵、名前からして仮」
「仮の一生は長い。今日は短命で」

「実演は危険だ」卿が眉を吊り上げる。
「危険なのは出口のない風。——三手で終わらせます。群衆整理→拭く→風」
「五分以内に成果が出なければ、板を戻す」
「四分で行きます」
「強気だな」
「強気じゃなく“必要十分”」

「俺は通路」カイルが手を上げる。「左回り一方通行——……へっ、我慢」
「ナイス克己。ノラ、“静音ルート”は無視、今日は“安全”」
「理論上は賛成。現実上も」

一手目、群衆整理。
「赤=進む、黄=止まる、青=屋台」
〈仕分けタグ〉を高く掲げ、地面に矢印を貼る。人の流れが二筋に割れ、屋台前の“溜まり”が縮む。
【清浄度:23→46/行動 -6%】

二手目、拭く。
屋台の前、石畳の油膜を光磨布で縦に通す。きゅっ。足が止まりにくくなり、列のほどける速度が上がる。
【清浄度:46→72/被弾 -8%/会心 +1%】
「踏ん張り効いた!」
「床は中立。裏切ったのは油。犯人は——鍋、そして塞板」

三手目、風。
「入口の上窓→王城門の高窓、“横抜き太線”」
風路扇を水平に構え、すっと一筋。灰色の層がゆっくり持ち上がり、旗が連鎖でぱん、と張った。
同時に、屋台の煙が“料理の手前”で止まる。匂いは客席へ、煤は上へ。
【清浄度:72→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/滞留率 -45%(短時間)】

「数字、締めます」
私は記録面に結果を貼り、封緘を押す。
――――
【作業結果】
清浄度:23→100/所要 3分50秒
動線:進行・観覧・屋台の三分離
効果:滞留率 -45%/転倒事故リスク -30%(体感)
方式:群衆整理→拭く(光磨布)→風(横抜き太線)
――――

見物のざわめきが、拍手に変わる。
卿の口元が固い。「……たまたまだ」
「たまたまが三手で再現できるなら、それは段取りです」
ノラが囁く。「理論上、詰んでる」
「現実上も。——それと“塞板(仮)”は仮のままに。安全固定の記録、添付します」

卿が杖で机を叩く。「風は見えぬ。見えぬ物を信じろと?」
「見えないから、道標を置く。タグと矢印と数字。誰でも同じ結果に届く道です」
コルネが印章を三つ。「公社の立会い認定を付与。以後、王都内の“即応作業”はミナに任せる。ただし数字付きに限る」
卿は舌打ちを飲み込み、外套を翻した。「……覚えておけ。風は気まぐれだ」
「気まぐれでも、通せば変わる」

視界にお知らせ。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:14
体力:138/138 魔力:108/108 運:24
固有スキル〈お片付け〉Lv4
新規:〈案内標(サイン)生成〉(動線タグと連動した立て札・矢印を自動印字/渋滞率さらに-10%)
既存:光磨布/〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 64%/屋台の油は“必要十分”で)
――――

カイルが肩を回す。「空気、軽い。俺の名誉も軽い」
「名誉は重厚でいて」
「むずい」

コルネが耳打ち。「次は王都大掃除祭の許可——公社は“危険だから不許可”で押すはず」
「数字で許可を通す。案内標で人波を操って、事故ゼロでやる」
ノラが旗を見上げる。「理論上は、風が味方」
「現実上も。——拭いて、乾かして、風。祭りの空気、きれいにしよう」

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