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第八話:黒の手と魔導の誓約
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その夜、王都の空気は妙に重たかった。
私たちが滞在する“観察邸”にも、目に見えない緊張が漂っていた。
「……今夜は出歩かない方がいい。妙な気配がする」
レンは窓の外を警戒しながらそう言った。
「王都の裏にある“影”が動いてる。門の力を狙う、黒い連中がね」
サラも低く呟く。
「黒い連中?」
「“黒の手(くろのて)”よ。王国の暗部で動いてる組織。魔術と禁術で暗躍してる……そして、“門使い”の力を奪おうとしてる」
まさか、そんな話が現実にあるなんて。
けれど、“門”が特別な力であるなら――それを狙う者がいてもおかしくない。
*
その夜遅く、私は部屋の外で不穏な気配に気づいた。
足音はない。だが、確かに“結界”が破られる音がした。
「……誰?」
壁の影から現れたのは、黒いフードをかぶった人物だった。
「門の力を持つ者。お前を“保護”するために来た」
男の声は静かで、しかし氷のように冷たい。
「“黒の手”……?」
「我らは世界の均衡を守る者。お前の力が暴走すれば、三つの世界は崩壊する」
その手には、奇妙な魔術具が握られていた。私の“転移”の波長に反応して、門を封じる装置らしい。
「従え。でなければ、消えるのは――この世界のほうだ」
「……っ!」
反射的に叫ぼうとした瞬間、廊下に風が駆けた。
「カスミ、伏せろ!」
レンの剣が閃き、男の手から魔術具がはじけ飛んだ。サラもすぐさま背後から飛びかかる。
「来るなら正面から来なさいよ、卑怯者!」
三人がかりでようやく相手を追い払ったが、確信した。
――この力は、もう“安全”じゃない。
*
翌朝、魔術院の副長リリアが再び私の前に現れた。
「あなたに“魔導誓約”を結ぶことを提案します」
「……誓約?」
「門の力を、無闇に干渉されないように守る“保護魔術”よ。代償として、あなたは王都と“契約”することになる」
それは、見方を変えれば“監視の強化”でもあった。
だけど、何もしなければ、“黒の手”のような連中に奪われるかもしれない。
私は迷いながらも、答えた。
「……私、自分の力を誰かのために使いたい。でも、誰にも操られたくはない。だから、その誓約……“私の条件”をつけさせて」
リリアは微笑んだ。「聞きましょう」
「私が“選ぶ”。この力をどう使うか、誰と歩くか、私が決めるって誓えるなら――受ける」
しばらくの沈黙のあと、彼女は静かに頷いた。
「その覚悟に、魔術院は誓いましょう」
*
その夜、誓約の儀が行われた。
魔術陣の中心に立ち、私の手のひらに刻まれる“光の紋章”。
リリアの声が響く。
「ここに、“門の継承者”カスミ・フジサワの魔導誓約を認定する」
――同時に、私の中の“何か”が、目覚める感覚があった。
力が暴れるのではなく、“寄り添ってくる”。
それはまるで、私自身の中に眠っていた、もう一人の“可能性”だった。
*
レンとサラは誓約の儀を見守っていた。
「これで少しはマシか……」
「でも安心しちゃダメ。敵は消えてないし、次はきっと本気で来るよ」
私は頷いた。
「うん。でも私は逃げない。この世界と、地球の両方を――守りたい」
そして心の中で、強く願った。
――“門”よ。
私はまだ、あなたのすべてを知らない。
でもその力を、絶望じゃなく希望に変えたい。
それが、異世界に導かれた私の“選択”だった。
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私たちが滞在する“観察邸”にも、目に見えない緊張が漂っていた。
「……今夜は出歩かない方がいい。妙な気配がする」
レンは窓の外を警戒しながらそう言った。
「王都の裏にある“影”が動いてる。門の力を狙う、黒い連中がね」
サラも低く呟く。
「黒い連中?」
「“黒の手(くろのて)”よ。王国の暗部で動いてる組織。魔術と禁術で暗躍してる……そして、“門使い”の力を奪おうとしてる」
まさか、そんな話が現実にあるなんて。
けれど、“門”が特別な力であるなら――それを狙う者がいてもおかしくない。
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その夜遅く、私は部屋の外で不穏な気配に気づいた。
足音はない。だが、確かに“結界”が破られる音がした。
「……誰?」
壁の影から現れたのは、黒いフードをかぶった人物だった。
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男の声は静かで、しかし氷のように冷たい。
「“黒の手”……?」
「我らは世界の均衡を守る者。お前の力が暴走すれば、三つの世界は崩壊する」
その手には、奇妙な魔術具が握られていた。私の“転移”の波長に反応して、門を封じる装置らしい。
「従え。でなければ、消えるのは――この世界のほうだ」
「……っ!」
反射的に叫ぼうとした瞬間、廊下に風が駆けた。
「カスミ、伏せろ!」
レンの剣が閃き、男の手から魔術具がはじけ飛んだ。サラもすぐさま背後から飛びかかる。
「来るなら正面から来なさいよ、卑怯者!」
三人がかりでようやく相手を追い払ったが、確信した。
――この力は、もう“安全”じゃない。
*
翌朝、魔術院の副長リリアが再び私の前に現れた。
「あなたに“魔導誓約”を結ぶことを提案します」
「……誓約?」
「門の力を、無闇に干渉されないように守る“保護魔術”よ。代償として、あなたは王都と“契約”することになる」
それは、見方を変えれば“監視の強化”でもあった。
だけど、何もしなければ、“黒の手”のような連中に奪われるかもしれない。
私は迷いながらも、答えた。
「……私、自分の力を誰かのために使いたい。でも、誰にも操られたくはない。だから、その誓約……“私の条件”をつけさせて」
リリアは微笑んだ。「聞きましょう」
「私が“選ぶ”。この力をどう使うか、誰と歩くか、私が決めるって誓えるなら――受ける」
しばらくの沈黙のあと、彼女は静かに頷いた。
「その覚悟に、魔術院は誓いましょう」
*
その夜、誓約の儀が行われた。
魔術陣の中心に立ち、私の手のひらに刻まれる“光の紋章”。
リリアの声が響く。
「ここに、“門の継承者”カスミ・フジサワの魔導誓約を認定する」
――同時に、私の中の“何か”が、目覚める感覚があった。
力が暴れるのではなく、“寄り添ってくる”。
それはまるで、私自身の中に眠っていた、もう一人の“可能性”だった。
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レンとサラは誓約の儀を見守っていた。
「これで少しはマシか……」
「でも安心しちゃダメ。敵は消えてないし、次はきっと本気で来るよ」
私は頷いた。
「うん。でも私は逃げない。この世界と、地球の両方を――守りたい」
そして心の中で、強く願った。
――“門”よ。
私はまだ、あなたのすべてを知らない。
でもその力を、絶望じゃなく希望に変えたい。
それが、異世界に導かれた私の“選択”だった。
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