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2 伝達事項は早めに
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「ほら、これ社員証」
「…まじだ」
最初はバイトか何かかな?と思ってたがどうもそうじゃないみたいで“課長だ”とまで言いだすから、証拠を見せろと言った。そしたら、
『いいですよ。じゃあ、まずこれが配属書。次にこれが名刺でしょ…あ、あとこっちに過去5年分の業務記録があってー…』
こんな感じで次々に証拠を出して来て、一ノ瀬はビックリしてしまった。そして最後に社員証を出して来たのでこの子が本当に『伝言課』の『課長』であることが証明されたのである。
「え、じゃあ俺は…あんたの部下なの…」
「ちょっと、上司にあんたはないでしょ」
「あ、す、すみません!…課長?」
「うん、それでいいよ。じゃあ、まずは…」
そんなこんなで会って30分足らずで一ノ瀬は自分より年下の上司を持ってしまった。
それからさらに30分。
一ノ瀬は今、地下の資料保管庫にいた。
「なんで初仕事が資料探しなんだ」
まずは業務内容の説明を…と思いきや、『はいこれ』と数枚のメモと鍵を渡され資料の整理作業を言い渡されたのだ。
(てか、なんなのこの膨大な資料は。『伝言課』専用ってなんなんだよ)
渡された鍵には“資料室”としか書いていなくて、普通に資料室にいったら鍵が開かなかった。なのでパッと辺りを見回すと廊下の突き当りの部屋に“伝言課資料室”と書いてあり、どうやらそっちが正解のようであった。
入って、正直に驚いた。一つの課専用の資料室というから小部屋みたいなのがあるのかと思っていたが、部屋の広さは上のフロアの4分の1はあるくらいに広い。例えるなら学校の教室2つ分くらいだろうか。そんな広さのスペースに天井まであるラックが所狭しと並んでおり、その中にファイリングされた資料が並べてある。
「この中から探すの、無理あるよな…」
大体こんな事を自分にさせるのは間違っている、と一ノ瀬は思う。資料の管理などは基本事務課の管轄なので、事務の人に頼んだ方が確実に速く資料が届くだろうに。
「俺……舐められてる?いや、さすがにないよ…な…?」
なかなか見つからない資料のリストを握りしめたまま、端から順に調べていく。普通、五十音順や年代順であったりするのだが、どうやら違うらしい。独自の並べかたなのか全く統一性を感じない。
(まあ、資料や紙を床にぶちまけるような人だからこんな感じなのかな)
はあ、と一ノ瀬がため息をつきまた捜索を開始しようとする。その瞬間、
バンッ
「えっ!?」
「こら!一ノ瀬!資料探しに一体何十分掛けてんの!」
「すみません!しかし、こんなバラバラに配架されている資料から探すのは、流石に時間かかりますって…」
「はあ?順番ならちゃんとあるじゃない」
ほら、と指をさされた先を見れば棚の柱に書かれた数字とアルファベット。
「“104-a”…?何か配置に関係が?」
「大あり…いい?これは郵便番号の下3桁と苗字の頭文字。例えばこれならさかえ市中野の秋月さんだから“060-a”なの」
「へぇ…え、じゃあ、課長は郵便番号全部覚えてらっしゃるんですか!」
「ええ、だって市役所職員だもの。まさか、8年も勤務していて知らない訳ないわよね?」
(いや、知らなくて普通ですってば!)
