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20 殿下との親睦のお茶会です
しおりを挟む王子様との親睦のお茶会なんかが設定されて、恐る恐る王宮に参上すれば、ジリジリジリ……と警報が鳴る。サロンに案内されてしばらくすると、アンドレアス殿下が護衛を引き連れて入って来た。すぐお茶が出される。
目の前のお茶とお菓子を『鑑定』した。
(お茶(王室御用達高級茶、下剤入り) お菓子(バヴァロワ))
(ふーん、下剤か)
唇の端が少し持ち上がるのをアルカイック・スマイルで隠すアンドレアス殿下に、苦情の申し立てなぞできないから、飲むふりをして【アイテムボックス】のカップに収納する。
隣のバヴァロワってババロアなのかな。白いババロアにカスタードソースとクリームが乗っかっている。美味しそうだし、こちらは大丈夫だから頂いちゃおう。
柔らかいけれどプルプルして生クリームが濃厚で美味しい。美味しそうにババロアを食べる私を見て殿下と侍女が顔を見合わせている。
「ええと、エマ嬢」
コホンと殿下が仕切り直した。
「はい、何でございましょう、アンドレアス殿下」
身体を真っ直ぐにして畏まり少し小首を傾げ傾聴する態度を取る。殿下は首を少し引き目をパチパチとした。それからパッと立ち上がり、取ってつけたように「エマ嬢に、庭を案内しよう」と手を差し出した。
「はい」
何だかフォークダンスみたい、と不敬な事を思いながらエスコートされて庭園に行く。警報が鳴らないから大丈夫だろうか。護衛が後ろからついて来る。
広い庭園の植木は綺麗に刈り込まれ季節の花々が咲いている。真ん中には噴水があってその向こうに縦長の高いガラス窓の並ぶ建物が見える。
「あれは?」
「オランジェリーだ」
「オランジェリーですか?」
「そうだ。南の国々から持ち帰った植物を植えて、枯れないよう温度を保ち研究する温室と研究室だ」
「そうなんですか、すごいですね」
その言葉に気を良くしたのか「特別に案内してやろう」という。
オランジェリーの中は広くて真ん中にテーブルがある。少人数のパーティならできそうだ。季節は秋で温室の窓は開け放たれていて、小さなグリーンの実を付けた木が植わっている。
「これがオレンジでしょうか」
「そうだ。向こうにあるのはレモンの木だ」
「レモンもあるのですね」
「花もあるぞ。あれは蘭だ。冬になれば綺麗な花が咲く」
「まあ、ステキですね」
ヤシのような木が植わっていて、そこから鉢がぶら下がり葉っぱが生えている。天井がガラスじゃないのは何でだろう。そんな事を考えながら見ていると「どうした」とアンドレアス殿下が聞く。
「あ、天井はガラスではないのですね」
「ああ、ガラスは高価だし貴重だ。他国では建てていると聞く。この国も──」
そこに殿下の近侍が呼びに来た。
「アンドレアス殿下、お時間でございます」
「そうか」
彼は紳士的にサロンまで送ってくれたので礼を言って別れた。下剤の効き目はどれくらいなのか、悪戯をしないで突っ張らなければいい子そうだけど。
◇◇
翌日学校に行ってみれば、苛めはさらにエスカレートしていた。
本が破かれ、ノートが捨てられ、制服が汚される。これは器物損壊罪だろうに、どうしたもんか、もう黙っていられないし、どこまで報告するべきか。誰に──?
そう思っていたら、警報がジリジリジリ……と鳴るのだ。上の階から私めがけてバケツの水をバシャッと浴びせかけられた。思わず口を突いて出る言葉は、
「何すんねん!」
零した女生徒がびくっと震えた。
もう何でこんな目に遇わなきゃいけないの。もうやだって思ったら、決め台詞スキルを覚えた。
(エマはスキル『決め台詞』「無礼者! 名を名乗れ」を覚えました)
よっしゃ。
「無礼者! 名を名乗れ」
「わ、いや、ザルム伯爵が娘カロリーネですぅ」
令嬢は名乗ってから、きゃあと泣きながら逃げて行った。
なるほど、この前の王宮舞踏会でフェルデンツ公爵令嬢ゾフィーアの取り巻きにいたザルム伯爵家の令嬢か。使いっぱかしら、この前もワインをかけた令嬢だ。
それにしても、このびちょびちょの制服どうしてくれよう。秋風が身にしむ今日この頃、これでは風邪をひいてしまう。
すると、いきなり耳元で鐘の音がカランカランと鳴ったのだ。
(エマのスキル『決め台詞』が進化しました。
スキル『決め台詞』は『決め台詞二』に移行します。
これ以降スキル『決め台詞二』が発動します。
スキル『決め台詞二』には『専守防衛』が付属します。
これ以降、常時『専守防衛』が自動的に発動します)
「はあ?」
専守防衛って何だったっけ、攻撃されたら穏便な方法でやり返すみたいな、あんまり役に立たないんじゃ。取り敢えずびしょ濡れでは授業に行けない。生活魔法で『清浄』を唱えたが生乾きっぽい。
何だか疲れたし、迎えの馬車が来るまで自分のスキルでも見ながら保健室で休もう。そうしよう。
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