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魔界編:第11章
対峙
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ずっと嫌な予感がしていた、ユキが覇戸部さんと二人きりなんて心配で仕方なかった。
それでも、不本意だけどユキは覇戸部さんを信頼しているようだったから、自分が抱いている感情は、ただの嫉妬なんだと思っていた。
でも、違った。嫌な予感は当たってしまった。
聖華から連絡を受けて、覇戸部さんの雰囲気があまり良くないと聞いた後、ユキに憑いている犬神『雪代』からの視界共有が一瞬だけまぶたに過った。
一瞬すぎて状況を把握することができなかったけど、犬神から僕に助けを求めるこの行動は、ユキが危ない状況であることの証明だ。
聖華に場所を聞くと、前に潰した拠点の辺りだと分かって直感でその建物に向かったら、中からユキのか細くなった魔力を感じた。
居ても立っても居られなくて中に飛び込んだら、あの人が意識のないユキを抱えているところだった。
腕に抱かれたユキはだらんと腕を投げ出して、服は乱れていて……!
「お前っ、ユキに何をした!!」
頭と視界が真っ白になった、怒りで体が震えて、今にも魔力が暴走しそうだった。
ユキが弱ってる、意識がない……何をされた!? ただ何もされていない事なんて、あり得ないという状況だった。
ユキを取り返さなければと構えたら、あろうことか覇戸部はユキの事を床に落として……!
そんな光景を目の当たりにしたら、我慢なんてできるわけなかった。
怒りに任せて飛び掛かったら、一瞬抵抗されそうになって、思わず背負い投げの形で覇戸部を床に叩きつけた。
「なんで、好きな人にそんなことできるんだ!」
自分で言っておいて、そこじゃない……とは分かっているけど、目の前で見せられた事実がどうしても許せなかった。
意識がないユキを、床に落とすなんて……こんなやつ! こんなやつ……!
怪我をしていないか確認しようとしゃがむと、ユキは全く意識を戻す気配がなかった。
「ユキ……ッ! 起きて……」
抱き起こそうとしたところで、僕は首元の服を掴まれて体が宙に浮いた。
「――ッ!」
その辺の悪魔なら、痛くて動けなくなるほど強く叩きつけたのに……!
ズンと重いプレッシャーを放ちながら、その巨体は僕を片手で軽々と振って、遠心力の勢いで放り投げて……!
「ガハッ……!」
壁に叩きつけられて背中に強烈な痛みが走る、全身の骨がバラバラになったみたいに痛い!
十畳程しかない狭い建物の端に飛ばされたところで、そんなに距離が開いたわけでもないのに、ユキが遠くに感じる。
ちょっとだけしか見えなかったけど、ユキの胸元には魔力を嘔吐した跡があった、何かのトラウマに触れてる……すぐにでも抱きしめたいのに……!
ユキの顔や体のあちこちに、あいつが触れただろう魔力痕が残っているのも見えた、何かされてるのは間違いないんだ……!
「悪魔はこれくらいの落下、どうということはない」
覇戸部はユキを片手で持ち上げようとしていて、許せないという気持ちが更に上乗せされた。
「ユキに触るなッ……!」
離れていない距離なのに、手を伸ばすだけじゃユキに届かない……!
全身が悲鳴をあげるほど痛くて、ジワジワと回復していく体はまだ動かない。
遅い、遅い、遅い! そんな回復速度じゃユキが連れて行かれてしまう! もっと速く!
全身に魔力を行き渡らせて回復速度を早めて、そのまま全身の強化に転用して、覇戸部の襟元を掴んだ。
体を捻ってその頭を全力で棚に叩きつけても、頑丈な体の持ち主は一瞬意識を飛ばすことさえしない。
両手が塞がっていた僕は、ガードする間も無く左頬に拳をもらい、再度盛大に吹っ飛んだ。
クラッとした、強化していない拳だったのになんて重い……! 強化したものをモロに食らったら、頭が吹き飛ぶのは必定だ。
出てきた鼻血を拭って、立ち上がって覇戸部の前で構えた。
こいつを倒さなきゃユキは連れて帰れない、僕が負けたら、ユキはコイツに連れて行かれてしまう! 僕は絶対に負けるわけにはいかない……!
