『ひまりのスローライフ便り 〜異世界でもふもふに囲まれて〜』

チャチャ

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第19話「森のはずれの、もう一つの扉」

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朝の陽ざしが、やわらかくキッチンの窓を照らしていた。
ほくほくの焼きたてパンと、ミルクたっぷりのスープ。カオリが摘んできたハーブを入れたサラダ。今日も穏やかで、やさしい朝。

「ふふ、まるまるちゃん、おかわり早すぎ~」

ひまりは笑いながら、皿にベリー入りのパンをもう一切れ乗せる。
まるまるは「ぷきゅっ!」とご機嫌で、それをもふもふの手で押さえてむしゃむしゃとかじっていた。

カオリが少しだけ神妙な顔で、食卓に一枚の古地図を広げた。

「昨日の手紙のこと……ずっと気になっててね。少し調べたら、この辺りに“封じられた扉”があるって古文書に書いてあったの」

「扉? どこに通じてるのかな……?」

「わからない。けれど、たぶんそれは、かつて異界とこちらをつなぐ“門”だったんだと思うの。今はもう、閉ざされているはずだけど……」

「そこに、わたしの秘密とか、カオリさんの過去の手がかりが?」

「可能性はあるわ」


---

午前中いっぱいを使って、ひまりたちは森のはずれまで足を運んだ。
霧がかった小道を抜けると、湿った岩場のあたりにぽっかりと開いた空間がある。

「ここだと思う」

カオリが岩をそっと押すと、表面にうっすらと文様が浮かび上がった。
幾何学的な紋と、中央に描かれた月と花の模様。

「……扉だ」

ひまりがそっと手を当てた瞬間、空気がすぅっと冷たくなる。

「まるまるちゃん?」

不意に、まるまるが足元から前に出て、扉の前に座った。
そして、短く「ぷ」と鳴いたかと思うと――その模様が一瞬だけ淡く光った。

「今のって……まるまるが?」

「彼女、やっぱりただのもふもふじゃないのかもしれないわね」

カオリが小さくつぶやいた。


---

結局、扉は開かなかった。けれど、確かに何かが反応したのだ。

帰り道、ひまりはぽつりとつぶやいた。

「まるまるちゃんは、もしかして、わたしをこの世界に“導く”ために来てくれた存在なのかな」

まるまるは、「ぷきゅ」と一声返し、ひまりの足にくっついて歩いた。


---

その夜。ひまりはまた夢を見た。

――やわらかな風が吹く草原。花の揺れる丘の上。
その中央に、ひとりの女性が立っていた。長い髪。笑った目。どこか懐かしい、あたたかな雰囲気。

「……お母さん?」

思わず声が出る。けれどその瞬間、風が吹き抜け、女性の姿はかき消えた。

目を覚ますと、まるまるが横でくっついていた。
寝ぼけ眼で見上げるひまりに、「ぷきゅ」と小さく鳴く。

「……いつか、また夢で会えるかな」

ひまりはそうつぶやきながら、まるまるの頭をなでた。

ほんの少しずつだけれど、何かが動き出している。
そう感じた、静かな夜だった――。


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