普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第6章 誰ガ為ニ

98 守るべきは

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「まくらは、カノンちゃんの足を引っ張るの嫌なの! まくらのせいで、カノンちゃんがしたくないことするのは嫌なの! だってカノンちゃんには、いつだってまくらが大好きなカッコイイカノンちゃんでいて欲しいから!」
「まくら……」

 ポロポロと大粒の涙を流しながら、まくらは再びヨタヨタとカノンに歩み寄る。
 膝を折って項垂れるカノンにしなだれ掛かるように抱きついて、その肩に顔を埋める。

「まくらだってカノンちゃんのこと守りたいし、カノンちゃんと一緒に戦いたいし、カノンちゃんが心配しなくていいように強くなりたいの。その為に、まくらはカルマちゃんにお願いしたの。一緒にカノンちゃんの力になってって。お友達を守る力を貸してって。だから……だから。まくらは、カノンちゃんにそんなこと言って欲しくないよ……」
「………………」

 ぎゅっと力強く抱きついてくるまくらを、カノンは抱きしめ返すことができなかった。
 その資格が自分にはないと、そう思ってしまった。
 その小さな体で精一杯思いやってくれた気持ちに、全く気付いてやれていなかったから。

 まくらを守ると言いながら、結局自分のことしか考えられていなかった。
 まくらが一体どういう気持ちで自分と一緒にいるのか、それを気にしていなかった。

 守るとは一体どういうことなのか。
 ただ怪我をせず、命を繋いでいればそれでいいのか。
 自分は何を持って、この少女を守りたいと思ったのか。

「────ごめん、まくら。アタシが、バカだった……」
「ばかだよ。カノンちゃんは、ばかだよ」

 優しさと思いやり、屈託のない笑顔に心を満たされたから。
 その健気で純粋で儚い心に救われたから、守りたいと思った。
 ずっと笑顔でいてほしいと、幸せになってほしいと思った。

 だからこそ、カノンは全てを捨ててでも守り抜きたいと思ったのだ。

 ならば、今の自分の選択でそれができるのか。
 カノンは自問して、すぐさま首を振った。

 例え今ここで逃げ出したとして、それで命は守れても、きっと笑顔は守れない。
 それでは何の意味もないと、そう気付いた。

「わかった。わかったよまくら。アタシらしくなかった。ありがとう、気付かせてくれて」

 ぎゅっと強くその小さな体を抱きしめると、まくらもまた強く抱きしめ返した。
 その華奢な体で、懸命にカノンに自分自身を伝えている。
 その腕に込められた強い意志に、カノンは心をいだかれる思いがした。

「逃げ出すのはやめだ。弱気になるのももうやめだ。戦うぞ。ダチの為に戦うんだ」
「うん。まくらも戦うから。カノンちゃんと一緒に、戦うから」
「あぁ。ありがとう、まくら」

 腕を緩めたカノンは、泣きはらした目をしているまくらの頭を優しく撫でた。
 少し拗ねたようにツンとした顔をしつつも、まくらは嬉しそうに目を細める。

 慈しむように微笑むカノンに、まくらは拳をぎゅっと握りこんで言った。

「まくらのことは、カルマちゃんに守ってもらうから。だから、カノンちゃんは心配しないで。だって、その為のカルマちゃんだもん。カノンちゃんの役に立つ為に呼んだんだもん。だから、いっぱいいっぱい、カルマちゃんのこと頼ってね」
「ああ、そうするよ」

 カノンは少し苦笑いを浮かべつつ、和やかにまくらの頭を撫でた。
 まくらとカルマは記憶を共有していない。故にお互いの言動を知らない。
 カルマこそが、まくら最優先だとカノンを唆した張本人であることを、まくらは知らない。

 しかし、何よりも一番優先すべきはまくらの笑顔だ。
 そして、皆で笑顔を共有することだ。
 だからこそカノンは、カルマが並べ立てた正論よりもまくらの意志と想いこそを尊重したいと思った。

 それこそが自分らしい行いだと、そしてみんなが幸せになれる行いだと思ったから。

「よし! そうと決まれば行くぞ!」

 ひとしきりまくらの頭を撫でてから、カノンは気合を入れて立ち上がった。
 その瞳に、もう迷いは無い。

「ロード・ケインとケリをつける。あのふざけた野郎から、みんなを守るぞ。そんで全部終わったら、また一緒にここに帰ってこよう」
「うん!」

 ニィッっと口の端をあげるカノンに、まくらは笑顔で頷いた。
 そしてその手に飛びついて、ぎゅっと強く握りしめる。

 その手の温もりを感じながら、カノンは改めて覚悟を決めた。

 まくらを守っていく為には、まくらに誇れる自分でなくてはいけない。
 笑顔を守り、心を守ってく行く為には、自分自身が揺るがない心を持っていかなければいけない。
 だからこそ自分の心に従って、自分らしく生きていこうと。
 それこそが、真にまくらを守り、共に生きていくことだと。

 一番大切なものを守る為に全てを守ることを、カノンは覚悟した。



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