真正面からやり合うつもりの覇戸部は、構えに全く隙がなかった。直血悪魔の中で最も武闘派……魔界で三番目に強いこの男と、真正面からやりあってどうやって勝つ!?
考える暇を与えてくれるつもりはないらしく、早速警戒していた強化済みの拳が迫ってくる。
視力を上げろ、魔力量よく視ろ、僕なら合わせられる、何度もユキと練習したんだから……!
相手の魔力量に合わせて、魔力を相殺っ……!
パンッと弾ける音がして、魔力の相殺が成功したと思えば、次の拳がもう来てる……!
覇戸部の猛襲に、必死で食らいつくように魔力を相殺し続けた。狭い建物の中でパンッパンッと大きな相殺音が鳴り響く。
それでもユキは目を覚さない……チラリとユキを見た瞬間、覇戸部の強化魔力量がぐんっと下がって、僕は相殺に失敗して大きく後ろに弾かれた。
弾かれた僕の襟元を掴んで、片手で持ち上げてくるから、また投げられることを避けるために覇戸部の腕を掴んだ。
全力で強化して、そのままその頭に蹴りを入れたはずなのに、ガードもせずに受けた覇戸部は、僕をバカにするように薄く笑っていた。
「軽いな」
振り上げられて、そのまま地面に叩きつけられて……頭がグワンとした。
「ッハ……!」
痛すぎて声も出ない……頭が割れる!
全身の回復を急ぎながら、いくら思考を巡らせても、覇戸部に勝つための勝機が見出せない。
そうだ、プレッシャーを当てる……燃やす! 覇戸部への憎悪を込めて、怒りをぶつけるようにプレッシャーを放っても、覇戸部は来ると分かっていたかのように、身構えていた。
燃やせない……硬い魔力壁で阻まれてアイツまで届かない……!
「お前、攻撃が分かりやすいんだな」
そう言った覇戸部が、頭の上を指で示して……僕はユキに戦闘中は被っているよう言われていた、耳付きフードを着て来なかった事に気づいた。
僕が魔力を使おうとすると、ユキの犬耳に似た耳の幻影が現れるから……! アイツはそれが現れるのを見て、防御のタイミングを測ってるんだ。
それで身構えられると言ったって、他の人には抜群に効くプレッシャーが、全く効かないなんて……あれは相手を畏怖させるのが目的だから、僕を侮っている覇戸部には効きが悪いのかもしれない……。
正直キツい……覇戸部の魔力を相殺して、少しずつ魔力は削れてる。魔力量は僕の方が多い、このまま続ければ相手はいずれ魔力切れだ。
でも僕の有効打がない、なのに相手からの攻撃を食らえば大打撃……状況が不利すぎる……!
手が届かないくらいの距離にいるユキを視界の端に入れたら、口元や首にアイツの魔力痕が見えた。
魔力を見る能力を強化しているから、さっきよりハッキリとそれが見えてしまった。
ジワっと涙が出てきそうなのを必死で止めた、こんなやつと出かける事なんて、許さなければよかった……! 僕がもっと嫌がればユキは取り止めてたはずなんだ……僕のせいだ!
これ以上ユキに触らせるわけにはいかない……僕が、絶対にユキを守る!
覇戸部は構えて、一足飛びで僕の目の前まで迫った。
僕に掴みが有効だと見て、また胸元の服を取りにきた、その腕を叩き落とす。
叩き落とした腕を掴んで引き寄せて、顔面に思いっきり拳をめり込ませても、全然効いてない!
身長も三十センチ以上差があって、リーチ差も、拳の重さも……敵わない……!
覇戸部が腕を回して、僕が掴んでいた手が離れる……いや、離された!
クソッ、燃やしてやる、燃えろ! 怒りに任せてプレッシャーをぶつけて、覇戸部の胸元の服に火がついた。
なのにコイツは燃え上がるのもお構いなしで、再度僕の胸元を掴み上げた。宙に浮いたまま壁に押し付けられて、振り上げられた拳を胸に打ちつけられると、ドスンと強い衝撃が走った。
心臓……止まるッ……!
ずるっと床に落ちて、必死で呼吸を整えようとして、殴られた胸の辺りが濡れている事に気付いた。
なんだこれ……そう思った瞬間、おぞましい気配が胸元から全身に走って……直感で、この液体はマズイと分かった。
体が、動かなくなる……!
