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貴族令嬢たるもの友人とお喋りに興じるべし!
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教室まで送るというファウスト様の申し出を断り、わたくしは一人わたくしの教室へと参りました。
扉を開けば、視線。視線。視線。
静かになった教室内を見渡せば、好奇に奇異、新しいゴシップに面白がる雰囲気の方が大半ですわね。あら、憐憫の眼差しの彼女は殿下をお慕いしていらっしゃった方かしら。
「皆様、ごきげんよう。」
いつも通りに挨拶をすると、視線を逸らす方が半分、わたくしからは情報が得られないと興味を失った方が何名か。注意すべきはわたくしを見ながらお友達とおしゃべりに興じていらっしゃる方々ですわね。
「ごきげんよう、ティアナさん。」
「おはようございます。」
普段通り挨拶を返してくださったシシリー・アスター侯爵令嬢と、エリン・サルビア男爵令嬢は数少ないわたくしのお友達です。
幼少期よりファウスト様しかお友達の居なかったわたくしですが、この1年半で漸く女の子のお友達が出来たんですのよ。わたくし本当に嬉しくて…!まぁこれはわたくしが出不精でしたので、仕方のないことではありましたが、それはそれ、これはこれ、というやつですわ!
「ティアナ様、昨日父から、その、ご報告が。本当ですの?」
気遣わしげに尋ねてきてくださったエリンさんにわたくしは笑顔で頷きました。こういった印象付けも大切ですわよね。王家と我がローズ家との関係性がどのようになっているのかは恐らく皆様の関心が寄せられる事柄でしょうし。蟠りは一切無いと証明する良い口実です。
「えぇ。先日殿下から直接伝えていただきました。わたくしも快諾致しましたわ。」
「まぁ、やっぱりそうだったのね!ずっと心待ちにしていらっしゃったのでしょう?」
「え?えぇ、そうですわね…?」
やっぱり、とはどういうことなのでしょう?婚約者候補から外れるということは、メリルと殿下が婚約するひいてはハッピーエンドになるということですので、心待ちにしていたのはそうなのですが、なんだか意味合いが少し違っているような気がしておりますわ…?
何時になくはしゃいだお声のシシリーさんに戸惑いながらも肯定すると、話を聞いていらっしゃったらしい周囲からも納得したような空気が。
あの、皆様今何を納得されたんですの?
「シシリーさん、エリンさん、今回のことは…」
「大丈夫よ、ティアナさん。分かっております。」
「え?」
「私もたくさん聞きたいことはあるんですけどティアナ様の様子を見るに、まだ、ということですわね?」
わたくしはエリンさんの言葉に大変驚きました。
「まさか、エリンさん、シシリーさんはもう知っていらしたの?」
「私達だけじゃないですよ!ね、シシリー様。」
「えぇ。」
「まぁ!わたくし、そんなに分かりやすかったかしら…?」
メリルと殿下の婚約発表はまだ先のことである筈なのですが…どうしましょう。わたくし、嬉しさが隠しきれていないのかもしれませんわ。
慌てて顔を隠すように頬に触れると、エリンさんは首を横に振りました。
「分かりやすいのはティアナ様じゃなくって、クレマチス様の方といいますか、なんといいますか…。」
「ファウスト様が?」
「ここ最近ずっと楽しげでしたもの。ティアナさんに関連する何かがあるのかしらと思って心配していたのだけれど、良い事のようで安心しましたわ。」
ファウスト様がご機嫌でいらしたのは分かっていたのですが、なるほど、殿下の婚約といいますか恋に関心があったのですね。ファウスト様ったら、口ではあんなこと言いつつやっぱり大切に思っていらっしゃったんだわ!
「ご心配くださりありがとうございます。」
「いいえ。ふふ、もし正式に決まりましたら、こっそりお教え下さいまし。」
「私も!」
お二人の様子を見るに、殿下の婚約については確信を得ていらっしゃるけれど、お相手については分からない、といった感じでしょうか。
お相手がメリルだと告げたら、きっと驚かれるかしら?それとも予想通りだと頷かれるかしら?
「えぇ、それはもちろん。許可をいただけたら真っ先にお伝えしますわ。」
「あぁ、本当に楽しみですわ。」
「ですね!」
わたくしも、楽しみですわ!
