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本編
俺の親友のお話
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「はぁ……」
「何落ち込んでるの、好きな子抱こうとしたら鼻血出しちゃった幸人くん」
「あークソ何でコイツに言ったんだあの日の俺!」
休憩時間に入り、ちょっとため息を吐いたらこれだ。楽しそうに俺をからかって来たのは同期の相川だ。相川は高校の同級生で、大学は違ったが近かったので頻繁に会い、そしてたまたま就職先も一緒だった。俺は相川にストーカーされていると思っているが。
「お前ってほんと、超イケメンなのに昔から残念だな」
「自覚してるがお前に言われると腹立つな」
「奈々美ちゃん、だっけ?」
「名前を呼ぶな汚れる」
立ち上がりいつものようにコンビニに行こうとすると、何故か相川も付いて来た。来るな。奈々美ちゃんが汚れる。
「お前全然女の子に興味ないからさー、そっち系かと思ってたけど違ったんだな」
「違う」
女子社員に愛想を振りまきながら俺の後を付いてくる相川は、俺をからかうネタが出来て楽しそうだ。
「まぁ、お前の恋がようやく成就しそうでよかったよ」
「お前は昔から恋しっ放しだな」
「まぁねぇ」
反撃しようと思ったが全く意味がなかった。相川は何故か誇らしげだ。
相川は、高校の時から俺に近付いてきて玉砕した女の子を言葉巧みに慰めそして自分を好きにさせる。だが相川自身遊びたいだけなのですぐに飽きる。女の子も相川を恨みそうなものだが、何せ口が達者なので諦めさせるのも上手い。俺は相川のことをクズ野郎だと思っている。
「お前はそのうち痛い目に遭え」
「いやあ、好きな女の子の前で鼻血を出すほど辛いことはないよ」
「オイ黙れ」
そんなことを言い合っているうちにコンビニに着いた。奈々美ちゃんは今日も可愛い。
「奈々美ちゃんおはよう」
「あ、おはようございます」
相川は軽く奈々美ちゃんに挨拶をした。汚れるから本当にやめてほしい。でも横にいる俺を見て微笑んでくれた。仕事頑張れる。
「おー、いい感じだねぇ」
「邪魔すんなよ」
「分かってるって。さすがに親友の恋を壊すほどクズ野郎じゃないから」
「どうだかな」
「信用ねぇな」
ケラケラと笑いながら俺のカゴに次々と商品を入れていく奴をどう信用しろと言うのか。今度来た時は相川に奢らせてやろう。いやでも奈々美ちゃんに「友人に奢らせるケチな奴」だと思われたくない。次も奢ってやろう。
「おはよう、奈々美ちゃん」
「あ、田島くん、おはよう。今日はこの時間?珍しいね」
「名取さんに代わってって言われて」
「そうなんだ」
同僚の男と親しげに話す奈々美ちゃんに思わず目が向く。耳は恐ろしくデカくなって。嫉妬深い男は嫌われる。分かっているが。
「奈々美ちゃん、彼と仲よさそうだね」
「そうだな」
「ほんとは気になってるくせにー」
またからかわれた。うひゃひゃと笑いながら、相川は奈々美ちゃんのレジに行く。そして俺に手招きした。
「奈々美ちゃん、幸人をよろしくー」
「えっ」
「相川、やめろ」
奈々美ちゃんは恥ずかしそうに赤面して、でも笑ってくれた。可愛い。勃起しそうだ。抑えろ。
田島くんとやらはそんな奈々美ちゃんと俺を交互に見て驚いたような顔をしている。牽制にはなりそうだ。相川には感謝しよう。最初で最後の感謝を。
「ありがとう。また」
「あ、はい」
お金を払い終えて、俺の言葉に奈々美ちゃんが微笑む。また、がある。それだけでぽわんと幸福に包まれる俺を見て相川はまた笑っていた。
「げっ」
コンビニを出たところで相川が突然そう言ってすごい速さでいなくなった。呆気に取られていると、1人の女の子が俺の前で立ち止まった。
「この前、抱いてくれたのに」
「……え」
「どうして電話出てくれないんですか?!ヤリ捨てですか?!」
「いや、ちょっと待って落ち着いて」
「私だけは特別だと思ってたのに」
クソ、相川、珍しく失敗したな。俺を置いて逃げるな!
