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3章「精霊の記憶と、禁忌の残響」
第13話「再封の扉と、土に眠る願い」
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ルマ鉱山帯の朝は、冷たく澄んだ空気に包まれていた。
長年使われていなかった坑道の入り口は、ツタと苔に覆われており、まるでこの場所そのものが眠っているように静まり返っていた。
「……ここが、“聖域の入り口”?」
俺は地図と照らし合わせながら、苔むした岩壁の間にぽっかりと口を開けた隙間を見つめた。
フェリスが背中のランタンを揺らしながら言った。
「うん。旧王国時代、精霊鉱を採掘していたって記録が残ってた場所。地形図では“坑道跡”扱いになってるけど、本当は――」
「精霊の祠へと続く、封印の扉がある」
セリューナが言葉を継いだ。
風の精霊・セフィアが肩に舞い降りてきて、小さく囁く。
「空気が……重い。下のほうで、魔力の揺れが起きてる」
「……嫌な揺らぎだ。“歪んだ魔力”の残滓が、土の中に沈んでる」
俺は腰の剣を手で確かめる。
敵が出るなら、地中から。汚染された魔獣か、あるいは――
*
坑道の内部は驚くほど広く、複数の採掘路が枝分かれするように伸びていた。
岩壁には無数の古代文字が刻まれており、魔力を帯びた鉱石が青白く光を放っていた。
セリューナがそれを見て、そっと目を細める。
「……これ、精霊石の原鉱。しかも、かなり純度が高い。かつて、この鉱山は“精霊との接触地”だったはず」
「ということは、ここに……ロゥナの“本体”が?」
セリューナは頷き、岩壁に触れた。
「この先にあるわ。“再封の扉”――ロゥナが、自分の記憶ごと封印した場所」
「じゃあ、急ごう!」
そう言いかけた瞬間、地面が震えた。
地の奥から、“ゴゴゴッ”と不穏な音が響く。
岩の割れ目から、黒い泥のようなものが滲み出し……その中から、異形の四つ脚が現れた。
「……っ、来たか!」
泥の魔物――精霊鉱から漏れ出た“穢れ”が魔力を吸い込み、変異した存在。過去にも偽核の近くで見かけたが、こいつは明らかに“本格的”だった。
「レク、こっちに引きつけて! フェリス、後方から援護!」
「了解っ!」
俺は剣を抜き、咆哮を上げる魔物に立ち向かう。
――この戦いは、まだ“入口”にすぎない。
だが、俺たちは確かに進んでいる。精霊の記憶へと。
✳✳✳
魔物の形状は、まるで泥と鉱石が融合したようだった。四つ脚の全身がどろどろと流動し、岩のような背殻から紫の瘴気が立ち上っている。
「突進してくるぞ、気をつけろ!」
俺は横に飛び、泥の牙が地面をえぐる音を背中で聞いた。
「こいつ、動きが重そうに見えて意外と速い……!」
フェリスが火球を飛ばすも、泥に包まれて相殺される。
「物理も魔法も通りにくい相手……でも、弱点はあるはず」
セリューナが指を弾くと、風の刃が複雑に交差し、魔物の側面に小さな裂け目を刻んだ。
「いまの……通ったぞ、風属性が効くのか?」
「いや、“魔力の流れ”に逆らった一撃だったから。内部の核がまだ安定してないの。そこを狙って!」
俺は深呼吸して、足元に力を込めた。
この世界に来てから、何度も戦ってきた。
だが、この魔物は“精霊の聖域”を穢す存在――見逃すわけにはいかない。
「スキル《断ち斬り・震》!」
剣に力が宿ると同時に、地面を這うような震動が魔物の足元へと走る。
瞬間、泥の脚が崩れ、体勢を崩した。
「今だ、フェリス!」
「っしゃあ、いっけーっ!」
炎の魔法《クリムゾン・スパイク》が一直線に魔物の口へ突き刺さり、紫煙を撒き散らして爆ぜる。
断末魔のような音を上げ、魔物は地面に崩れ落ちた。
