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第14章《金髪の少女》
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廃道の出口に差し込む光を前に、
なぎは大きく息をついた。
なぎ
「やっと外や……ほんま長かったな。」
アポストロフィ楼酢
「おお、これぞ自由って感じだな!
つーか、この光……やべぇ、
俺の髪、輝いてる気がする!」
なぎ
「そんなわけないやろ。
ただの光やん。」
楼酢は自分の髪を手でかき上げ、
満足げに笑った。
そのとき、軽い笑い声が背後から響いた。
老人
「ほほう、若い者がこんなところを
通るとは珍しいこともあるもんじゃな。」
なぎ
「うわっ、何や今の声!?」
アポストロフィ楼酢
「おっ?誰だ?
こんなところでスナックでも
開いてんのかよ?」
振り返ると、杖を手にした老人が立っていた。
白い髭を揺らしながら、
こちらを見ている。
アポストロフィ楼酢
「おっちゃん、ここで何してんの?
まさか、その杖でモンスター退治とか?」
老人
「ほほう、そう見えるか?
いや、廃道を訪れるのが趣味でな。
散歩がてら、時々来るんじゃ。」
なぎ
「そんな趣味あるんや……
おっちゃん、意外と変わってんなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「いや、俺と同じ匂いがするぜ!
廃道を歩くとか、普通じゃ
思いつかねぇだろ?」
老人は小さく笑いながら杖を地面に突いた。
老人
「ところで君たち、何か困りごとでも
抱えているようじゃな?」
なぎ
「そりゃそうやろ!
あたしら、この世界のことも
何も知らんし、お金も持ってへんねん!」
アポストロフィ楼酢
「マジでな。で、この国の金って
どんな感じなんだ?
俺たち、ゼロスタートだからさ。」
老人
「なるほど、旅人というわけか。
いいだろう、少しばかり話してやろう。」
老人は腰を下ろし、話を続けた。
老人
「この国では、銅貨、鉄貨、銀貨、
そして金貨が使われている。
銅貨は10枚で鉄貨1枚、
鉄貨10枚で銀貨1枚、
銀貨10枚で金貨1枚になる仕組みじゃ。」
なぎ
「なんや、ややこしいなぁ……。」
アポストロフィ楼酢
「つまり俺たち、銅貨すら持ってねぇってことか。
まあ、そんなもんだよな!」
老人
「もし金を稼ぎたいなら、
冒険者ギルドに行くといい。
そこで仕事を受ければ、報酬がもらえる。」
なぎ
「冒険者ギルド?それ、
ゲームとかでよくあるやつやん!」
アポストロフィ楼酢
「へぇ、なんか面白そうだな。
でもそのギルドって、どこにあんだ?」
老人
「ここから北に向かえば、
街がある。その街の中心にあるはずだ。」
なぎ
「そっか……ええこと聞いたわ!
おっちゃん、ありがとうな!」
アポストロフィ楼酢
「ありがとよ、助かったぜ!
さーて、行ってみるか!」
老人に教えられた道を目指して、
二人は歩き始めた。
なぎ
「それにしても……ほんま、
なんもかんもゲームっぽいなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「だろ?でも俺的には、
ゲームより楽しいんじゃねぇか?
リアルだし、スリルもあるしさ!」
なぎ
「スリルはいらんけどな……
さっきのモンスターとか、もう勘弁や。」
アポストロフィ楼酢
「そうか?俺はまた会ったら、
今度はガツンと倒してやりたいけどな!」
なぎ
「武器もないくせに、
ようそんなこと言えるわ……。」
二人は冗談を交えながら進んでいく。
しばらくすると、視界に小さな丘が現れた。
その頂上には、ぼんやりとした煙が立ち上っている。
アポストロフィ楼酢
「おい、なぎ。あれ見ろよ。」
なぎ
「……何やろな?
