普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第3章 オード・トゥ・フレンドシップ

46 守る理由

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「カノンさんがどうしてまくらちゃんを守って戦っているのか、聞いてもいい?」

 少しの間無言の時間が続いて、私から口を開いた。
 そんな私にカノンさんは穏やかな表情で頷いた。

「アタシはまくらに救われたんだ。だから今度は、アタシがまくらを守るって決めた」
「まくらちゃんがカノンさんを救った?」

 あんまり想像のできないことだった。
 まくらちゃんは自分が魔女だということだって自覚していないわけだし。
 それにまくらちゃんの話だと、寝ているところにカノンさんがやって来た、といった風だった。

 私が首を傾げていると、カノンさんは困ったように眉を寄せた。

「なんだよ、そんなに意外か?」
「意外と言えば意外、かな? カノンさんが誰かに助けられたりしてるとこ、あんまり想像できないし」

 カノンさんは男勝りな性格をしているし、実際勝気で力強い。
 誰かに助けを乞うたりする姿は中々想像しにくい。

「一ヶ月くらい前、アタシはとある魔女たちを追っていたんだ。ソイツらとの戦いに敗れて命からがら近くの森に逃げ込んだ。まくらとはそこで出会ったんだ」

 いい思い出を語るように朗らかな表情をするカノンさん。
 でもちゃっかり死にかけてる。そんな顔で話すようなことじゃない気もするけれど、私は黙って耳を傾けた。

「正直アタシはもうダメだと思ってたんだ。魔法で傷を癒す力も残ってなかった。あんな奴らに負けるのは恥だったし、静かなところで誰にも邪魔されずに死のうと思って森に入ったのに、そこにはまくらがいた。アイツはアタシのことを見つけるとパッと笑って近寄って来てさ、アタシの傷を魔法で治してくれたんだ。完治とまではいかなかったが、それでアタシは命を繋ぐことができた」
「え、まくらちゃん魔法使えるの?」
「いや、まくらが魔法を使っているのを見たのはその時だけだ。おまけに何度聞いてもまくらはその時のことを覚えてないって言うんだ。私に魔法をかけてすぐ寝ちまったから、多分寝ぼけてたのかもな」

 まくらちゃんのことを語るカノンさんはとても穏やかだった。
 とてもまくらちゃんのことが好きなんだって伝わってくる。
 聞いているこっちまで微笑ましくなってくるくらいだった。

「でも例えまくらが覚えていなくても、アタシがまくらに救われたことに変わりはない。だから今度はアタシがまくらのことを助けてやろうと、そう思ったんだ。魔女だとかそんなの関係ない。まくらに救われたこの命をまくらの為に使いたいって」

 それはなんともカノンさんらしいなと思った。
 優しく、そして義理堅い。男勝りなカノンさんらしい考え方だ。とても格好いい。

「その後カルマが現れて、より一層まくらを守る必要があった。後はまぁ、お前の知っている通りさ」
「まくらちゃんがいてこその今のカノンさんなんだね」
「そういうことだ。だからアタシは何があってもまくらを守る。そのためなら何もかも切り捨てられるさ。まくらはそれだけのことをアタシにしてくれたんだ」

 きっと命を救われただけじゃないんだ。それまでのカノンさんのことはわからないけれど、きっとまくらちゃんはカノンさんの心も救ったんだ。
 少なくとも、戦いに敗れた直後の荒んだ心にまくらちゃんのあの無邪気な笑顔は沁みたに違いない。
 だからこそカノンさんは、そこまで強くまくらちゃんを守ることに拘っている。二人はもうお互いがなくてはならない存在なんだ。

「自分で言うのもなんだけどよ、まくらに会ってアタシは大分丸くなったんだぞ? 昔は誰ともつるまずに、一人でいたからな」
「確かにカノンさんは一匹狼っぽいよね」
「うっせぇよ。ま、否定はしねぇけどな。まくらがアタシを変えてくれた。人を想う心を教えてくれたんだ。アイツはすげぇ奴なんだ」

 嬉しそうに言うカノンさんは、妹を自慢するお姉さんみたいだった。
 まくらちゃんのことをまるで自分のことのように楽しそうに話す様はなんだか微笑ましかった。

「カノンさん、なんだか本当のお姉さんみたい」
「まぁ確かに、まくらは友達ってよりは妹みたいなもんだな。アイツ見かけ通りガキっぽいし」
「お姉ちゃんいいなぁ。私一人っ子だからお姉ちゃんには憧れたよ。あ、私のお姉ちゃんになってくれてもいいんだよ?」
「バカ言え。こんなでっかい妹はいらねぇよ」

 戯けて言ってみると、カノンさんは意地悪く笑みを作ってシッシと手を振った。
 でっかいとは失礼な。でっかいとは。

「別に妹にならなくても、ダチなんだから守ってやるよ。さっきも言っただろ」
「カノンさんカッコイイー!」
「茶化すな」

 二人顔を見合わせて笑う。
 昨日の夜から緊迫した状況が続いたりしていて、楽しくお喋りする時間はなかった。
 こうやって話すことで、少しずつお互いのことがわかり合えてきた気がした。

「なんかこうやって、気を抜いて人と話すのは久しぶりだ。ずっとまくらと二人で色んな所を点々してたからさ。もちろんまくらと話してる時も楽しいけど、いつまくらが眠ってカルマが襲ってくるのかって、いつもピリピリしてた」
「もうすぐ終わるよ。カルマちゃんは決着をつけにくるみたいだし、もう終わりにしよう。大丈夫。私たちがついてるから」

 私が手を握るとカノンさんは少し恥ずかしそうに目を逸らした。
 けど嫌そうにはしない。どちらかといえばこういうスキンシップは嬉しいくせに、カノンさんは素直じゃなかった。

「そう、だな。それに今のまくらにはアタシだけじゃない。アリスや霰もいる。まくらにもやっと安心できる時がくる」
「何言ってんの。私たちはもちろんまくらちゃんの友達だけど、やっぱりまくらちゃんの居場所はカノンさんの所だよ。ずっと側にいてあげて」
「ああ、そうだな……」

 まただった。やっぱりカノンさんは何かを隠している。
 一体何を考えているんだろう。なんだかカノンさんが遠くに行ってしまいそうな気がして、ちょっぴり怖くなった。
 私がその手を握ると力を強めると、カノンさんは弱々しく微笑んだ。
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