これでわたくしも立派な悪役令嬢に…ってちょっとそこの貴方、勝手にわたくしの役目を担わないでくださいまし！

学生たるもの勉学に励むべし！

ち、違うんですのよ！結局原作改変してるのはお前だと仰りたい気持ちはよく分かりますわ！けれどわたくしのお話もお聞きくださいまし…！
原作の大ファンであるわたくしはこの謎の配役チェンジに危機感を覚えましてどうにかしないといけないと思い、積極的に行動を起こそうと決意したのです。最近のわたくしは生ぬるかったのですわ！

しかし現在は春休み。嫌がらせどころの話ではありませんでした。何せ会う機会が無いのですもの。ですが時期や細部が異なっていても結果が合っていれば細事だと言わんばかりのこの世界であるのですから、わたくしはメリルの家にお手紙を送ることにしたのです。そうしましたらなんとまぁ、メリルは家に帰ってなかったんですのよ！
リリー子爵家は今や飛ぶ鳥を落とす勢いのある家ではございますけれど、王都に屋敷はお持ちでないんでしたわ。なんでも御当主が領地復興のため現地にて尽力しており、あまり王都へ出てこないのだとか。領地へは馬車で1週間ほどかかりますし、春休みは約1ヶ月。メリルは寮に残ることにしたようです。

そう、寮。
なんとこの学園、寮がございますのよ！
わたくしもちょっぴり寮に住んでみたかったんですけれど、可愛い弟から行かないでと、うるうるとした目でそう告げられたからには王都の屋敷から通う一択ですわ！ですのでわたくしが通う3年間は、お母様と弟もこちらに住むことと相成りましたの。
その間の領地はどうするのかとお思いになられるかもしれませんが、領地の方には優秀な代官がおりますし、以前お話ししました通り代々ローズ侯爵家は騎士の家系となっております故、二足の草鞋を履くことが決定づけられているようなものです。もちろん騎士として専念するために家督を弟に譲る者もおりましたし全員が全員騎士になるわけでもございませんから一概には言えないのですが、まぁ簡単に言いますと先祖の努力も相まって長く空けても大丈夫な制度が整っているとのこと。もし何かトラブルがあったとしても、お父様なら2日掛からず領地に駆けつけられますし。
話が逸れてしまいましたわ。ええとそれでなんのお話でしたかしら？

あぁ、そうそう。メリルが寮に残っているということはつまり学園で生活をしているということですから、条件はクリアしているわけです。春休み中も図書室や食堂などは開放しておられるようですし、ならばと図書室へと呼び出せば、なんと、殿下もいらっしゃるではありませんか！聞くところによると、春休み中殿下とお勉強会を連日行っていたのだとか。メリルは最近成績が伸び悩んでいたから、殿下に相談したのでしょう。過去問などはとても参考になりますものね。

以前でしたら殿下の前でも嫌がらせは出来たのですが、今の殿下は子を守る母親熊のようなもの。すごすごと退散するしかないわたくしに、メリルが一緒に勉強しないかと声を掛けてくださっ…いえ、その、観察！お2人の進展具合などを知るためにわたくしは勉強会に参加することを決めたのです。
2年の始めには始業テストもございますし、メリルも殿下も成績優秀者ですから、今後の参考になるだろうという打算もございました。加えて、公表していない状態での2人きりの勉強会は外聞が悪いという面もありましたし。え、わたくしの成績ですか？わたくしは可もなく不可もなくと言ったところですわ。ちなみにファウスト様は言わずもがなです。1位以外とったことがないと仰っておりました。

その日は勉強道具を持参していなかったので後日勉強会に参加する約束をして家に帰り、遊びに来ていたファウスト様にその話をしたところ楽しそうだと思われたのか、数時間後には殿下とメリルの許可をもらってきたと笑顔でご報告されたのです。
実際勉強会はとても充実したものとなり、こうして数日間お邪魔させていただいている、ということでございます。
もちろん、テスト勉強しているだけではなく色々情報交換をしつつ、お2人の仲を確認したりもしておりましたわ。
現在のお2人の仲は良好なご様子で、特に変化は見られませんでしたが、着実に距離は縮まっておられるようでした。

物語はあと1年。殿下の卒業まで。卒業パーティで殿下がメリルをエスコートして登場し、そこでプロポーズするんですの。
その時わたくしは、なりふり構わず追い縋って、それから…

「ティア、また引っ掛け問題に引っ掛かってる。」
「もう、この問題作った方は意地悪ですわ！」

今はテスト勉強優先ですわね！
ごめんあそばせ！