それでも、不本意だけどユキは覇戸部さんを信頼しているようだったから、自分が抱いている感情は、ただの嫉妬なんだと思っていた。
でも、違った。嫌な予感は当たってしまった。
聖華から連絡を受けて、覇戸部さんの雰囲気があまり良くないと聞いた後、ユキに憑いている犬神『雪代』からの視界共有が一瞬だけまぶたに過った。
一瞬すぎて状況を把握することができなかったけど、犬神から僕に助けを求めるこの行動は、ユキが危ない状況であることの証明だ。
聖華に場所を聞くと、前に潰した拠点の辺りだと分かって直感でその建物に向かったら、中からユキのか細くなった魔力を感じた。
居ても立っても居られなくて中に飛び込んだら、あの人が意識のないユキを抱えているところだった。
腕に抱かれたユキはだらんと腕を投げ出して、服は乱れていて……!
「お前っ、ユキに何をした!!」
頭と視界が真っ白になった、怒りで体が震えて、今にも魔力が暴走しそうだった。
ユキが弱ってる、意識がない……何をされた!? ただ何もされていない事なんて、あり得ないという状況だった。
ユキを取り返さなければと構えたら、あろうことか覇戸部はユキの事を床に落として……!
そんな光景を目の当たりにしたら、我慢なんてできるわけなかった。
怒りに任せて飛び掛かったら、一瞬抵抗されそうになって、思わず背負い投げの形で覇戸部を床に叩きつけた。
「なんで、好きな人にそんなことできるんだ!」
自分で言っておいて、そこじゃない……とは分かっているけど、目の前で見せられた事実がどうしても許せなかった。
意識がないユキを、床に落とすなんて……こんなやつ! こんなやつ……!
怪我をしていないか確認しようとしゃがむと、ユキは全く意識を戻す気配がなかった。
「ユキ……ッ! 起きて……」
抱き起こそうとしたところで、僕は首元の服を掴まれて体が宙に浮いた。
「――ッ!」
その辺の悪魔なら、痛くて動けなくなるほど強く叩きつけたのに……!
ズンと重いプレッシャーを放ちながら、その巨体は僕を片手で軽々と振って、遠心力の勢いで放り投げて……!
「ガハッ……!」
壁に叩きつけられて背中に強烈な痛みが走る、全身の骨がバラバラになったみたいに痛い!
十畳程しかない狭い建物の端に飛ばされたところで、そんなに距離が開いたわけでもないのに、ユキが遠くに感じる。
ちょっとだけしか見えなかったけど、ユキの胸元には魔力を嘔吐した跡があった、何かのトラウマに触れてる……すぐにでも抱きしめたいのに……!
ユキの顔や体のあちこちに、あいつが触れただろう魔力痕が残っているのも見えた、何かされてるのは間違いないんだ……!
「悪魔はこれくらいの落下、どうということはない」
覇戸部はユキを片手で持ち上げようとしていて、許せないという気持ちが更に上乗せされた。
「ユキに触るなッ……!」
離れていない距離なのに、手を伸ばすだけじゃユキに届かない……!
全身が悲鳴をあげるほど痛くて、ジワジワと回復していく体はまだ動かない。
遅い、遅い、遅い! そんな回復速度じゃユキが連れて行かれてしまう! もっと速く!
全身に魔力を行き渡らせて回復速度を早めて、そのまま全身の強化に転用して、覇戸部の襟元を掴んだ。
体を捻ってその頭を全力で棚に叩きつけても、頑丈な体の持ち主は一瞬意識を飛ばすことさえしない。
両手が塞がっていた僕は、ガードする間も無く左頬に拳をもらい、再度盛大に吹っ飛んだ。
クラッとした、強化していない拳だったのになんて重い……! 強化したものをモロに食らったら、頭が吹き飛ぶのは必定だ。
出てきた鼻血を拭って、立ち上がって覇戸部の前で構えた。
こいつを倒さなきゃユキは連れて帰れない、僕が負けたら、ユキはコイツに連れて行かれてしまう! 僕は絶対に負けるわけにはいかない……!