誰かがおるんか?」
アポストロフィ楼酢
「とりあえず行ってみるか。
なんか面白そうじゃん!」
なぎ
「ロスさん、ほんまに慎重さゼロやな……
また変なん巻き込まれても知らんで?」
アポストロフィ楼酢
「まあまあ、ついて来いって!
俺の勘が冴えてる時は、
絶対面白いことが起こるんだからさ。」
なぎは呆れ顔をしながらも、
仕方なく彼の後を追う。
丘の頂上に近づくと、焚き火を囲む人影が見えた。
丘の道を登りながら、
二人は周囲を見渡していた。
青い空と広がる森、
そして時折聞こえる鳥のさえずり。
どこか現実離れした景色に、
異世界にいることを改めて実感させられる。
なぎ
「こうして見ると、めっちゃ綺麗やな……。
なんか、ほんまにゲームの中みたいやわ。」
アポストロフィ楼酢
「だろ?だけどまあ、
この辺に敵が出てくるかもしれねぇし、
油断はできないけどな。」
なぎ
「それ言うなや……。
さっきの廃道で十分ヒヤヒヤしたんやで。」
アポストロフィ楼酢
「はは、まあ、でも俺たち無事だろ?
あのモンスターだって、
ちょっと知恵を絞れば追い返せたしさ。」
なぎ
「まあな……。」
なぎはふと足を止め、後ろを振り返った。
背後に続く廃道の出口が、
木々に隠れるように遠ざかっていく。
なぎ
「ロスさん……みんな、
どうしてるんやろな。」
アポストロフィ楼酢
「心配か?まあ、俺らがここで生きてるなら、
アイツらもなんとかしてるんじゃねぇか?」
なぎ
「そうやけど……夜真さんとか、するめんとか、
ほんま、無事やとええけどな……。」
アポストロフィ楼酢
「するめんかぁ。アイツ、
意外としぶといとこあるからな。
変なとこで得意気になってたりして。」
なぎ
「想像つくわ……。でも、KILOさんとか、
大丈夫やろか?妙におっちょこちょいやし。」
アポストロフィ楼酢
「あいつがやらかしてたら、
誰かが止めてるだろ。
……たぶんな。」
なぎ
「たぶんって……。」
二人はしばらく無言で歩いた。
どこまでも広がる森と、遠くに見える街の煙。
この異世界での生活が、
どう転んでいくのか全く見えなかった。
アポストロフィ楼酢
「よし、こうなったら、
まずは街に行って情報集めだ。
誰かがいるかもしれねぇし、
いなかったらそれから考えればいい。」
なぎ
「……せやな。
みんなで集まらんと、始まらんもんな。」
街は目の前だった。
遠くから見た煙は、
あちこちの煙突から立ち上るものだった。
近づくほどに、賑やかな音が耳に届く。
なぎ
「おおっ……めっちゃ賑やかやん!
ほんまに異世界の街やなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、感心してる場合か?
まずは……飯だろ、飯!」
なぎ
「言うても、お金ないやん?
どうするつもりなんよ……。」
アポストロフィ楼酢
「それを考えるのが俺たちの仕事だろ?
とりあえず、何かしら手を考えるさ。」
街の入り口には、
門番らしき兵士が二人立っていた。
だが、二人は特に止められることもなく、
そのまま街の中に入ることができた。
中に入ると、屋台の香ばしい匂いが漂い、
通りには多くの人々が行き交っている。
露店では果物やパンが並び、
その横を手押し車がすり抜けていった。
なぎ
「ほんま、映画みたいな感じやなぁ……。」
アポストロフィ楼酢
「いやいや、これは映画じゃねぇぞ。
見ろよ、あのパン!