黒い泥がしゅうしゅうと音を立てて消え、残ったのは硬質な黒い鉱石の欠片。
「これ……やっぱり、“偽核”の一部か」
セリューナが慎重に布で包みながら呟いた。
「でも、さっきの反応。どうも人工的に“ここ”に撒かれた気がする」
「つまり、誰かが意図的に“封印の扉”に近づかせようとしてる?」
「……かもしれない。精霊の記憶を辿る俺たちを“誘導”してる可能性もある」
そうだとすれば、ますます見過ごせない。
俺たちは、慎重に“扉”へと進む準備を整えた。
「……レク」
セフィアがそっと俺の肩に触れる。
「この奥には、“土の精霊”だけじゃない。きっと、“もっと深い記憶”がある」
「うん。それを、確かめに行こう」
俺たちは再び、封印の奥へと歩を進めた。
✳✳✳
坑道をさらに奥へ進むと、壁面に刻まれた文字が徐々に変化していった。
古代語でもなく、現代語でもない――まるで“精霊が紡いだ象形文字”のような印が並んでいる。
その先に現れたのは、高さ三メートルはある巨大な石扉だった。
中央には精霊核を模した紋章が浮かび、その周囲に四つの属性を示す印――風・水・火・土が重なっていた。
「……これが“再封の扉”。ロゥナが自身の記憶と力を封じた場所」
セリューナが、扉に手をかざす。
石の表面がかすかに脈動し、彼女の魔力に反応するように光を放つ。
「――《精霊認証起動、再封コード照合開始》」
機械のような冷たい声が坑道に響く。
「認証……まるで古代遺跡の自動装置みたいだな」
「そう。この扉は、精霊の意思だけじゃ開かない。“精霊と契約した者の鍵”が必要なの」
セリューナが俺を見る。俺は静かに頷き、扉の前へ進み出た。
「ロゥナ。俺は、君の記憶を見た。今はまだ契約者ではないけれど、君の声を、想いを感じた」
そう言って、俺はそっと手を扉に触れさせた。
――《契約未完了、補助認証開始》
――《“水の精霊”セリューナとの契約を確認》
――《補助ルート認証――承認》
石扉の中心が輝き、土色の光が放たれる。
ゆっくりと、扉は左右に分かれ、奥の空間へと続く通路が現れた。
内部はひんやりとしており、壁面には大地の意匠が施された美しい文様が広がっていた。
「うわぁ……まるで、地下神殿みたい」
フェリスが感嘆の声を漏らす。
通路の奥には、“精霊石版”と思しき巨大な柱状の装置が立っていた。
周囲には、かつて祭祀が行われていたであろう祭壇跡と、複数の壊れた精霊核容器が転がっている。
「この場所……やっぱり、精霊の力を“人工的に使おうとした”跡だ」
セリューナが、壊れた容器に指を滑らせながら呟いた。
「でも、なぜこんな装置が精霊の祠に……」
俺が言いかけたとき――
《再生装置起動。精霊記録“断絶の記憶”を展開します》
空間がきらめき、光が石版の表面に浮かび上がった。
映し出されたのは――大地が割れ、炎と瓦礫に沈む、かつての“王国の終焉”だった。
✳✳✳✳
光の粒が渦巻くように空間を満たし、映像が浮かび上がる。
そこに広がっていたのは、広大な大地を切り裂く巨大な亀裂。そして――その亀裂の中から這い出るように現れる、異形の影。
「な、何これ……っ」
フェリスが震える声で呟く。
影の中心には、明らかに“精霊核”のような輝きがあったが、それは禍々しい闇色に濁っていた。
《記録再生中――王歴217年、土精霊との契約者“ガルド・レイス”による禁忌の儀式開始》
《契約者は、土の精霊“ロゥナ”を利用し、精霊核を人工的に強化・分離させることを試みた》
《結果――ロゥナの意識の一部が暴走、地脈に干渉。大地の崩壊現象発生》
《王国、南部地域壊滅》
「……あれが、“ロゥナの怒り”か」
セリューナが顔を曇らせる。
「違う。“怒り”じゃない。……“哀しみ”だ」
