伊澄と聖華(死にわか番外編)

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 聖華せいかは帰ってきた自分の部屋で、乱れたままの着物もそのままに、一人しくしくと泣いていた。

 結局魔力は微塵も回復しなかった、やたらと幼く年齢操作をしたせいで、無駄に魔力を消費して体を開いただけになってしまった。しかし聖華にはそれよりもなによりも、ショックな事があった。

(最悪だ……伊澄いずみにキスしてもらったのに、せっかくしてくれたのに……!)
 悲しくてただただ悲しくて、聖華は声を殺して泣いていた。

 ズッと鼻を鳴らしたのと同時に、玄関の引き戸がガタッと鳴る音がした。
 誰か来たのだろうか、もしかしてさっきの奴が報復に来た? それにしては早過ぎる……と玄関に様子を見に行くと、紫紺の羽織に黒髪の人物がモザイク状のガラス越しに見て取れた。

 しかもその人物は長らくそこに立っていたのか、ガラスの戸に背を預けて少し上を向いている。

 聖華は玄関まで駆け出してガラッと戸を開くと、そこに寄りかかっていた人物の肩に戸が当たって、イテッと漏らす声が聞こえた。

「なんだ、帰ってたのか……って、お前その格好!」
「伊澄……」
 裸にただ着物を羽織っただけの聖華の出立に、伊澄はギョッとした。周りの目を気にしながら奥に行くよう聖華に促すが、呆けたように動かない聖華を見て、伊澄は出来るだけ小さく戸を開いて隙間を縫うように中に入った。

「なんつう格好で出て来てるんだ! 何も隠れてないぞ!?」
 伊澄は視線を横へと彷徨わせながら、聖華の袖も裾も短く不格好になった着物の前を合わせて隠した。
 明らかに様子がおかしいので聖華の顔を覗き込むと、目も鼻も真っ赤に腫らして、頬をキラキラと水滴で濡らしている様子に驚いた。

「……泣いてたのか?」
 心配そうに伊澄に下から見上げられて、聖華は隠すように両手で顔を覆った。
「酷いことされたのか……? どこの誰だ!」
 何も言わずに聖華はただ首を横に振った。

 聖華の胸の内はぐちゃぐちゃだった。
 コイツのせいで、その辺の男じゃ魔力が回復しなくなった、どうしてくれるんだ憎たらしい。
 キスして……! あの男に塗りつぶされた分、上書きして……!
 嫌いだ、嫌いだ、どうせ踏み込んでくる覚悟もないくせに心配だけしやがって。
 触って、さっき触られたところも全部伊澄に触って欲しい。
 こっちの気持ちも意図も汲み取れない、いつも何も分かってない! 口に出して言わないと理解しない! こんな鈍感男大っ嫌いだ!!
 好き、好き……キスして、触って抱いて欲しい……優しくして、伊澄……優しくしてよ!!!

 顔を隠した両手から涙が溢れ出た、自分の感情が分からなくて、聖華はその涙を止めることもできなかった。

「聖華……?」
 必死で隠しているその手を、両手首を掴んで伊澄は無遠慮に引き剥がしてくる。その無神経さに頭にきて、伊澄の着物の衿を掴んで引き寄せた。
 唇が触れ合う瞬間、聖華は止まってしまった……ここで触れたらダメだ、感情が抑えられなくなる。

 顔を逸らそうとした聖華の衿を、伊澄が掴み返して引き寄せて、噛み付くように聖華の唇を奪った。
「んっ……!」
 自分があれほど躊躇したのに、いとも簡単に触れてくる。一度も想いを伝えてこないくせに、愛しそうに首を撫でて頭を愛撫しながら、何度も唇を合わせてくる。

 悔しくて引き剥がそうと腕で抵抗すると、その腕を掴まれて今度は伊澄の舌が入りたそうに唇を舐める。思わず薄く開いた聖華の口を、唇でこじ開けて中に入って……聖華が抵抗を止めると伊澄は掴んでいた腕の力を緩めて、優しく聖華の腰に手を回した。
 
(暖かい……気持ちいい、胸がいっぱいに満たされる、もっと、もっとして……)

 聖華がねだるように舌を絡ませながら、腰に回された手を双丘へと誘導する。一瞬戸惑うように強張った伊澄の手が、柔らかい感触に誘われるようにその曲線を撫でた。

 伊澄の手は着物の上からでも分かるほど熱く、力強く下から抱き寄せるように肉を掴まれて、貪るように口内を犯されると、聖華は堪らず声を漏らした。
「んっ……ふ……ぁ、もっと」
「——っ、聖華……」
「もっと触って」