めっちゃうまそうじゃねぇか?」
なぎ
「わかるけど……いや、
食べられる金ないんやで?」
アポストロフィ楼酢
「そりゃわかってるって……でもさ、
まずは何か情報を集めようぜ。」
二人は商店街を歩きながら、
周囲を観察する。
行商人が値段を叫ぶ声や、
冒険者らしき人物が話し合う声が聞こえる。
なぎ
「ロスさん……ほんまに、
これからどうするん?」
アポストロフィ楼酢
「そうだな。まずはどっかで話を聞こう。
金がなくても、仕事を探す方法ぐらいは
わかるだろうしな。」
街の通りは活気に満ちていた。
屋台から漂う香ばしい匂いや、
行商人の威勢の良い声が飛び交う中、
なぎとアポストロフィ楼酢はひと際目立っていた。
なぎ
「ロスさん、あれ見てや!
めっちゃ美味しそうなパンやで!」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、そんな目を輝かせるなって。
金もねぇのに眺めるだけなんて自虐だろ?」
なぎ
「せやけどな、目の前にこんなうまそうなもんが
並んどったら、見るしかないやん!
なぁなぁ、ロスさん、どうにかならん?」
アポストロフィ楼酢
「どうにかってなぁ……。
俺のポケットも空だっての。」
なぎ
「マジかいな……ほんま使えへんな!」
アポストロフィ楼酢
「おい、今なんかひどいこと言わなかったか?」
なぎ
「気のせいや!ほら、次行くで!」
楼酢はため息をつきながら、
元気よく先を歩くなぎを追った。
アポストロフィ楼酢
「ほんっと、元気だよなぁ……。」
街の外れの通りで、
二人は荷車を引く男女を見つけた。
男性は日に焼けたたくましい腕で荷物を調整し、
女性は周囲を気にかけながら荷車を押している。
なぎ
「おっ、あれ商人さんちゃう?
話しかけてみよ!」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、まずはどう話すか考えろって。
勢いだけで突っ込むなよ。」
なぎ
「任せとき!ええ感じにやったるわ!」
なぎは笑顔を浮かべて駆け寄った。
なぎ
「すんませーん!
ちょっとお聞きしたいことあるんやけど!」
男性――ガルフは警戒するような目を向けたが、
隣の女性――リリアが笑顔で応じた。
リリア
「こんにちは。旅人さんかしら?」
なぎ
「まあそんな感じや!
この辺のことぜんっぜん知らんから、
ちょっと教えてくれへん?」
アポストロフィ楼酢も遅れて近づき、
軽く手を挙げて挨拶をした。
アポストロフィ楼酢
「悪いな。俺ら、ちょっと迷子でさ、
この辺のことが全然わかんねぇんだ。」
ガルフ
「迷子って……どこから来たんだよ。」
アポストロフィ楼酢
「それがな、どっから来たかも
あんまりよくわかんねぇんだわ。」
ガルフ
「……わけのわからん奴らだな。」
リリアが少し困ったように微笑んだ。
リリア
「それで、何を知りたいの?」
アポストロフィ楼酢
「金髪の女の子で、
なんかどこかふわっとしてるような……。
目立つ感じのやつを知らねぇか?」
リリアはしばらく考えるようにしてから頷いた。
リリア
「最近、国境沿いの森で見かけたわ。
一人で歩いていて……
少し不思議な雰囲気の子だったわね。」
なぎ
「それや!絶対するめんや!
ほんま、どのへんおったん?」
ガルフ
「リリエルエルフ王国とリベリタス共和国の境目だ。
ただ、一人で森を歩くなんて物好きなやつだな。」
なぎ
「めっちゃするめんっぽいやん!