俺は、画面の中で崩れ落ちるロゥナの姿を見つめた。
大地と同化したかのように沈んでいく彼女は、まるで泣いているようだった。
――“なぜ裏切ったの?”と。
「……土の精霊は、ずっと待ってたんだ。“信じられる誰か”を」
その時、俺の中で何かが共鳴する音がした。
――《スキル進化条件達成》
――《スキル《大地の共鳴》が《精霊同調・地》へ進化》
――《新効果:精霊の記憶との接続、一時再現可能》
「き、来たっ……! またスキルが進化した!」
フェリスが目を丸くする。
「でも今回は、“力”だけじゃない。“記憶”にアクセスできるって……?」
「たぶん……ロゥナが、俺に“思い出してほしい”んだと思う。この世界がどうやって歪んできたのか――そして、どうすれば戻せるか」
静かに手を胸に当てたそのとき。
石版の光が消え、最後にひとつの音声が流れた。
――《……あなたが、“本当の契約者”でありますように。わたしは、ここで待っています》
それは、温かくも切ない、願いに似た声だった。
✳✳✳
石版の光が完全に消えたあと、坑道の奥に風が吹き込んできた。
閉ざされていたはずの壁がゆっくりと開き、地下深くへと続く階段が現れる。
「……ここが、“契約の祭壇”へ通じる道?」
セリューナが頷き、慎重に階段へと足を踏み出す。
「土の精霊は、記憶を閉ざすと同時に、自らの本体を深く地中に沈めたの。“二度と裏切られぬよう”に」
「だから、ここまで来なきゃたどり着けなかったんだな……」
俺たちは足元に注意しながら、重い空気の中をゆっくりと降りていく。
地下は驚くほど広く、ところどころに古代の構造物や、鉱石で出来た彫像が並んでいた。
その彫像のいくつかは人型で、顔が削り取られているものもあった。
「……これ、もしかして――」
「“契約を破った者”への警告よ。精霊は優しいけど、裏切りには敏感。特に、ロゥナは……」
セリューナの言葉に俺は頷いた。
その時だった。足元の大地が震え、何かが地中から這い出すような音が響く。
「っ、また来たか……!」
床を突き破って現れたのは、全身が石と鉱石で構成された巨人だった。
精霊鉱の塊が剣のように変形し、右腕に融合している。
「……これは、“試練の守護者”か!」
セフィアが風の気配を研ぎ澄ます。
「強いよ、レク。しかも、魔法障壁を纏ってる。これは、ただのゴーレムじゃない」
「やるしかないな……!」
俺は剣を握り直し、対峙した。
「セリューナ、サポート頼む。フェリスは遠距離から、セフィアは風で攪乱を!」
「了解!」
「了解っ!」
――スキル《精霊同調・地》、発動!
俺の身体に、大地の力が流れ込んでくる。
足元が安定し、全身の感覚が“地脈”とつながっていく感覚。
「今なら……“この大地”の流れが読める!」
守護者が岩の剣を振り下ろす。
俺はその軌道を先読みして――わずかに横へステップ。
剣が地面を裂いた瞬間、隙が生まれる。
「――《大地斬・裂動》!」
精霊の力を纏った一撃が、守護者の腕を断ち落とす。
爆音とともに鉱石が砕け、守護者の体が一瞬、崩れかけた。
「今だ、畳みかけるよっ!」
フェリスの火球が連続で命中し、セフィアの風が追い打ちをかける。
最後に俺が一閃を加え――
守護者は、地面に崩れ落ちた。
石の砕ける音とともに、奥の扉がゆっくりと開いた。
その先に広がっていたのは、まるで巨大な地下庭園のような空間だった。
そして、中央に佇む“芽吹きの石像”――大地の精霊・ロゥナの本体が、そこにあった。
✳✳✳✳
崩れた守護者の奥――そこには、思わず息を呑むような光景が広がっていた。
天井からわずかに差し込む地中光を受けて、無数の鉱石が淡く輝く。
その中央に、一本の古木が根を張っていた。
……いや、正確には木ではない。
