異世界召喚鍛冶師

蛇神

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第三章 謎の暗殺者

ユキの全力

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 一瞬だった…。一瞬ですべてが終わった。

「…我ながらコレはすごい」

 そう言って、私は白い息を吐きながら寒さと興奮で震える腕をさすった。

 結果を言おう。固有魔法を全力で出してみた。そしたら目の前に物凄く大きい氷の山がでた。多分、出店の人いっぱいいるところまでは行ってないと思うが、ちょっとしたパニックになってそうだ。

 魔獣たちは氷が厚いせいでよく見えないが、ボヤーとたくさんの黒いものが奥に見えるので、多分氷漬けになっていると思う。
 
ふぅ、と私は息を吐きならがら地面に座った。気だるさはあるものの、結構な量の魔力を使ったはずなのに私はピンピンしている。自分の魔力の底無しさに、少しゾッとした。

 私は地面にお尻をつけたままズルズルとヒューさんのところまで向かった。気だるさのせいで立つのがめんどくさい。

「ヒューさん…」

 ヒューさんの怪我は尋常ではないほど酷った。喉を噛み切られたせいか、ビュービューと空気の音が喉から聞こえ、音がする事に血がドロドロ出てくる。。耳は無くなっており、頬を食べられたのか引っ掻かれたのか分からないが、頬の肉が裂けており、口の中が見える状態になっていた。

 私はヒューさんの胸に手を置いた。そして呪文を唱えて、さっきの『肉体再生』を行った。光がヒューさんを包む。

 少年の時はなんともなかったが、魔力を大量に消費したためか、身体が少し重く感じる。

「頑張れヒューさん!大丈夫、私が治すからね!」

 私はヒューさんにそう語りかける。命懸けで守ってくれたたんだ、失敗は許されない。

 少しずつ少しずつ、ヒューさんの体が元に戻っていく。シュルシュルと失ったものも、原理はよくわからないが元に戻っていく。

 ヒューさんの頬に肉が戻り、ちゃんと元の顔でスーと寝息を立てて寝ている姿を見て、私は泣きそうになった。よかった…。ちゃんと生きてる…。

「ケタケタケタケタケタケタケタケタ」

「…え?」

 ザシュッ!!

 気がついたら、肩が痛みで覆われていた。頬っぺた暖かいな…と感じたのは自分の返り血で、私の肩は噛み切られていた。唇をかんで声を抑えた。痛みで頭がガンガンと殴られているような感じになる。思わずヒューさんから手を離しそうになったが、慌てて体制を直した。

 あの笑いからして魔獣だ。私は前を見て睨んだ。魔獣は一匹だけだ、けど、私はここを動くことが出来ない。傷口を空いてる方の手で抑え、止血を試みるも上手くいかない。痛さで力が入らない。

 私が固有魔法を発動する瞬間に逃げたのだろう。魔獣は嬉しそうに口を大きく裂いて笑っている。仲間を殺したコイツをどう痛ぶってやろうか…とでも言うように、沢山の目玉で私を見つめている。

 死ぬ…?ここで…?

 私、死ぬの?

 私は、その負の念を頭から振り払い、空いている方の手を魔獣に向けた。まだ傷の塞がっていないヒューさんの治療を今ここで終わるわけにはいかない。

 魔獣はグッと体に力を入れている。また魔法を発動した瞬間に逃げるつもりなんだろう。

「次はそうはいかない!」

 私は魔獣をじっと見つめ、意識した。そして、固有魔法を発動しようと手に力を込めた。

「うあぁ!!」

 固有魔法は発動しなかった。そのかわりに、全身をビキビキと音立て、激痛が走った。なんとか、ヒューさんの治療を続けられているが、全身が痺れ、魔力を出し続けることが辛い。

「はぁ…はぁ、な…んで…?」

 魔獣は弱った私を見て、チャンスと言わんばかりにダッと走ってきた。この一撃で仕留めるつもりなんだ。

「あぁ…くっそぉ…」

 私は顔を歪め走ってくる魔獣を睨んだ。すべての動きがスローモーションに見える。死の間際の人間って、こんな感じなんだと変に冷静な脳がくだらないことを考える。

 魔獣が口を開け、鋭い歯を見せた。私の身はこれに裂かれるのか…。
 
 魔獣の牙がゆっくりゆっくりと首元に近づいて_____…

『ギシャァァァァァァアアアアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!』

 しかし、その鋭い牙は私を傷つけることはなかった。

 魔獣は…空から聞こえてきた謎の鳴き声とともに消えたのだった。
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