あたしらも探しに行こ!」
アポストロフィ楼酢
「まぁ、間違いなさそうだな。
……で、その辺って危ねぇのか?」
ガルフ
「あの辺りは、ウルフやゴブリンが出る。
昼間なら問題ねぇが、夜はやばいぞ。」
リリア
「行くならしっかり準備をしてね。
水と食べ物、それと明かりは忘れずに。」
なぎ
「めっちゃ助かったわ!ありがとうな!」
アポストロフィ楼酢
「おっちゃんもおばちゃんも、ありがとよ!」
ガルフ
「誰がおっちゃんだ……まあいい。
お前らも気をつけろよ。」
リリアは柔らかく微笑みながら、二人を見送った。
街を出る前、
二人はリリアのアドバイスを思い出していた。
アポストロフィ楼酢
「水と食べ物、それと明かりねぇ……。
準備しろって言われても、金がねぇんだからな。」
なぎ
「せやけど、そんなん言っても、
何も持たんと行ったらヤバいんやろ?」
二人は通りの片隅に腰を下ろし、
頭を抱えるように考え込んだ。
なぎ
「なぁロスさん、どっかでバイトでもする?」
アポストロフィ楼酢
「いやいや、そんな時間かけてたら、
するめんが森の中で枯れちまうだろ。」
なぎ
「そら困るなぁ……。」
楼酢はふと、通りの露店を見渡した。
そして、一つの屋台に目を留める。
そこには、果物やパンが並んでおり、
店主が疲れた様子で店先を掃除していた。
アポストロフィ楼酢
「あのじいさん、手が回らなそうだな。
ちょっと交渉してみるか?」
なぎ
「お!それええやん!さっすがロスさん!」
二人は勢いよく立ち上がり、屋台に向かった。
アポストロフィ楼酢
「ようじいさん、ちょっといいか?」
店主
「……なんだ、急に?」
アポストロフィ楼酢
「いやさ、ちょっと困ってんだよ。
俺たち、旅の途中で金がねぇ。
代わりに手伝うから、
食べ物と水をちょっと分けてくんねぇか?」
店主は少し訝しげに二人を見たが、
なぎが元気よく手を振った。
なぎ
「おっちゃん、あたしらマジで困っとんねん!
ほら、これ見てみ?何にも持ってへん!」
袖をまくり上げて手のひらを見せるなぎに、
店主はやれやれとため息をついた。
店主
「まったく……そんなことだろうと思ったよ。
いいだろう、ここを片付けるのを手伝ったら、
パンと水ぐらいは分けてやるよ。」
なぎ
「やった!サンキューおっちゃん!」
準備完了
屋台の片付けを手伝い終えた後、
二人は店主から水筒とパンを受け取った。
なぎ
「ほら見てみ、ロスさん!
これで、あたしら立派な冒険者やん!」
アポストロフィ楼酢
「立派って言葉が安っぽくなるな……。」
なぎ
「細かいことはええねん!
ほな、さっそく森に向かお!」
アポストロフィ楼酢
「はいはい、元気だな。」
二人は街を離れ、
夕暮れに染まる道を歩き始めた。
少し疲れた様子の楼酢に対し、
なぎは水筒を差し出す。
なぎ
「ほらロスさん、水飲んどき。
さっきの屋台で頑張ったからな!」
アポストロフィ楼酢
「ああ、サンキューな。
ったく、お前のテンション見てると
疲れも吹っ飛びそうだよ。」
なぎ
「お、なんや照れるやんか~。」
軽口を交わしながら進む道の先には、
森の影が黒々と浮かび上がっていた。
遠くからは鳥の声や風の音が聞こえる。
なぎ
「よっしゃ!森に入ったら、
するめん絶対見つけたるで!」
アポストロフィ楼酢
「その勢いで変なモンスター引き寄せるなよ?」
なぎ
「大丈夫や!そんときはロスさんが
何とかしてくれるやろ!」
アポストロフィ楼酢
「お前、そういうこと軽く言うなって……。」
二人は森の入口で立ち止まり、
これからの探索に向けて気を引き締めた。
なぎ
「ほんま、するめんおったら、
何してたか全部話させるで!」
アポストロフィ楼酢
「あいつのことだから、またのほほんとした顔で
『え、特に何も?』とか言いそうだな。」
なぎ
「ありそうや!でもそれがするめんやし!」
アポストロフィ楼酢は苦笑しながら、
なぎの隣に立って森を見つめる。
アポストロフィ楼酢
「ま、とりあえず探すしかねぇな。行くぞ。」
こうして二人は、国境沿いの森へと足を踏み入れた。
その先に何が待つのか――
それは、まだ誰にもわからない。
なぎは大きく息をついた。
なぎ
「やっと外や……ほんま長かったな。」
アポストロフィ楼酢
「おお、これぞ自由って感じだな!