その“幹”は、精霊鉱の集合体でできた、精霊そのものだった。
「……ロゥナ……」
俺は一歩、また一歩と近づく。
その“幹”の中に、人の形をした像が浮かんでいた。
土色の髪と、穏やかな顔立ちをした少女の姿。
それは、以前“夢の中”で見たあの少女と同じだった。
「ここが、ロゥナの本体……」
セリューナが呟く。
「でも、完全には目覚めてない。“力”だけを残して、心はまだ閉じたまま」
そっと手を差し出す。
「ロゥナ。君の記憶を見た。君が、どれほど傷つき、どれほど孤独だったのかも……」
静かに触れたその瞬間――
《契約試行・条件未満――仮契約モードを起動します》
機械のような音声とともに、鉱石の幹が脈打つ。
中に浮かぶロゥナの姿が、一瞬こちらを向いて目を開けた。
――「……あなたは、“あのひと”とは、違うの……?」
「俺は、君を道具にしない。……君の意思を尊重するよ。
この世界の未来を、精霊たちと一緒に考えたい。だから――」
《仮契約成立》
《スキル《精霊同調・地》が《仮契約:ロゥナ》に進化》
《効果:大地属性魔法の一時展開、鉱石創造/補修、地脈感知》
《ロゥナの意識片がレクと接続開始》
「……ありがとう」
それは、確かに“声”だった。
ロゥナの姿は鉱石の中に戻ったが、彼女の表情は、どこか安堵に満ちていた。
セフィアとセリューナも、静かに頷く。
「レク……ロゥナは、あんたに“希望”を見てるんだよ」
俺は小さく頷いた。
「なら、その期待に応えるよ。精霊たちの願いも、想いも――全部、未来に繋げるために」
こうして俺たちは、土の精霊・ロゥナと“仮契約”を交わし、新たな一歩を踏み出した。
だが、それは同時に――
この世界の“深層”に隠された真実へと繋がる扉を開いた瞬間でもあった。
✳✳✳✳
仮契約の儀が終わったあとも、ロゥナの本体はしばらく静かな光を灯し続けていた。
セリューナが慎重に魔力の波を測る。
「ロゥナの意識片、今はレクと接続したままだけど……いずれ“完全覚醒”するかもね」
「そのときは、正式な契約者として――また会える、だろうな」
俺は鉱石の幹をそっと見上げながら呟いた。
この地下神殿のような空間には、まだ精霊の残滓が漂っており、慎重に観察を進める必要がある。
祭壇の裏手には古びた木箱が残されており、フェリスが興味津々に覗き込んでいた。
「ねえ、これ……手紙? 古い文が巻物みたいに残ってる!」
「見せて」
俺が受け取って広げると、そこには丁寧な文字でこう書かれていた。
――“この地を訪れる者へ”――
――精霊を傷つけたこと、我が一族は決して忘れぬ。
だが、もし誰かが精霊の意思に耳を傾ける者ならば――
どうか、この場所で何かを感じ取ってほしい。
かつて、我らが失った“共存”という可能性を。
「……これ、ガルド・レイスの子孫か?」
セリューナが目を細める。
「かもね。少なくとも、土の精霊と人の間に、後悔があったことは確か」
フェリスが空を見上げる。
「じゃあさ、ロゥナが本当に目を覚ましたとき……もう一度、“共に歩む”ことができたらいいね」
「ああ。そういう未来を、俺たちで作っていこう」
こうして俺たちは、再び地上へと戻った。
坑道の外には風が吹き、空がどこまでも高く青かった。
「レク、次はどこに向かうの?」
セフィアがふわりと肩に乗る。
「“風の大地”――リュース高原だ」
「とうとう、あたしの故郷だね」
セフィアの目がわずかに輝く。
「きっとまた、試練が待ってる。でも……今の俺たちなら、大丈夫だよな」
「当然でしょ。だって私たち、“チーム・レク”だもん!」
フェリスがにかっと笑い、セリューナもふっと笑みを浮かべた。
そう、俺たちはまだ旅の途中だ。
精霊たちと出会い、過去の記憶を知り、世界の謎を紐解いていく――