扉を開けば、視線。視線。視線。
静かになった教室内を見渡せば、好奇に奇異、新しいゴシップに面白がる雰囲気の方が大半ですわね。あら、憐憫の眼差しの彼女は殿下をお慕いしていらっしゃった方かしら。
「皆様、ごきげんよう。」
いつも通りに挨拶をすると、視線を逸らす方が半分、わたくしからは情報が得られないと興味を失った方が何名か。注意すべきはわたくしを見ながらお友達とおしゃべりに興じていらっしゃる方々ですわね。
「ごきげんよう、ティアナさん。」
「おはようございます。」
普段通り挨拶を返してくださったシシリー・アスター侯爵令嬢と、エリン・サルビア男爵令嬢は数少ないわたくしのお友達です。
幼少期よりファウスト様しかお友達の居なかったわたくしですが、この1年半で漸く女の子のお友達が出来たんですのよ。わたくし本当に嬉しくて…!まぁこれはわたくしが出不精でしたので、仕方のないことではありましたが、それはそれ、これはこれ、というやつですわ!
「ティアナ様、昨日父から、その、ご報告が。本当ですの?」
気遣わしげに尋ねてきてくださったエリンさんにわたくしは笑顔で頷きました。こういった印象付けも大切ですわよね。王家と我がローズ家との関係性がどのようになっているのかは恐らく皆様の関心が寄せられる事柄でしょうし。蟠りは一切無いと証明する良い口実です。
「えぇ。先日殿下から直接伝えていただきました。わたくしも快諾致しましたわ。」
「まぁ、やっぱりそうだったのね!ずっと心待ちにしていらっしゃったのでしょう?」
「え?えぇ、そうですわね…?」
やっぱり、とはどういうことなのでしょう?婚約者候補から外れるということは、メリルと殿下が婚約するひいてはハッピーエンドになるということですので、心待ちにしていたのはそうなのですが、なんだか意味合いが少し違っているような気がしておりますわ…?
何時になくはしゃいだお声のシシリーさんに戸惑いながらも肯定すると、話を聞いていらっしゃったらしい周囲からも納得したような空気が。
あの、皆様今何を納得されたんですの?
「シシリーさん、エリンさん、今回のことは…」
「大丈夫よ、ティアナさん。分かっております。」
「え?」
「私もたくさん聞きたいことはあるんですけどティアナ様の様子を見るに、まだ、ということですわね?」
わたくしはエリンさんの言葉に大変驚きました。
「まさか、エリンさん、シシリーさんはもう知っていらしたの?」
「私達だけじゃないですよ!ね、シシリー様。」
「えぇ。」
「まぁ!わたくし、そんなに分かりやすかったかしら…?」
メリルと殿下の婚約発表はまだ先のことである筈なのですが…どうしましょう。わたくし、嬉しさが隠しきれていないのかもしれませんわ。
慌てて顔を隠すように頬に触れると、エリンさんは首を横に振りました。
「分かりやすいのはティアナ様じゃなくって、クレマチス様の方といいますか、なんといいますか…。」
「ファウスト様が?」
「ここ最近ずっと楽しげでしたもの。ティアナさんに関連する何かがあるのかしらと思って心配していたのだけれど、良い事のようで安心しましたわ。」
ファウスト様がご機嫌でいらしたのは分かっていたのですが、なるほど、殿下の婚約といいますか恋に関心があったのですね。ファウスト様ったら、口ではあんなこと言いつつやっぱり大切に思っていらっしゃったんだわ!
「ご心配くださりありがとうございます。」
「いいえ。ふふ、もし正式に決まりましたら、こっそりお教え下さいまし。」
「私も!」
お二人の様子を見るに、殿下の婚約については確信を得ていらっしゃるけれど、お相手については分からない、といった感じでしょうか。
お相手がメリルだと告げたら、きっと驚かれるかしら?それとも予想通りだと頷かれるかしら?
「えぇ、それはもちろん。許可をいただけたら真っ先にお伝えしますわ。」
「あぁ、本当に楽しみですわ。」
「ですね!」
わたくしも、楽しみですわ!
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