推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん

文字の大きさ
146 / 232
12歳《中等部》

43

しおりを挟む

いつも通りの朝。
アルがいつも通り紅茶を入れてくれるのをベットの上で眺めてる。いい香り。

「アル、朝一に父様と話するから執務室に父様好みのものを準備して。それとちょっとストレス発散がてら魔獣狩りに行く。」

「かしこまりました。仕事はディータ様にお渡し致します。」

「僕の確認だけのやつ多いからそのままでいいよ。帰ってきてからやる。」

「承知致しました。」

サッと渡されたちょうどいい温度の紅茶。匂いもいい。さすがアルフレート。
起きるかなぁ。あんまり眠れてないしパーティの疲れが取れてないけど情けないところテオ様に見られたくないし。

「こういう大規模パーティの次の日は休みになるのが貴族が多い学校のいい所だね。」

「そうですね。」

「まぁ祝日だと思えばこんなものか。ゆっくりしたいなぁ。」

「テオ様は剣術の素振りが終わりお風呂に行かれましたよ。」

「じゃあ次はご飯かぁ。一緒に食べたいから起きようかな。」

「その方がよろしいかと。」

テキパキと僕に暖かい顔を拭く用の布を渡したり、服を準備したり。朝から忙しそう。

「ネヴィルは?」

「獣人が部屋に向かっているのを見かけましたので朝食は一緒になるかと。」

「そう。あの子細いよね。食べさせないといけないね。」

前世の僕に似てるよ。
まぁあそこまで元気なかったけど。

「徐々にですね。食べすぎてしまうと戻してしまいますから。」

たしかに。経験あるけどあれは胃が小さかったからなんだ。体が弱いからだと思ってた。

「難儀だね。」

シャツに手を通してボタンを止める。昔はアルが手伝ってくれてたけどさすがにボタン求められないような大人になりたくない。だから数年前に止めさせた。
ほかの貴族はどうなんだろ。やらせてんのかな。

「どう?」

「最高の着こなしかと。」

よし。じゃあ行こうか。僕のストレス源が集まる昼食の場に。
ストレス源と一緒に唯一の癒しであるテオ様がいるから行けるんだよ。





朝食の場には義母様はおらず他の男勢が勢揃い。みんな顔はいいからむさくるしくはないけど、雰囲気最悪。義母様が部屋で食べる理由も分かるくらいには静まり返ってる。

義母様の場合昨日のパーティーで疲れたって言うのもあると思うよ。あんな重いドレスに高いヒール。よくやるよ。

僕が疲労回復の魔法薬渡しても目の前で叩き割られるからなぁ。理由聞いたら『毒でも入れてるんじゃないの?』って言われた。酷いよ。そんなもの家族に渡さないって。
…はぁ。後でテオ様にでも渡すように頼んどこうか。


「ネヴィル、食が欲しい子が食べすぎると体に悪いと聞いたけど大丈夫?残してもいいからね。」

「兄上。甘やかしすぎです。」

「でも食べられないなら仕方ないよ。好き嫌いは良くないけど胃が受け付けないなら仕方ない。」

「それもそうだな。」

僕も辛さは分かる。美味しくてもその後が怖いよね。それに消化って体力使うからさ、しんどいんだよ。

でも残して捨てるのも問題だよね。食べ残しをスラムに配るわけにもいかないし。


「残飯処理用の犬でも飼う?」

豚でもいいけど。豚ならトンカツって名前にしよ。
育ったらトンカツにして食べるんだ。

「ドーベルマンが良いです。俺が躾ていいですか?」

「まぁいいけど…怪我しないようにね。」

犬?犬かぁ。
豚とか牛なら食料だし死んだら食べられるって思えるからそんな気を使わなくてもいいけど。
いぬか。犬は食糧とは思えないな…。僕に愛玩動物を可愛がれるかな。

それに…犬かぁ。あんまり好きじゃない。というか、テオ様の時間を犬に取られると思ったら腹立たしいんだけど。

「テオとの時間が減るのは嫌だな。」

「兄上も一緒に訓練しますか?」

そんな嬉しそうに言われても。
犬の訓練って何?散歩?
まともに動物とか変わったことないからわかんない。魔獣とか変わったことはあるけどあれは実験とか討伐用だしな。言葉も通じないし…ペットって扱い方が分かんないな。

「死んでもいい魔獣とかの扱いは分かるけどペットか…。難しいな。」

「テオやネヴィルに絶しているようにすればいいのではないか?」

「テオとネヴィルは僕の弟ですよ。言葉も通じますし。愛玩動物と同列にするのは…もっと犬猫の方を甘やかせば良いのでしょうか。」

「使い物にならなくなるだろ。」

「生き物とは難しいものですね。」

「魔花を育てていると聞いたがそれは別か?」

「アレらは枯れてもいいものなので。代用品はいくらでもありますから。弟の代用品などありませんし。」

「自分の代わりもいないことを覚えておけ。」

「僕の代わりはテオがいるので問題ありません。実際母様の代わりは僕と義母様がいましたし。どうにかなるものですよ。」

「息子としてだ。」

頭のどこかがプチンと切れた。
即座に光魔法で治してナプキンを手に取る。脳卒中とかで倒れたら笑えないし。

「…理解できませんね。ポンポンとどこかから産まれてくる息子達に思い入れがあったとは。」


口周りをナプキンで拭いて立ち上がる。ここにいたら父様に手を出しかねない。何が息子としてだ。いけしゃあしゃあと。どれだけテオ様が苦労したと思ってるんだ。父様がいないせいでテオ様は愛されてない子って影で言われてたんだからな。ほんと許せない。テオ様と血が繋がってなかったらどこかに殺して捨ててたよ。

それに僕の両親は前世の両親だけ。
こんなのを正直父とも呼びたくない。

「僕はこれで。執務室でお待ちしております。父様。」


はぁ。イライラする。
僕たちが大切なら何もしないで隠居してくれればいいのに。
種無しになる薬さっさと飲ませなきゃ。






しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

メインキャラ達の様子がおかしい件について

白鳩 唯斗
BL
 前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。  サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。  どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。  ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。  世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。  どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!  主人公が老若男女問わず好かれる話です。  登場キャラは全員闇を抱えています。  精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。  BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。  恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...