その全てが、いつかきっと、この世界の未来を変える力になると信じて。
――次なる旅路は、風が吹き抜ける高原へ。
俺たちは再び、歩き始めた。
長年使われていなかった坑道の入り口は、ツタと苔に覆われており、まるでこの場所そのものが眠っているように静まり返っていた。
「……ここが、“聖域の入り口”?」
俺は地図と照らし合わせながら、苔むした岩壁の間にぽっかりと口を開けた隙間を見つめた。
フェリスが背中のランタンを揺らしながら言った。
「うん。旧王国時代、精霊鉱を採掘していたって記録が残ってた場所。地形図では“坑道跡”扱いになってるけど、本当は――」
「精霊の祠へと続く、封印の扉がある」
セリューナが言葉を継いだ。
風の精霊・セフィアが肩に舞い降りてきて、小さく囁く。
「空気が……重い。下のほうで、魔力の揺れが起きてる」
「……嫌な揺らぎだ。“歪んだ魔力”の残滓が、土の中に沈んでる」
俺は腰の剣を手で確かめる。
敵が出るなら、地中から。汚染された魔獣か、あるいは――
*
坑道の内部は驚くほど広く、複数の採掘路が枝分かれするように伸びていた。
岩壁には無数の古代文字が刻まれており、魔力を帯びた鉱石が青白く光を放っていた。
セリューナがそれを見て、そっと目を細める。
「……これ、精霊石の原鉱。しかも、かなり純度が高い。かつて、この鉱山は“精霊との接触地”だったはず」
「ということは、ここに……ロゥナの“本体”が?」
セリューナは頷き、岩壁に触れた。
「この先にあるわ。“再封の扉”――ロゥナが、自分の記憶ごと封印した場所」
「じゃあ、急ごう!」
そう言いかけた瞬間、地面が震えた。
地の奥から、“ゴゴゴッ”と不穏な音が響く。
岩の割れ目から、黒い泥のようなものが滲み出し……その中から、異形の四つ脚が現れた。
「……っ、来たか!」
泥の魔物――精霊鉱から漏れ出た“穢れ”が魔力を吸い込み、変異した存在。過去にも偽核の近くで見かけたが、こいつは明らかに“本格的”だった。
「レク、こっちに引きつけて! フェリス、後方から援護!」
「了解っ!」
俺は剣を抜き、咆哮を上げる魔物に立ち向かう。
――この戦いは、まだ“入口”にすぎない。
だが、俺たちは確かに進んでいる。精霊の記憶へと。
✳✳✳
魔物の形状は、まるで泥と鉱石が融合したようだった。四つ脚の全身がどろどろと流動し、岩のような背殻から紫の瘴気が立ち上っている。
「突進してくるぞ、気をつけろ!」
俺は横に飛び、泥の牙が地面をえぐる音を背中で聞いた。
「こいつ、動きが重そうに見えて意外と速い……!」
フェリスが火球を飛ばすも、泥に包まれて相殺される。
「物理も魔法も通りにくい相手……でも、弱点はあるはず」
セリューナが指を弾くと、風の刃が複雑に交差し、魔物の側面に小さな裂け目を刻んだ。
「いまの……通ったぞ、風属性が効くのか?」
「いや、“魔力の流れ”に逆らった一撃だったから。内部の核がまだ安定してないの。そこを狙って!」
俺は深呼吸して、足元に力を込めた。
この世界に来てから、何度も戦ってきた。
だが、この魔物は“精霊の聖域”を穢す存在――見逃すわけにはいかない。
「スキル《断ち斬り・震》!」
剣に力が宿ると同時に、地面を這うような震動が魔物の足元へと走る。
瞬間、泥の脚が崩れ、体勢を崩した。
「今だ、フェリス!」
「っしゃあ、いっけーっ!」
炎の魔法《クリムゾン・スパイク》が一直線に魔物の口へ突き刺さり、紫煙を撒き散らして爆ぜる。
断末魔のような音を上げ、魔物は地面に崩れ落ちた。
黒い泥がしゅうしゅうと音を立てて消え、残ったのは硬質な黒い鉱石の欠片。
「これ……やっぱり、“偽核”の一部か」
セリューナが慎重に布で包みながら呟いた。
「でも、さっきの反応。どうも人工的に“ここ”に撒かれた気がする」
