最弱の魔王を拾いました。婚約破棄される予定の悪役令嬢ですがわたくしが育ててもよろしいの?

拓海のり

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27 初夜

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 広いベッドにその身を横たえて、耳に首筋に胸にと唇を這わせる。

 手と手を重ねて、唇と唇を重ねて、互いの髪にふれて、
『シアの髪はしなやかでやわらかい』
「ビャサの髪は艶やかで弾力があるわ」
 髪にキスして、額にキスして、耳にキスして、
「ふふっ……、くすぐったいわ」
『ふふふ……、愛してる、愛してる……』
 ああ、縋り付く胸がある。
 抱きしめる腕がある。

 ベッドに花びらが降ってくる。
 甘くて華やかなダマスクの薔薇の花、ココルナック草の麝香の香りの花、白いイリスの清廉で優雅な香りの花が舞う。
 音もなく降りしきる花びらの中で愛し合う。

 ビャサはしばらくレティシアの胸の谷間にくっついて、嬉しそうに片手で片方の胸を揉みながら片側の淡い色の乳首を啄ばむ。
「今日は触手を出さないの?」
『出さない。シアは全部僕のものだ。触手なんかに渡せるものか』
「あん」

 長い指が割れ目をなぞり、敏感な突起を弄る。足を押し広げて、舌で突起を転がしつつ、指が花びらの奥にと侵入する。くちゅり、ぐちゅりと濡れた音がする。
『ぐちょぐちょに濡れている』
「いやああん……ビャサ……」
『欲しい?』
 ビャサはトゲトゲのある一物をレティシアの入り口に宛がい焦らす。
「欲しい……」
『僕の奥さまの求めに応じて』
 ビャサの怒張したモノがレティシアの身体をこじ開けて、内部に入ってくる。
「ああ……ん」
『うっく、キュウキュウと締め付けて来る』
「あ……ふっ、やん」
『動くよ』
「うん」
 ビャサはグイグイと腰を突き上げる。目一杯に押し広げ、こじ開けて侵入してくるその重量感が堪らない。棘がいい所を刺激する。レティシアが声を上げる。

「ああん、ビャサぁ……、凄い、死ぬ、死んじゃう」
『内部がうねって締め付けて来る、うっく』
 一度目は早く終わった。内部で待つうちにすぐ回復して二戦目に突入。インターバルを開けて三戦目。体位を変えて何度もビャサはレティシアを貪った。


 レティシアはベッドの上で微睡んでいた。
『魔核が育った。シア、どんな気分だ』
 側に寝ている男が問う。
『どんな気分だと言われましても……』

 イッて、イッて、イキまくった後で言われても、もう昇天した気分だし、ベッドの上はぐちゃぐちゃだし身体もぐちゃぐちゃだけれど、もう指一本も動かせない。
 ──と思いながらも、指一本動かせば、あっという間にベッドは綺麗になって、ふたりの身体も綺麗になって、寝心地の良い腕に抱かれてべったりとくっ付いて眠るのだった。

  ◇◇

 目が覚めたのは昼過ぎだった。隣にビャサはいない。ちゃんと夜着を着ていてシーツも綺麗だ。昨夜のことは何もかも夢だったのだろうか。レティシアは不安になった。

 ドアをノックしてメリナが入ってくる。
「奥様おはようございます」
『奥様……』
 メリナはにっこり笑って、洗面ボールと水差しの乗ったワゴンを置き、いつものように窓のカーテンを開けに行く。

「旦那様は家老コルネイユと宰相トレートルと側近ミシェルとルードと会議をしておいでです。お食事をこちらでなさるそうですので、綺麗にいたしましょう」
『そう』

「奥様もとうとう魔族におなりで」
『あら、そうなの? どこか変わったかしら』
「どこも変わっては見えませんけれど、お声が少し変わりました」
 レティシアは普通に話しているつもりだが、声が揺れているように感じる。
「私も旦那のルードと一緒に、魔族になろうかと思いますが」
『まあそうなのね、嬉しいわ』
「そう言っていただけて良かったです。これからも誠心誠意お仕えいたします」
『よろしくお願いしますね』

 お風呂で綺麗に磨かれ髪を結い上げられ綺麗に支度ができると、待ちかねたようにビャサが部屋に入ってくる。
『シア。僕の奥さん、おはよう。朝、僕がいなくて寂しくなかった?』
『おはようビャサ、少し不安になったわ』
『ごめんね』
『何かあったの?』
『隣国の密偵がいたらしい』
『まあ』
『大丈夫だ。何も仕掛けて来ない。隣国の国王は病で動けない』
 それは初耳だった。隣国カストリアの王は五十年配だが跡継ぎがまだ若いと聞く。

  ◇◇

 鉱山の町ラルンスは始めこそ人と魔族の住まう町であったが、次第に魔族が増えて行った。隣国カストリアは鉱山に戻った原住民の様子を探りに来て、つぶさに調べて報告した。

「何でもラルンスにはダンジョンができて、魔王が顕現して、聖女が魔王と婚姻して、魔族が一杯で──」

 とんでもない報告であった。カストリア王国は跡継ぎが皆死んで末子しか残っていない。ブルター公爵が血縁を理由に後見人に名乗り出たりして揉めていた。
 魔王と聖女とはどういう取り合わせか。国王はガロンヌ辺境伯に正式な使者を出すとともに、もう一度ラルンスに王家の影と呼べる者を派遣した。


 辺境伯に呼ばれてカストリアの使者と対面したビャサとレティシアは、美しい一対の男女であったが、特に変わった点は見られない。普通の人間に見えた。
『カストリア国王の懸念は尤もである。懸念を払拭されるには国王自身の病を癒すことが肝要と存ずる』

 魔王がとんでもない事を言う。国王の病まで知られていようとは。
「一度帰りまして国王陛下にご報告を──」
『病は早く直した方が良い。すぐにお邪魔しよう』
 魔王は使者の言葉を一蹴して、レティシアと一緒に使者を連れ隣国の王都に飛んだ。そして国王の病をあっさり完治したのだ。

「何と、信じられぬ」
『あなたにも眷属になって貰う』
 ビャサは有無を言わせず国王を眷属にした。鉱山のことで辺境伯と隣国が争うことが無くなり、隣国から攻めかけられることもなくなった。カストリア王国と辺境伯に睨まれブルター公爵も大人しくなった。
 カストリア国王は先々の為に、自分の庶子で出来の良い子息を辺境伯に預け鍛えて貰う事にした。

  ◇◇

 鉱山の周りの山々には魔素を吐き出す樹木が植えられ、ラルンスの山間部を囲むように結界が張られ、ダンジョンから吐き出される魔素は辺りを覆っている。
 ビャサは魔族たちの身体を、魔素が濃くなくても生きていける身体に造り変えて行った。これで町から何処へでも出て行けるだろう。

『まあ、東側の魔族よりは寿命は短くなるだろうが』
『まあ、どれぐらい?』
『普通の魔族は寿命が五百年と云われている。それが百年近く短くなる』
『そんなに長いのね……、何をして過ごしましょう』
『我らはもっと長いが……』
『え……』


 その頃王都では、辺境伯の花嫁は噂とは違い非常に美しいという噂が飛び交っていた。
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