真正面からやり合うつもりの覇戸部は、構えに全く隙がなかった。直血悪魔の中で最も武闘派……魔界で三番目に強いこの男と、真正面からやりあってどうやって勝つ!?
考える暇を与えてくれるつもりはないらしく、早速警戒していた強化済みの拳が迫ってくる。
視力を上げろ、魔力量よく視ろ、僕なら合わせられる、何度もユキと練習したんだから……!
相手の魔力量に合わせて、魔力を相殺っ……!
パンッと弾ける音がして、魔力の相殺が成功したと思えば、次の拳がもう来てる……!
覇戸部の猛襲に、必死で食らいつくように魔力を相殺し続けた。狭い建物の中でパンッパンッと大きな相殺音が鳴り響く。
それでもユキは目を覚さない……チラリとユキを見た瞬間、覇戸部の強化魔力量がぐんっと下がって、僕は相殺に失敗して大きく後ろに弾かれた。
弾かれた僕の襟元を掴んで、片手で持ち上げてくるから、また投げられることを避けるために覇戸部の腕を掴んだ。
全力で強化して、そのままその頭に蹴りを入れたはずなのに、ガードもせずに受けた覇戸部は、僕をバカにするように薄く笑っていた。
「軽いな」
振り上げられて、そのまま地面に叩きつけられて……頭がグワンとした。
「ッハ……!」
痛すぎて声も出ない……頭が割れる!
全身の回復を急ぎながら、いくら思考を巡らせても、覇戸部に勝つための勝機が見出せない。
そうだ、プレッシャーを当てる……燃やす! 覇戸部への憎悪を込めて、怒りをぶつけるようにプレッシャーを放っても、覇戸部は来ると分かっていたかのように、身構えていた。
燃やせない……硬い魔力壁で阻まれてアイツまで届かない……!
「お前、攻撃が分かりやすいんだな」
そう言った覇戸部が、頭の上を指で示して……僕はユキに戦闘中は被っているよう言われていた、耳付きフードを着て来なかった事に気づいた。
僕が魔力を使おうとすると、ユキの犬耳に似た耳の幻影が現れるから……! アイツはそれが現れるのを見て、防御のタイミングを測ってるんだ。
それで身構えられると言ったって、他の人には抜群に効くプレッシャーが、全く効かないなんて……あれは相手を畏怖させるのが目的だから、僕を侮っている覇戸部には効きが悪いのかもしれない……。
正直キツい……覇戸部の魔力を相殺して、少しずつ魔力は削れてる。魔力量は僕の方が多い、このまま続ければ相手はいずれ魔力切れだ。
でも僕の有効打がない、なのに相手からの攻撃を食らえば大打撃……状況が不利すぎる……!
手が届かないくらいの距離にいるユキを視界の端に入れたら、口元や首にアイツの魔力痕が見えた。
魔力を見る能力を強化しているから、さっきよりハッキリとそれが見えてしまった。
ジワっと涙が出てきそうなのを必死で止めた、こんなやつと出かける事なんて、許さなければよかった……! 僕がもっと嫌がればユキは取り止めてたはずなんだ……僕のせいだ!
これ以上ユキに触らせるわけにはいかない……僕が、絶対にユキを守る!
覇戸部は構えて、一足飛びで僕の目の前まで迫った。
僕に掴みが有効だと見て、また胸元の服を取りにきた、その腕を叩き落とす。
叩き落とした腕を掴んで引き寄せて、顔面に思いっきり拳をめり込ませても、全然効いてない!
身長も三十センチ以上差があって、リーチ差も、拳の重さも……敵わない……!
覇戸部が腕を回して、僕が掴んでいた手が離れる……いや、離された!
クソッ、燃やしてやる、燃えろ! 怒りに任せてプレッシャーをぶつけて、覇戸部の胸元の服に火がついた。
なのにコイツは燃え上がるのもお構いなしで、再度僕の胸元を掴み上げた。宙に浮いたまま壁に押し付けられて、振り上げられた拳を胸に打ちつけられると、ドスンと強い衝撃が走った。
心臓……止まるッ……!
ずるっと床に落ちて、必死で呼吸を整えようとして、殴られた胸の辺りが濡れている事に気付いた。
なんだこれ……そう思った瞬間、おぞましい気配が胸元から全身に走って……直感で、この液体はマズイと分かった。
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