転生実況はじまりました ~異世界でも仲間と一緒に~

緋月よる

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第7章《仲間との再会》

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フィールドラットたちが、鋭い牙を
むき出しにしてKILOを取り囲む。
数は五匹――それぞれの動きは単調だが、
群れでじわじわと間合いを詰めてくる。

KILO
「いやいやいや!こんなん無理だろ!
誰だよ、弱いモンスターっつったやつ!」

足元に転がる丸石を拾い上げ、
KILOは狙いを定めた。
だが、次々と迫るモンスターたちを一度に
退けるには、さすがに分が悪い。

KILO
「焦るな……って言っても無理だっつの!
一人で相手する数じゃねぇから!」

自分に言い聞かせながらも、
KILOの額には汗がにじむ。
フィールドラットたちの動きにじりじりと
追い詰められそうになったその時。

草むらをかき分け、誰かが走り込む音がした。
振り返ると、木の枝を握ったイソクマが現れる。

イソクマ
「キロさん、無事っすか!?」

KILO
「おいイソさん!? 何でここにいるんだよ!
普通こんなとこ来ないでしょ!」

イソクマ
「いやぁ、村でキロさんの噂を聞いて、
探してたら最悪のタイミングで
見つけちゃいました!」

フィールドラットたちを目にしたイソクマは、
小さく舌打ちしながら枝を振り回した。

イソクマ
「やっば、こんなにいるんすか?
手強そうっすねぇ。」

KILO
「『手強そう』じゃなくて、手強いんだよ!
ってか、助ける気あんのか、ないのかどっちだ!」

イソクマは軽く肩をすくめ、
転がる丸石を拾い上げながら笑う。

イソクマ
「もちろん助けますって!
僕が注意引くんで、その間に攻撃して!」

KILO
「いや無理無理!お前、さっきの余裕、
どこ行ったんだよ!」

イソクマ
「行動で示すっすよ、キロさん!」

そう言って大声を上げ、
フィールドラットたちの注意を引くイソクマ。
その挑発に乗った一匹が鋭い牙を見せながら
飛びかかった。

イソクマ
「ほら、今っすよ!キロさん!」

KILO
「はいはい、今行くから!
って、どんだけ大胆な作戦なんだよ!」

丸石を全力で投げつけるが、
モンスターの頭部を狙った石はわずかに逸れる。

KILO
「うわっ、外した!ダメだ、俺が下手すぎる!」

イソクマ
「大丈夫っす、まだいける!」

木の枝を振り回して牽制するイソクマ。
その隙にKILOが再び丸石を拾い上げた。
だがその時――

フィールドラットたちは動きを止め、
一斉に茂みの奥へ逃げていった。

KILO
「えっ、逃げた……?」

イソクマ
「どういうことっすかね?」

二人は顔を見合わせ、辺りを警戒する。
茂みの奥から何かが近づく気配がした。

KILO
「イソさん、気をつけろ。
このパターン……何かヤバい奴来るだろ!」

イソクマ
「いやいや、ヤバい奴ってどんなんすか?」

KILO
「知らねぇよ!ただ勘だけは当たるんだ!」

茂みの奥から、重い足音が近づく。
KILOとイソクマは背中合わせになり、
武器らしいものを構えた。

KILO
「おいイソさん、さっきみたいに
ヘラヘラしてる余裕ないからな!」

イソクマ
「いやいや、僕だってさすがに焦ってるっすよ!
でも、これ……何っすかね?」

その姿を現したのは、
一匹の巨大なフィールドラット。
先ほどの小型個体とは明らかに違う。
体躯は二回り以上大きく、
鋭い牙が短剣のように光っていた。

KILO
「……フィールドラットの親玉、みたいな感じか?」

イソクマ
「これ……親玉どころか、
ちょっとしたボスっぽいっすね。」

KILOはすぐさま鑑定スキルを発動させた。

――――――――――――――――――
【鑑定結果】
大型フィールドラット
分類: 獣種
危険度: D級
特徴: 群れを率いる大型個体。攻撃性が高く、
牙による突進攻撃は非常に危険。
弱点: 腹部が最も防御が薄い。
――――――――――――――――――

KILO
「危険度D級……弱点は腹部。
でも、突進されたらひとたまりもない。」

イソクマ
「腹部っすか……狙えってことっすよね。」

大型フィールドラットは低く唸り声を上げながら、
地面を掻き始める。突進の準備だ。

KILO
「イソさん、散開してくれ!
これ、一緒に吹っ飛ばされたら笑えねぇから!」

イソクマ
「了解っす!でも、腹部狙うって……
どうやるんすかね?」

KILO
「考える暇ないから、とにかくやるしかねぇ!」

二人は左右に分かれ、視線を分散させる。
大型フィールドラットは一瞬迷ったが、
すぐにKILOの方へ突進してきた。

KILO
「いや、なんで俺狙うんだよ!?
お前、俺が何したってんだ!」

KILOは木の影に身を隠し、突進をやり過ごす。
地面に深い轍が残り、
突進の勢いの凄まじさを物語る。

イソクマ
「キロさん、大丈夫っすか!?」

KILO
「ああ、ギリギリセーフだ!
けど、次はないぞ!」

突進を終えて振り返ろうとする隙をついて、
イソクマが木の枝を持って飛び出した。

イソクマ
「狙うは腹部っすね!いけぇ!」

木の枝を全力で突き出すが、相手の動きが素早く、
狙いは僅かに外れる。

イソクマ
「くそ、外した!」

KILO
「落ち着け!次がある!」

KILOは丸石を拾い、
モンスターの注意を引くために投げつけた。
石は見事に鼻先を捉え、
大型フィールドラットが苦痛の唸り声を上げる。

KILO
「今だ、イソさん!」

イソクマ
「了解っす!」

今度は枝を持ったまま突撃し、
狙いを定めて腹部を捉える。
モンスターが大きく苦しげな声を上げた。

イソクマ
「効いたかも……!」

だが、大型フィールドラットは完全には倒れない。
その目には怒りの炎が宿り、再び牙を剥いてきた。

KILO
「まだかよ!?しつこすぎんだろ!」

イソクマ
「ちょっと待って、キロさん!
これ以上は――」

その時、またしてもあの笛の音が響いた。
大型フィールドラットが
怯えたように動きを止める。
音の方向を向いたかと思うと、
そのまま森の奥へ逃げ去った。

KILO
「……今の音、またか。」

イソクマ
「これ、助けてくれたんすかね……?
いや、でも……何か怪しいっすよね。」

二人は警戒を解かないまま、
音の聞こえた方を見つめる。
だが、そこに姿を現す者はなかった。

KILO
「とにかく、今のうちに撤退だ。
こんなとこで立ち止まってたら、
次は逃げられねぇぞ。」

イソクマ
「了解っす!でも、これ、
また何か起きそうっすよね……。」

KILO
「フラグ立てんなって!俺、
こういうの嫌いなんだよ!」

二人は慎重にその場を離れ、
再び小川沿いに進んだ。
森の奥に不思議な笛の音を残しながら、
静寂が戻っていった――。
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