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第1章
目指す先は。
しおりを挟む「アイヴィ。君はもう私達の家族なんだ。そんなことを考える必要はないんだよ。」
「でも…。」
「子供は宝であって、道具じゃないんだ。この家を継ぐのは恐らくヒューゴだけれど、ヒューゴが家の為だけに結婚をしたくないと言うのであれば、私はその意志を尊重するつもりだよ。」
公爵様の考え方が異端なのは、10歳の私でも分かった。
貴族というものに攻略結婚は付き物だ。それに、公爵様は子供は道具ではないと言うけれど、自分達の私欲の為に子供を売る親が居ることは、売られた経験のある私自身がよく知っていた。
「とにかく、ウィンストン家の役に立とうだなんて考える必要はないから。どうしても、ウィンストン家の役に立ちたいというのであれば、誰にも文句を言わせない程の美しい公爵令嬢になってくれ。そうだな…。目指すは、フレデリカだ。」
高名な公爵様に、突然娘が出来た。しかも娘の生まれは男爵家の上に、義父は犯罪者だった…となれば、私を非難したくなるような輩はわんさかと出てくるだろう。
経歴だけで言えば、とんだジャンク品だ。皆が私を受け入れてくれるとは、はなから思っていない。きっとこの家の使用人だって、態度には出していないだけで、未だに私という存在を受け入れてない者だって居る筈だ。
だから公爵様は、私に『誰にも文句を言わせない程の美しい公爵令嬢になってくれ』と言ったんだ。あくまで、ウィンストン公爵家の為ではなく、自分自身を守る為として。
目指すは才媛のつもりが、目指すは奥様になってしまった。
流石に奥様を目指すのは厳しいのでは…と思うも、あれ程までのレベルになれば、誰も文句は言ってこない筈だ。正直、他人からの評価にそこまでの頓着はないけれど、“ウィンストン”というブランド外してみても価値のある女だと思われたいのであれば、奥様を目指すのが一番かもしれない。
こうして、この日、私の目指す先が決まった。
私がこの8年間で目指すは、ウィンストン公爵家夫人、フレデリカ・ウィンストンだ。
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