普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

文字の大きさ
37 / 984
第2章 正しさの在り方

11 聞かなければならないこと

しおりを挟む
 私の知っている金盛 善子という人は、誰よりも優しくて気遣いができる、頼もしい先輩だった。
 私が知り合ったのは、中学に入学して半年くらい経った頃のこと。

 そのくらいの頃から、今まで続く正くんの私への絡みが始まっていた。
 今となってはある程度慣れたから、面倒臭いとは思いつつそこまで気にしなくなったけれど、最初の頃は大分うんざりしていた。
 そんな私に声を掛けてくれた所から、私たちはよくお話するようになった。

 善子さんはいつも全面的に私を慰めてくれて、時には一緒に正くんの愚痴を言い合ったり。常に私の気持ちを汲んでくれる人。
 だからついついその優しさと包容力に甘えてしまったりして。
 そんな善子さんが、私は好きだった。

 誰にだって善子さんはそうだった。
 正くん絡みじゃなかったとしても、善子さんは色んな人に手を差し伸べていて、みんなから慕われていた。

 正義の味方、というのは少し過剰な表現だとしても。みんなにとって善子さんは癒しの存在であり、時には救いでもあった。
 善子さんが楽しくにこやかに話しかけてくれることそのものが、気持ちを楽にさせてくれる。

 私だって善子さんに声を掛けてもらっていなかったら、正くんへの不満はとっくの昔に爆発していたと思う。

 だから幼い頃の正くんが善子さんに憧れを抱いて、一種の神聖化をしていたことはわからなくはない。
 小さい頃から身近にあんな人がいたら、きっと誰だって憧れる。あんな風になれたら、なんて。

 でもそれが転じて、憎しみや嫌悪に変わってしまうというのは、とても悲しいことだと思う。
 だって変わったのは善子さんじゃない。変わったのは、善子さんを見る正くんの目なんだから。
 それを今、私が言ったところでもう仕方ないのかもしれないけど。

「すっかり話が脱線したね、ごめんごめん。正のことなんて、今はどうでもよかった」

 あははと、苦笑いする善子さん。
 無駄だとは思わなかった。確かにその話を聞いて、少し正くんの見方は変わった気がする。
 だからといって、普段の正くんのダル絡みに好感が持てるかというと、別の話だけど。

「そろそろちゃんと話さなきゃ。私が魔女になった話を。っていうか、どうして私がレイを目の敵にしてるのかって話をね」
「別に無理にしなくてもいいですよ? レイくんに気をつけろって話はよくわかりましたし」
「いや、アリスちゃんにはある程度話しておきたいって、私のわがまま。お友達だしさ!」

 さっきの話を聞く限り、あんま穏やかではなさそうだった。
 それでもこうやって毎日朗らかに過ごしているのは、偏に元来のその明るさ故だろうから。

「まぁさっきも言ったけど、全部を話すと私のあの夏の一大事を、大ボリュームで語り聞かせることになっちゃうからさ。まぁ掻い摘んで」

 校庭から聞こえてくる歓声はもう完全に外のもので、二人だけしかいないこの空き教室は、とても静かなものだった。

「レイには、親友を殺された」

 不意に放たれた言葉に、私は完全にフリーズしてしまった。
 全く想像していなかった。そういう話になるとは、思ってすらいなかったから。

「私が魔女になってしまったのは、そもそもレイにホイホイついて行ってしまったから。そこで私は魔女たちが起こした騒動に巻き込まれて、いつしか私も『魔女ウィルス』に感染してた」
「でも、レイくんが人殺しって……」
「するんだよ、平然とね。何にも関係なかったあの子を、レイは殺した。ずっと私のことを守ってくれたあの子を。レイに付いて行って魔女に関わってしまった私を、必死で引き離そうとしてくれていたのに」
「その人も魔女、だったんですか?」

 善子さんは頷いた。

「中学に入ってから仲良くなった子だった。気がつけば間に仲良くなってて、数ヶ月の付き合いしかなかったけど、でも親友って呼べるほどの友達。その時までは、魔女ってことは流石に知らなかったけどね」

 その人をレイくんが殺した。
 今日私が会ったレイくんが、人殺しをしたなんて信じられなかったけれど。
 でも善子さんがそう言うのなら、きっと……。

「レイに関わってしまったから魔女になってしまったとか、そんなことはどうでもいいの。私は、あの子を殺したアイツが許せない」

 いつも明るく朗らかな善子さんの目には、静かに揺らめくものがあった。
 善子さんのこんな顔を見る日が来るなんて。
 でも、誰にだって暗い一面はある。それは何もおかしい事じゃないんだ。

「善子さんは、その人の仇を討ちたいんですか?」
「うーん。復讐したいとかいう気持ちはない。でも問い正したい。どうしてあの子を殺したのか。それをアイツは一言も言わなかったから」
「なんだ。よかったぁ」

 私がホッと胸を撫で下ろすと、善子さんはキョトンした顔を向けた。

「善子さんがもし仇を討ちたい、復讐したいって言ったらどうしようって思ってました。私、そんな善子さん見たくないから」
「ごめんごめん、心配させちゃったね。大丈夫。そういう暗い気持ちはないんだ。でも一回清算しなきゃいけないって、そう思ってるのは本当」

 少し曇り気味だった顔に、明るさが戻ってきた。
 私の頭を優しく撫でながら、善子さんは少し微笑んだ。

「なんかちゃんと話さなくてごめんね。自分から話すって言ったのに」
「大丈夫です。それより善子さんの意外な一面が見られて、ちょっと嬉しかったり」
「ちょっと、人が真剣に話してるってのにー!」

 そうやって私の頬を優しくつねる。
 それは紛れもなく、いつも通りの優しい善子さんだった。

「だからまぁ、レイには十分気をつけて。無害な顔して、何をしてくるかわかったもんじゃない。私はアリスちゃんが傷つくところなんて見たくないよ」

 多分レイくんはまた会いに来る。その時、私に何ができるのかな。
 それはきっと、私の今後にも大きく関わってくるんだと思う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...