死が二人を分かたない世界

ASK.R

文字の大きさ
33 / 191
真里編:第4章 願望

ユキがくれたもの

しおりを挟む
 僕が魔王様を恐れるように、伊澄いずみさんがユキに怯えたように……今、僕は管理課のみんなにプレッシャーを与えてしまったらしい。
 恐らくこういった状況を生む事自体、聖華せいかの言っていた"眷属けんぞくの価値"というものだろう。そんな事も知らないままだから、彼は僕に苛立っているのだ。

 僕はフードも脱いで聖華に座って貰うよう促した、聖華も素直に椅子に座ってくれるので、基本悪い子じゃないんだよなぁと改めて思う。

「そもそも真里は眷属をなんだと思ってるの?」
 お、少しぶりっ子モードが復活してきた。

「ユキからは悪魔のなり方だと聞いてる、ユキは魔王様の眷属で、僕がユキの眷属で、魔王様からすると孫? みたいな……」
「説明としては正しいけど、その地位や一般悪魔からの認識について何も触れられてない」
 地位? ただの悪魔の成り立ちの違いだと思ってたよ! ユキも普通にしてるし、別に威張ってないけどな……。

「大事な事を説明不足なの、ユキさんらしいけどね」
「……そうだね」
「まず、眷属を作る事を魔王様から許可されてるのは魔界でただ一人、ユキさんだけなのよ……その顔、初耳って感じね」
 初耳です。

「"魔力補給"は分かるのよね!? まぁ分かるわよね! どうせ昨日ユキさんとヤったんでしょ!」
「えぇっ、雑っ!」
「魔力補給で回復するような消費魔力で、魔王様が力を与えてなれるのがアタシ達一般人! 総魔力量を削って分け与えられるのが眷属で、直に血を注いで悪魔にするから"直血"って呼ばれてるのよ! 眷属を作ると本人の総魔力量は減ったまま回復しないの、だから直血悪魔は魔力の質も、量も桁違いなんだから」
 魔力の概念を主軸にして説明されてるからだろうか? なんかユキに教えてもらったのと、微妙にニュアンスが違うような……。

「じゃあ、僕を眷属にした事によって、ユキは魔力量が減っちゃったって事?」
「そうよ! そこまでして貰ってるのも知らずにのうのうとしてるから腹立つの! 魔力の総量は悪魔のステータスなのに!」
「そうか……うん、教えてくれてありがとう」
 そうだね、僕は知らなくちゃいけない、学ばなくてはいけない。自分の置かれてる現状や、自分の立ち位置を、僕のためにユキがどれだけの事をしてくれたのかを……。

「すごい魔力量を持つ直血悪魔は、皆んなの羨望の的なの! 憧れなの! 凄い人なの! 高嶺の花なの!」
「おまけにユキは美人だしね」
「そうよ! しかも誰にでも優しくて、話しやすくて、強くて、エッチが上手なのよ!」
「……最後の関係ある?」
「関係ある! 魔力量が多い人とのエッチはめちゃくちゃ気持ちいいんだから♡」
 へ、へぇ~……そうなんだ、改めてユキと聖華がそういう関係だったと思い知らされて複雑だ。

「だからユキさんの眷属になりたい人は大勢いたのよ、直血悪魔になれるチャンスでもあるし……ユキさんが唯一選ぶ眷属は伴侶扱い、正妻って言われるのはそういう事よ!」
「ユキが唯一選んだ眷属……」
 本当にユキは何も言わない……聞けば聞くほど僕はユキからたくさんの物を貰っていたようだ、僕は彼にどう返せるのだろうか。

「だから! 真里が独り占めしていい人じゃないのよ」
 親切に教えてくれていた聖華の態度が一変したかに見えた、いや変わってないのだ、おそらく聖華は最初からそう言いたかったんだ。

「なるほどね、よく分かったよ……でも僕はユキから離れたりしないよ」
「なっ……! まだ分からないの? その力が自分には過ぎたものだって!」
「たしかに僕は貰いすぎてると思う、だから等価になるまで彼に対価を返したいと考えてるよ、そう思えたのは聖華のおかげだ」
「そうじゃないっ! アタシはそんな事、理解して欲しいんじゃない!」

 だろうね、でも僕もそこは譲れることなんかじゃないんだよ。僕にとってユキは、直血悪魔だとか、魔界でNo.2だとか関係ないんだ……池のほとりの梅の木の下で出会った、運動音痴で、すぐ泣いて、でも心優しいあの子で、あの子を幸せにすることが僕が一番やりたい事なんだから。

「悪いけど僕はユキを諦めたり、誰かと共有するなんて絶対無理だから」
「みんなが憧れるその地位に、出会ったばかりの自分が居るのは図々しいと思わないの!?」
「地位なんてどうでもいいよ、地位とか羨望とか、魔力量とか高嶺の花だとか……それってユキと寄り添うのに関係ある? そんな事言う人は、ユキの地位が好きなだけなんじゃない」

 聖華が椅子が後ろに飛ぶほど激しく立ち上がって、フーッと鼻息も荒く顔を真っ赤にしている。その瞳からぽろっと涙が溢れてきて、それを袖で拭いながら事務所から出て行くのを、僕はただポカンと見送ってしまった。

「あーあ、今のは可哀想」
「聖華は200年ずっとユキに憧れてるからなぁ」
「……もしかして聖華に向かって言ってるように聞こえました?」
「聖華に向かって言ってるようにしか聞こえなかった」
 ——っ! そんな気は無かっ……たとは言えないな、あまりにもユキ自身の事を見てないような言い分だったから、思わず口をついて出てしまった言葉ではあるのだけど……。

「アイツ、自分が一番ユキと親しいって自慢してたからな」
「まぁ、言われた事が胸に刺さったから出て行ったんだろう」
「やけ酒ならぬ、やけSEXして明日には元どおりだよ」
 周りは"ほっとけほっとけ"と言って誰も追いかけようとはしなかったが、僕は放って置けなかった。聖華が教えてくれた事で、僕はいろんな事に気づけたから……傷つけたままでいたくなかった。

「僕、ちょっと行ってきます! 迎えが来たら自分で帰れますって伝えて下さい!」
 事務所を出る時、"お人好しだ"と言われたのが聞こえた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

処理中です...