つーか、この光……やべぇ、
俺の髪、輝いてる気がする!」
なぎ
「そんなわけないやろ。
ただの光やん。」
楼酢は自分の髪を手でかき上げ、
満足げに笑った。
そのとき、軽い笑い声が背後から響いた。
老人
「ほほう、若い者がこんなところを
通るとは珍しいこともあるもんじゃな。」
なぎ
「うわっ、何や今の声!?」
アポストロフィ楼酢
「おっ?誰だ?
こんなところでスナックでも
開いてんのかよ?」
振り返ると、杖を手にした老人が立っていた。
白い髭を揺らしながら、
こちらを見ている。
アポストロフィ楼酢
「おっちゃん、ここで何してんの?
まさか、その杖でモンスター退治とか?」
老人
「ほほう、そう見えるか?
いや、廃道を訪れるのが趣味でな。
散歩がてら、時々来るんじゃ。」
なぎ
「そんな趣味あるんや……
おっちゃん、意外と変わってんなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「いや、俺と同じ匂いがするぜ!
廃道を歩くとか、普通じゃ
思いつかねぇだろ?」
老人は小さく笑いながら杖を地面に突いた。
老人
「ところで君たち、何か困りごとでも
抱えているようじゃな?」
なぎ
「そりゃそうやろ!
あたしら、この世界のことも
何も知らんし、お金も持ってへんねん!」
アポストロフィ楼酢
「マジでな。で、この国の金って
どんな感じなんだ?
俺たち、ゼロスタートだからさ。」
老人
「なるほど、旅人というわけか。
いいだろう、少しばかり話してやろう。」
老人は腰を下ろし、話を続けた。
老人
「この国では、銅貨、鉄貨、銀貨、
そして金貨が使われている。
銅貨は10枚で鉄貨1枚、
鉄貨10枚で銀貨1枚、
銀貨10枚で金貨1枚になる仕組みじゃ。」
なぎ
「なんや、ややこしいなぁ……。」
アポストロフィ楼酢
「つまり俺たち、銅貨すら持ってねぇってことか。
まあ、そんなもんだよな!」
老人
「もし金を稼ぎたいなら、
冒険者ギルドに行くといい。
そこで仕事を受ければ、報酬がもらえる。」
なぎ
「冒険者ギルド?それ、
ゲームとかでよくあるやつやん!」
アポストロフィ楼酢
「へぇ、なんか面白そうだな。
でもそのギルドって、どこにあんだ?」
老人
「ここから北に向かえば、
街がある。その街の中心にあるはずだ。」
なぎ
「そっか……ええこと聞いたわ!
おっちゃん、ありがとうな!」
アポストロフィ楼酢
「ありがとよ、助かったぜ!
さーて、行ってみるか!」
老人に教えられた道を目指して、
二人は歩き始めた。
なぎ
「それにしても……ほんま、
なんもかんもゲームっぽいなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「だろ?でも俺的には、
ゲームより楽しいんじゃねぇか?
リアルだし、スリルもあるしさ!」
なぎ
「スリルはいらんけどな……
さっきのモンスターとか、もう勘弁や。」
アポストロフィ楼酢
「そうか?俺はまた会ったら、
今度はガツンと倒してやりたいけどな!」
なぎ
「武器もないくせに、
ようそんなこと言えるわ……。」
二人は冗談を交えながら進んでいく。
しばらくすると、視界に小さな丘が現れた。
その頂上には、ぼんやりとした煙が立ち上っている。
アポストロフィ楼酢
「おい、なぎ。あれ見ろよ。」
なぎ
「……何やろな?
誰かがおるんか?」
アポストロフィ楼酢
「とりあえず行ってみるか。
なんか面白そうじゃん!」
なぎ
「ロスさん、ほんまに慎重さゼロやな……
また変なん巻き込まれても知らんで?」
アポストロフィ楼酢
「まあまあ、ついて来いって!