一ノ瀬はすみません、と言ったものの正直心のなかではそう思っていた。この上司、かなりの変わり者であるらしい。
「まあ、この配置はこれからも私が資料取って来て貰う時使うだろうから、そのうち覚えて。じゃあ、その資料探し終わったら今日のところは帰っていいから。じゃあ、おつかれー」
「あ、はい。お疲れ様でしたー……はぁ、これ探さないと帰れないのか」
全く、今日一日でとんでもない事になってしまった。しかも移動初日で残業。公務員は定時上がりじゃなかったのか。
「…いや、これやらなくて帰ったら多分明日が怖い。やるしかないのか…」
はあ、と広い地下で一人ため息を吐き、黙々と作業を続ける一ノ瀬であった。
「…まじだ」
最初はバイトか何かかな?と思ってたがどうもそうじゃないみたいで“課長だ”とまで言いだすから、証拠を見せろと言った。そしたら、
『いいですよ。じゃあ、まずこれが配属書。次にこれが名刺でしょ…あ、あとこっちに過去5年分の業務記録があってー…』
こんな感じで次々に証拠を出して来て、一ノ瀬はビックリしてしまった。そして最後に社員証を出して来たのでこの子が本当に『伝言課』の『課長』であることが証明されたのである。
「え、じゃあ俺は…あんたの部下なの…」
「ちょっと、上司にあんたはないでしょ」
「あ、す、すみません!…課長?」
「うん、それでいいよ。じゃあ、まずは…」
そんなこんなで会って30分足らずで一ノ瀬は自分より年下の上司を持ってしまった。
それからさらに30分。
一ノ瀬は今、地下の資料保管庫にいた。
「なんで初仕事が資料探しなんだ」
まずは業務内容の説明を…と思いきや、『はいこれ』と数枚のメモと鍵を渡され資料の整理作業を言い渡されたのだ。
(てか、なんなのこの膨大な資料は。『伝言課』専用ってなんなんだよ)
渡された鍵には“資料室”としか書いていなくて、普通に資料室にいったら鍵が開かなかった。なのでパッと辺りを見回すと廊下の突き当りの部屋に“伝言課資料室”と書いてあり、どうやらそっちが正解のようであった。
入って、正直に驚いた。一つの課専用の資料室というから小部屋みたいなのがあるのかと思っていたが、部屋の広さは上のフロアの4分の1はあるくらいに広い。例えるなら学校の教室2つ分くらいだろうか。そんな広さのスペースに天井まであるラックが所狭しと並んでおり、その中にファイリングされた資料が並べてある。
「この中から探すの、無理あるよな…」
大体こんな事を自分にさせるのは間違っている、と一ノ瀬は思う。資料の管理などは基本事務課の管轄なので、事務の人に頼んだ方が確実に速く資料が届くだろうに。
「俺……舐められてる?いや、さすがにないよ…な…?」
なかなか見つからない資料のリストを握りしめたまま、端から順に調べていく。普通、五十音順や年代順であったりするのだが、どうやら違うらしい。独自の並べかたなのか全く統一性を感じない。
(まあ、資料や紙を床にぶちまけるような人だからこんな感じなのかな)
はあ、と一ノ瀬がため息をつきまた捜索を開始しようとする。その瞬間、
バンッ
「えっ!?」
「こら!一ノ瀬!資料探しに一体何十分掛けてんの!」
「すみません!しかし、こんなバラバラに配架されている資料から探すのは、流石に時間かかりますって…」
「はあ?順番ならちゃんとあるじゃない」
ほら、と指をさされた先を見れば棚の柱に書かれた数字とアルファベット。
「“104-a”…?何か配置に関係が?」
「大あり…いい?これは郵便番号の下3桁と苗字の頭文字。例えばこれならさかえ市中野の秋月さんだから“060-a”なの」
「へぇ…え、じゃあ、課長は郵便番号全部覚えてらっしゃるんですか!」
「ええ、だって市役所職員だもの。まさか、8年も勤務していて知らない訳ないわよね?」
(いや、知らなくて普通ですってば!)
一ノ瀬はすみません、と言ったものの正直心のなかではそう思っていた。この上司、かなりの変わり者であるらしい。
「まあ、この配置はこれからも私が資料取って来て貰う時使うだろうから、そのうち覚えて。じゃあ、その資料探し終わったら今日のところは帰っていいから。じゃあ、おつかれー」
「あ、はい。お疲れ様でしたー……はぁ、これ探さないと帰れないのか」
全く、今日一日でとんでもない事になってしまった。しかも移動初日で残業。公務員は定時上がりじゃなかったのか。
「…いや、これやらなくて帰ったら多分明日が怖い。やるしかないのか…」
はあ、と広い地下で一人ため息を吐き、黙々と作業を続ける一ノ瀬であった。
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