「つまり、誰かが意図的に“封印の扉”に近づかせようとしてる?」
「……かもしれない。精霊の記憶を辿る俺たちを“誘導”してる可能性もある」
そうだとすれば、ますます見過ごせない。
俺たちは、慎重に“扉”へと進む準備を整えた。
「……レク」
セフィアがそっと俺の肩に触れる。
「この奥には、“土の精霊”だけじゃない。きっと、“もっと深い記憶”がある」
「うん。それを、確かめに行こう」
俺たちは再び、封印の奥へと歩を進めた。
✳✳✳
坑道をさらに奥へ進むと、壁面に刻まれた文字が徐々に変化していった。
古代語でもなく、現代語でもない――まるで“精霊が紡いだ象形文字”のような印が並んでいる。
その先に現れたのは、高さ三メートルはある巨大な石扉だった。
中央には精霊核を模した紋章が浮かび、その周囲に四つの属性を示す印――風・水・火・土が重なっていた。
「……これが“再封の扉”。ロゥナが自身の記憶と力を封じた場所」
セリューナが、扉に手をかざす。
石の表面がかすかに脈動し、彼女の魔力に反応するように光を放つ。
「――《精霊認証起動、再封コード照合開始》」
機械のような冷たい声が坑道に響く。
「認証……まるで古代遺跡の自動装置みたいだな」
「そう。この扉は、精霊の意思だけじゃ開かない。“精霊と契約した者の鍵”が必要なの」
セリューナが俺を見る。俺は静かに頷き、扉の前へ進み出た。
「ロゥナ。俺は、君の記憶を見た。今はまだ契約者ではないけれど、君の声を、想いを感じた」
そう言って、俺はそっと手を扉に触れさせた。
――《契約未完了、補助認証開始》
――《“水の精霊”セリューナとの契約を確認》
――《補助ルート認証――承認》
石扉の中心が輝き、土色の光が放たれる。
ゆっくりと、扉は左右に分かれ、奥の空間へと続く通路が現れた。
内部はひんやりとしており、壁面には大地の意匠が施された美しい文様が広がっていた。
「うわぁ……まるで、地下神殿みたい」
フェリスが感嘆の声を漏らす。
通路の奥には、“精霊石版”と思しき巨大な柱状の装置が立っていた。
周囲には、かつて祭祀が行われていたであろう祭壇跡と、複数の壊れた精霊核容器が転がっている。
「この場所……やっぱり、精霊の力を“人工的に使おうとした”跡だ」
セリューナが、壊れた容器に指を滑らせながら呟いた。
「でも、なぜこんな装置が精霊の祠に……」
俺が言いかけたとき――
《再生装置起動。精霊記録“断絶の記憶”を展開します》
空間がきらめき、光が石版の表面に浮かび上がった。
映し出されたのは――大地が割れ、炎と瓦礫に沈む、かつての“王国の終焉”だった。
✳✳✳✳
光の粒が渦巻くように空間を満たし、映像が浮かび上がる。
そこに広がっていたのは、広大な大地を切り裂く巨大な亀裂。そして――その亀裂の中から這い出るように現れる、異形の影。
「な、何これ……っ」
フェリスが震える声で呟く。
影の中心には、明らかに“精霊核”のような輝きがあったが、それは禍々しい闇色に濁っていた。
《記録再生中――王歴217年、土精霊との契約者“ガルド・レイス”による禁忌の儀式開始》
《契約者は、土の精霊“ロゥナ”を利用し、精霊核を人工的に強化・分離させることを試みた》
《結果――ロゥナの意識の一部が暴走、地脈に干渉。大地の崩壊現象発生》
《王国、南部地域壊滅》
「……あれが、“ロゥナの怒り”か」
セリューナが顔を曇らせる。
「違う。“怒り”じゃない。……“哀しみ”だ」
俺は、画面の中で崩れ落ちるロゥナの姿を見つめた。
大地と同化したかのように沈んでいく彼女は、まるで泣いているようだった。
――“なぜ裏切ったの?”と。
「……土の精霊は、ずっと待ってたんだ。“信じられる誰か”を」
その時、俺の中で何かが共鳴する音がした。