俺の勘が冴えてる時は、
絶対面白いことが起こるんだからさ。」
なぎは呆れ顔をしながらも、
仕方なく彼の後を追う。
丘の頂上に近づくと、焚き火を囲む人影が見えた。
丘の道を登りながら、
二人は周囲を見渡していた。
青い空と広がる森、
そして時折聞こえる鳥のさえずり。
どこか現実離れした景色に、
異世界にいることを改めて実感させられる。
なぎ
「こうして見ると、めっちゃ綺麗やな……。
なんか、ほんまにゲームの中みたいやわ。」
アポストロフィ楼酢
「だろ?だけどまあ、
この辺に敵が出てくるかもしれねぇし、
油断はできないけどな。」
なぎ
「それ言うなや……。
さっきの廃道で十分ヒヤヒヤしたんやで。」
アポストロフィ楼酢
「はは、まあ、でも俺たち無事だろ?
あのモンスターだって、
ちょっと知恵を絞れば追い返せたしさ。」
なぎ
「まあな……。」
なぎはふと足を止め、後ろを振り返った。
背後に続く廃道の出口が、
木々に隠れるように遠ざかっていく。
なぎ
「ロスさん……みんな、
どうしてるんやろな。」
アポストロフィ楼酢
「心配か?まあ、俺らがここで生きてるなら、
アイツらもなんとかしてるんじゃねぇか?」
なぎ
「そうやけど……夜真さんとか、するめんとか、
ほんま、無事やとええけどな……。」
アポストロフィ楼酢
「するめんかぁ。アイツ、
意外としぶといとこあるからな。
変なとこで得意気になってたりして。」
なぎ
「想像つくわ……。でも、KILOさんとか、
大丈夫やろか?妙におっちょこちょいやし。」
アポストロフィ楼酢
「あいつがやらかしてたら、
誰かが止めてるだろ。
……たぶんな。」
なぎ
「たぶんって……。」
二人はしばらく無言で歩いた。
どこまでも広がる森と、遠くに見える街の煙。
この異世界での生活が、
どう転んでいくのか全く見えなかった。
アポストロフィ楼酢
「よし、こうなったら、
まずは街に行って情報集めだ。
誰かがいるかもしれねぇし、
いなかったらそれから考えればいい。」
なぎ
「……せやな。
みんなで集まらんと、始まらんもんな。」
街は目の前だった。
遠くから見た煙は、
あちこちの煙突から立ち上るものだった。
近づくほどに、賑やかな音が耳に届く。
なぎ
「おおっ……めっちゃ賑やかやん!
ほんまに異世界の街やなぁ。」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、感心してる場合か?
まずは……飯だろ、飯!」
なぎ
「言うても、お金ないやん?
どうするつもりなんよ……。」
アポストロフィ楼酢
「それを考えるのが俺たちの仕事だろ?
とりあえず、何かしら手を考えるさ。」
街の入り口には、
門番らしき兵士が二人立っていた。
だが、二人は特に止められることもなく、
そのまま街の中に入ることができた。
中に入ると、屋台の香ばしい匂いが漂い、
通りには多くの人々が行き交っている。
露店では果物やパンが並び、
その横を手押し車がすり抜けていった。
なぎ
「ほんま、映画みたいな感じやなぁ……。」
アポストロフィ楼酢
「いやいや、これは映画じゃねぇぞ。
見ろよ、あのパン!
めっちゃうまそうじゃねぇか?」
なぎ
「わかるけど……いや、
食べられる金ないんやで?」
アポストロフィ楼酢
「そりゃわかってるって……でもさ、
まずは何か情報を集めようぜ。」
二人は商店街を歩きながら、
周囲を観察する。
行商人が値段を叫ぶ声や、
冒険者らしき人物が話し合う声が聞こえる。
なぎ
「ロスさん……ほんまに、
これからどうするん?」
アポストロフィ楼酢
「そうだな。まずはどっかで話を聞こう。
金がなくても、仕事を探す方法ぐらいは
わかるだろうしな。」
街の通りは活気に満ちていた。
屋台から漂う香ばしい匂いや、
行商人の威勢の良い声が飛び交う中、
なぎとアポストロフィ楼酢はひと際目立っていた。
なぎ
「ロスさん、あれ見てや!
