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三話 突然のニュース

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 藤崎は少し考えて、その男の名前を高校時代の同級生の甲斐航太朗にした。

 甲斐は背が高くて足が長くスタイルがよい。顔はイケメン、スポーツ万能で成績もトップクラス。おまけに親は衣料チェーン店をトップクラスにのし上げた立志伝中の人物だ。学校でも絶大な人気を誇っていた。

 そういう奴にはいけ好かない奴が多いし、反発する者も多いが、甲斐は気さくで誰とも分け隔てなく付き合っていた。
 自分とあまりにもかけ離れていると、反感を持つどころか反って憧れる。藤崎も単純に甲斐に憧れた。

 高校を卒業して、甲斐は都会の一流大学に進学した。
 藤崎は親元から近い地方都市の大学に行ったので、それ以来、甲斐には会っていない。

 大学を出て、就職難の折から、その地の企業に何も考えずに就職したのが藤崎の運の尽きだった。毎日毎日ぐちぐちと零され、日に日に死んでいくような毎日である。
 藤崎は首を横に振ってパソコンに向かった。



 藤崎を助けた男は、高校を卒業して以来の同級生甲斐航太朗だった。甲斐はアメリカに視察に行った両親が帰って来ないので、自ら探しに行ったのだ。そして両親の足取りを調べている内に、砂漠で行われているエイリアンたちの恐ろしい計画を知ってしまう。

 行動力のある甲斐はエイリアンに対抗しようとレジスタンスを作って、エイリアンの弱点を探していた。

 甲斐の仲間は、エイリアンの艦隊司令長官シーヴの愛人をやっていた藤崎を信用出来ないと言うが甲斐は信じてくれる。二人の男は厚い友情で結ばれる。
 藤崎はレジスタンスの仲間に加わり、シーヴと付き合っていたことからエイリアンたちの弱点に気付くのだ。
 エイリアンたちの弱点は――。



 そこまで書いて、藤崎は伸びをした。久しぶりにパソコンに向かったので、目がちょっと辛い。

 小さなキッチンでお湯を沸かしてコーヒーを入れる。カップを持って、のんびりテレビのスイッチを入れた。

 ニュースをやっている。金髪碧眼の美女が大きく映し出された。
 非常な美人である。二重の綺麗な瞳。通った鼻筋。赤い唇。長い黄金に輝く髪は綺麗に結い上げられている。

 にっこりと笑って手を振りながら、飛行機のタラップのような所から降りてくる。後ろから同じような美女たちがぞろぞろと付いて来るが、その中でもぴか一だ。

(すごい美人だが、どこの女優だろうか)
 藤崎はのんびり考えながらコーヒーを口にする。

 映し出された美女は、胸元の大きく開いたドレスのようなものを着ていて、深い谷間が見える。吸い寄せられるようにそれを見ていると、テレビが美女から少し遠のいて、辺りの遠景を映し出した。美女がどこから降りて来たのかが映し出される。

「ぐっ……、げほっ、ごほっ……」
 藤崎はその画面を見て、コーヒーに咽た。

 飛行場のような広いところに降り立っているものは、楕円形をしている。殆んど円盤といってもいい。

 赤い絨毯が敷かれた広い場所に、美女の一団が到着する。そこには笑顔で出迎えた各国首脳が居て――。

『ご覧下さい!! 世紀の一瞬です!!』
 テレビのアナウンサーが興奮した口調で喋っている。

(まさか、本当に来たのかーー!?)
 藤崎は自分の目を信じたくなかった。



 藤崎はテレビの画面を食い入るように見詰める。

 テレビには、白く輝く大型の楕円形の物体が映し出されている。
『これが彼らが乗ってきた宇宙船です』
 アナウンサーの説明が入る。藤崎はコーヒーカップを手に持ったまま、広くもない部屋の真ん中に突っ立って考える。
 信じられないことが起こっている。これは本当なのか。ドラマとか映画をやっているんじゃないのだろうか。

 しかし、テレビはニュース番組の時間枠を延長した特別報道番組をやっていて、解説者が出てきて宇宙人との遭遇についてまことしやかに述べている。
『彼らの惑星は太陽系から45光年離れたおおぐま座47番星系アルセ・マジョリスの第三惑星です』
『45光年ですか』
『はい。このアルセ・マジョリスという恒星は太陽と非常によく似ていると云われ――』

 テレビに先ほどの美女がまたも大写しになった。黄金に輝く金色の髪を綺麗に結い上げ、碧い瞳でにっこり笑っている。非の打ち所のない美女だ。
『こちらが艦長のシーヴさん、いえ、シーヴ閣下』
 アナウンサーが嬉しそうに、さん付けで紹介して慌てて訂正している。名前まで同じで、藤崎は頭を抱える。

(本当に来てしまったのか!? しかも名前はシーヴだと!?)
 夢でも見ているのかと頬を抓ったが痛かった。夢ではないようだ。だが藤崎は信じたくない。
 藤崎が書いた話では、エイリアンはトカゲの進化したもので、人類を家畜化する計画だという。
 小説だから書いたのだ。本当にそんな計画があるなんて考えるだに恐ろしい。だが本当に小説通りになると決まったわけじゃない。

 そうだった。藤崎の考えた話と事実とは、いつも若干異なるのだ。
 きっと、もっと何倍も奥が深くて面白い事実があるに違いない。藤崎は無理矢理そう考えて自分を納得させる。
 小心で喧嘩や揉め事等したくても出来ない藤崎は、心の中で大丈夫だと根拠のない念仏を唱えながら、それ以上の事実を知りたくなくてテレビを切ってしまった。


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