――《スキル進化条件達成》
――《スキル《大地の共鳴》が《精霊同調・地》へ進化》
――《新効果:精霊の記憶との接続、一時再現可能》
「き、来たっ……! またスキルが進化した!」
フェリスが目を丸くする。
「でも今回は、“力”だけじゃない。“記憶”にアクセスできるって……?」
「たぶん……ロゥナが、俺に“思い出してほしい”んだと思う。この世界がどうやって歪んできたのか――そして、どうすれば戻せるか」
静かに手を胸に当てたそのとき。
石版の光が消え、最後にひとつの音声が流れた。
――《……あなたが、“本当の契約者”でありますように。わたしは、ここで待っています》
それは、温かくも切ない、願いに似た声だった。
✳✳✳
石版の光が完全に消えたあと、坑道の奥に風が吹き込んできた。
閉ざされていたはずの壁がゆっくりと開き、地下深くへと続く階段が現れる。
「……ここが、“契約の祭壇”へ通じる道?」
セリューナが頷き、慎重に階段へと足を踏み出す。
「土の精霊は、記憶を閉ざすと同時に、自らの本体を深く地中に沈めたの。“二度と裏切られぬよう”に」
「だから、ここまで来なきゃたどり着けなかったんだな……」
俺たちは足元に注意しながら、重い空気の中をゆっくりと降りていく。
地下は驚くほど広く、ところどころに古代の構造物や、鉱石で出来た彫像が並んでいた。
その彫像のいくつかは人型で、顔が削り取られているものもあった。
「……これ、もしかして――」
「“契約を破った者”への警告よ。精霊は優しいけど、裏切りには敏感。特に、ロゥナは……」
セリューナの言葉に俺は頷いた。
その時だった。足元の大地が震え、何かが地中から這い出すような音が響く。
「っ、また来たか……!」
床を突き破って現れたのは、全身が石と鉱石で構成された巨人だった。
精霊鉱の塊が剣のように変形し、右腕に融合している。
「……これは、“試練の守護者”か!」
セフィアが風の気配を研ぎ澄ます。
「強いよ、レク。しかも、魔法障壁を纏ってる。これは、ただのゴーレムじゃない」
「やるしかないな……!」
俺は剣を握り直し、対峙した。
「セリューナ、サポート頼む。フェリスは遠距離から、セフィアは風で攪乱を!」
「了解!」
「了解っ!」
――スキル《精霊同調・地》、発動!
俺の身体に、大地の力が流れ込んでくる。
足元が安定し、全身の感覚が“地脈”とつながっていく感覚。
「今なら……“この大地”の流れが読める!」
守護者が岩の剣を振り下ろす。
俺はその軌道を先読みして――わずかに横へステップ。
剣が地面を裂いた瞬間、隙が生まれる。
「――《大地斬・裂動》!」
精霊の力を纏った一撃が、守護者の腕を断ち落とす。
爆音とともに鉱石が砕け、守護者の体が一瞬、崩れかけた。
「今だ、畳みかけるよっ!」
フェリスの火球が連続で命中し、セフィアの風が追い打ちをかける。
最後に俺が一閃を加え――
守護者は、地面に崩れ落ちた。
石の砕ける音とともに、奥の扉がゆっくりと開いた。
その先に広がっていたのは、まるで巨大な地下庭園のような空間だった。
そして、中央に佇む“芽吹きの石像”――大地の精霊・ロゥナの本体が、そこにあった。
✳✳✳✳
崩れた守護者の奥――そこには、思わず息を呑むような光景が広がっていた。
天井からわずかに差し込む地中光を受けて、無数の鉱石が淡く輝く。
その中央に、一本の古木が根を張っていた。
……いや、正確には木ではない。
その“幹”は、精霊鉱の集合体でできた、精霊そのものだった。
「……ロゥナ……」
俺は一歩、また一歩と近づく。
その“幹”の中に、人の形をした像が浮かんでいた。
土色の髪と、穏やかな顔立ちをした少女の姿。
それは、以前“夢の中”で見たあの少女と同じだった。