めっちゃ美味しそうなパンやで!」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、そんな目を輝かせるなって。
金もねぇのに眺めるだけなんて自虐だろ?」
なぎ
「せやけどな、目の前にこんなうまそうなもんが
並んどったら、見るしかないやん!
なぁなぁ、ロスさん、どうにかならん?」
アポストロフィ楼酢
「どうにかってなぁ……。
俺のポケットも空だっての。」
なぎ
「マジかいな……ほんま使えへんな!」
アポストロフィ楼酢
「おい、今なんかひどいこと言わなかったか?」
なぎ
「気のせいや!ほら、次行くで!」
楼酢はため息をつきながら、
元気よく先を歩くなぎを追った。
アポストロフィ楼酢
「ほんっと、元気だよなぁ……。」
街の外れの通りで、
二人は荷車を引く男女を見つけた。
男性は日に焼けたたくましい腕で荷物を調整し、
女性は周囲を気にかけながら荷車を押している。
なぎ
「おっ、あれ商人さんちゃう?
話しかけてみよ!」
アポストロフィ楼酢
「おいおい、まずはどう話すか考えろって。
勢いだけで突っ込むなよ。」
なぎ
「任せとき!ええ感じにやったるわ!」
なぎは笑顔を浮かべて駆け寄った。
なぎ
「すんませーん!
ちょっとお聞きしたいことあるんやけど!」
男性――ガルフは警戒するような目を向けたが、
隣の女性――リリアが笑顔で応じた。
リリア
「こんにちは。旅人さんかしら?」
なぎ
「まあそんな感じや!
この辺のことぜんっぜん知らんから、
ちょっと教えてくれへん?」
アポストロフィ楼酢も遅れて近づき、
軽く手を挙げて挨拶をした。
アポストロフィ楼酢
「悪いな。俺ら、ちょっと迷子でさ、
この辺のことが全然わかんねぇんだ。」
ガルフ
「迷子って……どこから来たんだよ。」
アポストロフィ楼酢
「それがな、どっから来たかも
あんまりよくわかんねぇんだわ。」
ガルフ
「……わけのわからん奴らだな。」
リリアが少し困ったように微笑んだ。
リリア
「それで、何を知りたいの?」
アポストロフィ楼酢
「金髪の女の子で、
なんかどこかふわっとしてるような……。
目立つ感じのやつを知らねぇか?」
リリアはしばらく考えるようにしてから頷いた。
リリア
「最近、国境沿いの森で見かけたわ。
一人で歩いていて……
少し不思議な雰囲気の子だったわね。」
なぎ
「それや!絶対するめんや!
ほんま、どのへんおったん?」
ガルフ
「リリエルエルフ王国とリベリタス共和国の境目だ。
ただ、一人で森を歩くなんて物好きなやつだな。」
なぎ
「めっちゃするめんっぽいやん!