「いや、それは……」
「私、諦めませんから!」
そして何故俺に言う。いつも逃げられるから俺から伝わることを期待しているのか。巻き込むな。
部署に戻ると相川がテヘッと言いながら謝ってきた。テヘッで済む問題じゃない。
「何落ち込んでるの、好きな子抱こうとしたら鼻血出しちゃった幸人くん」
「あークソ何でコイツに言ったんだあの日の俺!」
休憩時間に入り、ちょっとため息を吐いたらこれだ。楽しそうに俺をからかって来たのは同期の相川だ。相川は高校の同級生で、大学は違ったが近かったので頻繁に会い、そしてたまたま就職先も一緒だった。俺は相川にストーカーされていると思っているが。
「お前ってほんと、超イケメンなのに昔から残念だな」
「自覚してるがお前に言われると腹立つな」
「奈々美ちゃん、だっけ?」
「名前を呼ぶな汚れる」
立ち上がりいつものようにコンビニに行こうとすると、何故か相川も付いて来た。来るな。奈々美ちゃんが汚れる。
「お前全然女の子に興味ないからさー、そっち系かと思ってたけど違ったんだな」
「違う」
女子社員に愛想を振りまきながら俺の後を付いてくる相川は、俺をからかうネタが出来て楽しそうだ。
「まぁ、お前の恋がようやく成就しそうでよかったよ」
「お前は昔から恋しっ放しだな」
「まぁねぇ」
反撃しようと思ったが全く意味がなかった。相川は何故か誇らしげだ。
相川は、高校の時から俺に近付いてきて玉砕した女の子を言葉巧みに慰めそして自分を好きにさせる。だが相川自身遊びたいだけなのですぐに飽きる。女の子も相川を恨みそうなものだが、何せ口が達者なので諦めさせるのも上手い。俺は相川のことをクズ野郎だと思っている。
「お前はそのうち痛い目に遭え」
「いやあ、好きな女の子の前で鼻血を出すほど辛いことはないよ」
「オイ黙れ」
そんなことを言い合っているうちにコンビニに着いた。奈々美ちゃんは今日も可愛い。
「奈々美ちゃんおはよう」
「あ、おはようございます」
相川は軽く奈々美ちゃんに挨拶をした。汚れるから本当にやめてほしい。でも横にいる俺を見て微笑んでくれた。仕事頑張れる。
「おー、いい感じだねぇ」
「邪魔すんなよ」
「分かってるって。さすがに親友の恋を壊すほどクズ野郎じゃないから」
「どうだかな」
「信用ねぇな」
ケラケラと笑いながら俺のカゴに次々と商品を入れていく奴をどう信用しろと言うのか。今度来た時は相川に奢らせてやろう。いやでも奈々美ちゃんに「友人に奢らせるケチな奴」だと思われたくない。次も奢ってやろう。
「おはよう、奈々美ちゃん」
「あ、田島くん、おはよう。今日はこの時間?珍しいね」
「名取さんに代わってって言われて」
「そうなんだ」
同僚の男と親しげに話す奈々美ちゃんに思わず目が向く。耳は恐ろしくデカくなって。嫉妬深い男は嫌われる。分かっているが。
「奈々美ちゃん、彼と仲よさそうだね」
「そうだな」
「ほんとは気になってるくせにー」
またからかわれた。うひゃひゃと笑いながら、相川は奈々美ちゃんのレジに行く。そして俺に手招きした。
「奈々美ちゃん、幸人をよろしくー」
「えっ」
「相川、やめろ」
奈々美ちゃんは恥ずかしそうに赤面して、でも笑ってくれた。可愛い。勃起しそうだ。抑えろ。
田島くんとやらはそんな奈々美ちゃんと俺を交互に見て驚いたような顔をしている。牽制にはなりそうだ。相川には感謝しよう。最初で最後の感謝を。
「ありがとう。また」
「あ、はい」
お金を払い終えて、俺の言葉に奈々美ちゃんが微笑む。また、がある。それだけでぽわんと幸福に包まれる俺を見て相川はまた笑っていた。
「げっ」
コンビニを出たところで相川が突然そう言ってすごい速さでいなくなった。呆気に取られていると、1人の女の子が俺の前で立ち止まった。
「この前、抱いてくれたのに」
「……え」
「どうして電話出てくれないんですか?!ヤリ捨てですか?!」
「いや、ちょっと待って落ち着いて」
「私だけは特別だと思ってたのに」
クソ、相川、珍しく失敗したな。俺を置いて逃げるな!
「いや、それは……」
「私、諦めませんから!」
そして何故俺に言う。いつも逃げられるから俺から伝わることを期待しているのか。巻き込むな。
部署に戻ると相川がテヘッと言いながら謝ってきた。テヘッで済む問題じゃない。
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