「ここが、ロゥナの本体……」
セリューナが呟く。
「でも、完全には目覚めてない。“力”だけを残して、心はまだ閉じたまま」
そっと手を差し出す。
「ロゥナ。君の記憶を見た。君が、どれほど傷つき、どれほど孤独だったのかも……」
静かに触れたその瞬間――
《契約試行・条件未満――仮契約モードを起動します》
機械のような音声とともに、鉱石の幹が脈打つ。
中に浮かぶロゥナの姿が、一瞬こちらを向いて目を開けた。
――「……あなたは、“あのひと”とは、違うの……?」
「俺は、君を道具にしない。……君の意思を尊重するよ。
この世界の未来を、精霊たちと一緒に考えたい。だから――」
《仮契約成立》
《スキル《精霊同調・地》が《仮契約:ロゥナ》に進化》
《効果:大地属性魔法の一時展開、鉱石創造/補修、地脈感知》
《ロゥナの意識片がレクと接続開始》
「……ありがとう」
それは、確かに“声”だった。
ロゥナの姿は鉱石の中に戻ったが、彼女の表情は、どこか安堵に満ちていた。
セフィアとセリューナも、静かに頷く。
「レク……ロゥナは、あんたに“希望”を見てるんだよ」
俺は小さく頷いた。
「なら、その期待に応えるよ。精霊たちの願いも、想いも――全部、未来に繋げるために」
こうして俺たちは、土の精霊・ロゥナと“仮契約”を交わし、新たな一歩を踏み出した。
だが、それは同時に――
この世界の“深層”に隠された真実へと繋がる扉を開いた瞬間でもあった。
✳✳✳✳
仮契約の儀が終わったあとも、ロゥナの本体はしばらく静かな光を灯し続けていた。
セリューナが慎重に魔力の波を測る。
「ロゥナの意識片、今はレクと接続したままだけど……いずれ“完全覚醒”するかもね」
「そのときは、正式な契約者として――また会える、だろうな」
俺は鉱石の幹をそっと見上げながら呟いた。
この地下神殿のような空間には、まだ精霊の残滓が漂っており、慎重に観察を進める必要がある。
祭壇の裏手には古びた木箱が残されており、フェリスが興味津々に覗き込んでいた。
「ねえ、これ……手紙? 古い文が巻物みたいに残ってる!」
「見せて」
俺が受け取って広げると、そこには丁寧な文字でこう書かれていた。
――“この地を訪れる者へ”――
――精霊を傷つけたこと、我が一族は決して忘れぬ。
だが、もし誰かが精霊の意思に耳を傾ける者ならば――
どうか、この場所で何かを感じ取ってほしい。
かつて、我らが失った“共存”という可能性を。
「……これ、ガルド・レイスの子孫か?」
セリューナが目を細める。
「かもね。少なくとも、土の精霊と人の間に、後悔があったことは確か」
フェリスが空を見上げる。
「じゃあさ、ロゥナが本当に目を覚ましたとき……もう一度、“共に歩む”ことができたらいいね」
「ああ。そういう未来を、俺たちで作っていこう」
こうして俺たちは、再び地上へと戻った。
坑道の外には風が吹き、空がどこまでも高く青かった。
「レク、次はどこに向かうの?」
セフィアがふわりと肩に乗る。
「“風の大地”――リュース高原だ」
「とうとう、あたしの故郷だね」
セフィアの目がわずかに輝く。
「きっとまた、試練が待ってる。でも……今の俺たちなら、大丈夫だよな」
「当然でしょ。だって私たち、“チーム・レク”だもん!」
フェリスがにかっと笑い、セリューナもふっと笑みを浮かべた。
そう、俺たちはまだ旅の途中だ。
精霊たちと出会い、過去の記憶を知り、世界の謎を紐解いていく――
その全てが、いつかきっと、この世界の未来を変える力になると信じて。
――次なる旅路は、風が吹き抜ける高原へ。
俺たちは再び、歩き始めた。
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