あたしらも探しに行こ!」
アポストロフィ楼酢
「まぁ、間違いなさそうだな。
……で、その辺って危ねぇのか?」
ガルフ
「あの辺りは、ウルフやゴブリンが出る。
昼間なら問題ねぇが、夜はやばいぞ。」
リリア
「行くならしっかり準備をしてね。
水と食べ物、それと明かりは忘れずに。」
なぎ
「めっちゃ助かったわ!ありがとうな!」
アポストロフィ楼酢
「おっちゃんもおばちゃんも、ありがとよ!」
ガルフ
「誰がおっちゃんだ……まあいい。
お前らも気をつけろよ。」
リリアは柔らかく微笑みながら、二人を見送った。
街を出る前、
二人はリリアのアドバイスを思い出していた。
アポストロフィ楼酢
「水と食べ物、それと明かりねぇ……。
準備しろって言われても、金がねぇんだからな。」
なぎ
「せやけど、そんなん言っても、
何も持たんと行ったらヤバいんやろ?」
二人は通りの片隅に腰を下ろし、
頭を抱えるように考え込んだ。
なぎ
「なぁロスさん、どっかでバイトでもする?」
アポストロフィ楼酢
「いやいや、そんな時間かけてたら、
するめんが森の中で枯れちまうだろ。」
なぎ
「そら困るなぁ……。」
楼酢はふと、通りの露店を見渡した。
そして、一つの屋台に目を留める。
そこには、果物やパンが並んでおり、
店主が疲れた様子で店先を掃除していた。
アポストロフィ楼酢
「あのじいさん、手が回らなそうだな。
ちょっと交渉してみるか?」
なぎ
「お!それええやん!さっすがロスさん!」
二人は勢いよく立ち上がり、屋台に向かった。
アポストロフィ楼酢
「ようじいさん、ちょっといいか?」
店主
「……なんだ、急に?」
アポストロフィ楼酢
「いやさ、ちょっと困ってんだよ。
俺たち、旅の途中で金がねぇ。
代わりに手伝うから、
食べ物と水をちょっと分けてくんねぇか?」
店主は少し訝しげに二人を見たが、
なぎが元気よく手を振った。
なぎ
「おっちゃん、あたしらマジで困っとんねん!
ほら、これ見てみ?何にも持ってへん!」
袖をまくり上げて手のひらを見せるなぎに、
店主はやれやれとため息をついた。
店主
「まったく……そんなことだろうと思ったよ。
いいだろう、ここを片付けるのを手伝ったら、
パンと水ぐらいは分けてやるよ。」
なぎ
「やった!サンキューおっちゃん!」
準備完了
屋台の片付けを手伝い終えた後、
二人は店主から水筒とパンを受け取った。
なぎ
「ほら見てみ、ロスさん!
これで、あたしら立派な冒険者やん!」
アポストロフィ楼酢
「立派って言葉が安っぽくなるな……。」
なぎ
「細かいことはええねん!
ほな、さっそく森に向かお!」
アポストロフィ楼酢
「はいはい、元気だな。」
二人は街を離れ、
夕暮れに染まる道を歩き始めた。
少し疲れた様子の楼酢に対し、
なぎは水筒を差し出す。
なぎ
「ほらロスさん、水飲んどき。
さっきの屋台で頑張ったからな!」
アポストロフィ楼酢
「ああ、サンキューな。
ったく、お前のテンション見てると
疲れも吹っ飛びそうだよ。」
なぎ
「お、なんや照れるやんか~。」
軽口を交わしながら進む道の先には、
森の影が黒々と浮かび上がっていた。
遠くからは鳥の声や風の音が聞こえる。
なぎ
「よっしゃ!森に入ったら、
するめん絶対見つけたるで!」
アポストロフィ楼酢
「その勢いで変なモンスター引き寄せるなよ?」
なぎ
「大丈夫や!そんときはロスさんが
何とかしてくれるやろ!」
アポストロフィ楼酢
「お前、そういうこと軽く言うなって……。」
二人は森の入口で立ち止まり、
これからの探索に向けて気を引き締めた。
なぎ
「ほんま、するめんおったら、
何してたか全部話させるで!」
アポストロフィ楼酢
「あいつのことだから、またのほほんとした顔で
『え、特に何も?』とか言いそうだな。」
なぎ
「ありそうや!でもそれがするめんやし!」
アポストロフィ楼酢は苦笑しながら、
なぎの隣に立って森を見つめる。
アポストロフィ楼酢
「ま、とりあえず探すしかねぇな。行くぞ。」
こうして二人は、国境沿いの森へと足を踏み入れた。
その先に何が待つのか――
それは、まだ誰にもわからない。
30
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