 聖華が伊澄の背中に腕を回して煽るように腰をくねらせると、下から見上げてきた伊澄の瞳は、あの時と同じような劣情の熱を帯びていた。

「今日は逃げるなよ」

 伊澄は聖華を横抱きにして部屋へと上がりこんだ。魔力量が極端に少ない伊澄は、節約のため普段身体への強化はほとんど行わない。不慣れな強化を両腕に施して、自分を抱き上げてくれた……それだけで聖華は抱きつきたくなるほど嬉しくなった。

 部屋に敷いてあった布団に下ろされて、聖華の胸は驚くほど速く脈打つ。あの日と同じように、ぐしゃぐしゃに髪を乱されるほど激しく口内を貪られて……聖華もそれに応えると、伊澄の動きは甘く優しいものへと変わる。

 聖華が伊澄の手を自分の胸元に導く、先程酷くつままれて痛かったそこに、優しく触れて欲しかった。
「ここも……」
 伊澄は一瞬戸惑ったが、聖華の平べったい胸を優しく揉んだ後、指の腹で優しくクリクリと刺激した。同時に息苦しいほど深く口付けられ、聖華の背筋にゾクゾクと快感が走る。

「んんっー! んんんっ……」
 ビクビクッと過敏なほどに体を跳ねさせて感じる聖華に、伊澄は先程よりさらに強く欲情を煽られる。それに拍車をかけるように、聖華は伊澄の帯を解いた。

 息を整えるために唇を離すと、心拍数が上がった二人の荒い息遣いが重なった。
「聖華……」
 愛しそうに名前を呼ばれて、聖華は泣き出したくなるほど嬉しくなる。
 名前を呼ばれて、肌に触れられただけでこんなにも気持ちいい……伊澄が中に触れたらどんなに気持ちいいだろうかと、期待で感情は昂っていく。

 頬を染めて、懇願するように、求めるように伊澄を見つめる瞳に……伊澄もまた応えるように、触れる手に熱が籠る。それはもう、平行線のままだった二人の関係に戻れる様なものではなかった。

 聖華の腰に回した伊澄の手が、お尻の割れ目を撫でる。敏感になっているそこを何度も擦られて、聖華は焦ったいような気になって、密着している下半身を擦り付けた。
 聖華によってはだけた着物は、もう前を塞ぐものはなく……直接腹や自分のそこに擦り付けられる熱に、伊澄も逸る気持ちを抑えられなくなる。

 ツプンと指が中に入って、ヌルルルと簡単に奥まで……抵抗なく聖華のそこは伊澄の指を飲み込んだ。
「んっ、あっ! 伊澄っ……!」
 はぁ、はぁっ、と短く息を吐いて、泣き出しそうな聖華の声は、一層伊澄を興奮させた。
「ダメっ……やっぱりダメ!」
「煽ったのはお前だぞ……絶対にやめないからな」
「違う、ちょっとまっ……あぁっ!」
 ちょうど聖華の前立腺を伊澄の指がかすめて、聖華がそこをきゅううっと窄めて、ビクビクと体を震わせた。

 その反応に、さすがの伊澄も聖華の"いいところ"
と判断して、そこを執拗に責め立てる。
「あああっ! やっ、やぁぁあんっ!」
 腰を浮かせてガクガクと揺らす聖華の姿に、伊澄の興奮は増していき、荒くなった伊澄の息遣いに聖華はクラクラした。このまま抱かれたい……なのに、思い出してしまった、ついさっきまでそこに無遠慮な男根がねじ込まれていたことを。

「やだぁ……汚いからああっ!」
 泣きながらいやだいやだと言う聖華に、伊澄はようやく指の動きを止めた。

「汚い……?」
「さっきまで……別の男が入ってた……汚いの、ごめんね……嫌だよね」
 ヒックヒックとしゃくり上げるように泣き出す聖華に、なんだそんな事かと伊澄は笑ってしまった。ここまできて、また拒絶されるのかと思っていた。いくら今日は強気で攻めていたとしても、聖華が本気で嫌がれば、途中でも止めるのが伊澄という男だ。

「そんなの今更だろ」
「……だって本当にさっき、……っあ!」
 くちゅっと音を鳴らしながら更に聖華の中の指が増える、そんな事では途中で止める気にならないらしい。

「やっ、だめぇ……うぁっ、あんっ、あっ!」
 増やした指で水音を鳴らしながら肉壁を擦ると、聖華の口からはたまらなく気持ち良さそうな声が漏れる。
「俺が気にしないなら、いいんだよな?」
「あ゛ぁぁぁっ!」
 中の前立腺を指先でコリコリと刺激する。激しく乱れる聖華を見て、伊澄の指が止まるはずもなかった。
「やっ、やぁっ! だめ……も、やっ……」
「このまま続けるのは嫌か?」
「ちが……うっ、イッちゃうからぁ……」
 聖華が目尻に涙を溜めながら、射精しないように自分のガチガチに猛ったソレを握り込む。

「もぅ……ちょうだい、伊澄の……」
 耳元で誘われれば、伊澄はそれ以上理性を保つことはできなかった。
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