4 / 13
3 改善すべきは環境よりも
しおりを挟む
翌日…
「おはようございます…」
「おはよう、早いね」
「ええ、始業の前に昨日の復習をとおもいまして」
「あら、関心関心」
「まあ、仕事覚えるのは早い方ですし。努力は怠りません」
昨日、あれから2時間程掛けて資料を探し出すのと配架の順番のメモをして、家に帰ってからもメモを元に復習をしていた。なので、また確認のために朝早めに来て再確認をしようと思っていたのだ。
というか1時間程早く来たはずなのだが、既にオフィスに課長がいて驚いた。結構朝型なのだろうか。
「課長、出社早いんですね」
「いや、今日はたまたま。いつもは昼近くにしか来ないよ」
「は?それって遅刻なんじゃ…」
「私夜型だから、早起きとか出来ないんだよねー。まあ今まではこの課、私しか居なかったから。大丈夫だったし」
「…課長、今度からは俺がいる事忘れないでくださいね」
「えー…まあ、一ノ瀬が目覚まし役してくれるんなら…」
(いや、無理だろ!大体、部下に起こされる上司って聞いたことないぞ!)
まったく、とんでもない人だなあと思ったがコレがジョークであるというくらいは分かる。そこは受け流す一ノ瀬であった。
そしてふと、思い出す。
「そういえば課長、昨日は資料についてしか聞かなかったんですけど、他に業務をするにあたって覚えておく事ってあります?」
昨日は資料についての事だけで手一杯で他のことに気が回らなかったが、これだけが業務であるというわけではないだろう。そう思い、一ノ瀬は聞いてみたのだが…
「うーん、あるにはあるけど…一つひとつ挙げるの面倒くさいから追々でいいんじゃない?」
「え、いや、準備とか覚える期間とかが…」
「さっき仕事覚えるの早いって言ってたじゃん。まあ、心配しなくても大丈夫でしょ」
……はぁ!?
(この上司、大変変わり者だと思っていたが、“面倒くさがり屋”の間違いだったのか!)
確かにそれならば今まで見てきた部屋の汚さに納得がいくし、早起きが出来ない(しない)理由もきっとこれだろう。
(てか、さっきのジョークじゃなかったのか…。なんか、俺が来るまでの数年間、この人はこんな状況で仕事していたのかと思うと…)
はあ、とため息を吐く。いくら見た目が若いからと言っても彼女はれっきとした社会人でしかも課長である(しかし部下は最近出来た)。それなのにこの体たらくではきっと昨日のように一ノ瀬に雑用を言い付け続けるのだろう。
取り敢えず最初の目的を果たすため、地下資料室の鍵をとり、一ノ瀬は資料室へと向かった。
「あ、下行くんならコレ戻してきて」
「え゛…」
どうやら嫌な予感は的中していたようだ。
「よし、こんなもんかな」
昨日メモを取って帰って正解だったようだ。ものの30分で復習が終わり、頭に殆ど順番が入っているからか課長から頼まれていた資料を戻す作業も終わった。
きっとさっきの感じではミーティングなどしないだろうけど一応、と思い始業10分前には資料室を出て課のオフィスに戻った。
の、だが……
「なんで居ないんだよ…!」
あれから始業時間はとうに過ぎ、それから更に20分は経っているのだが一向に課長が姿を見せない。せめて置き手紙か声を掛けるくらいはしてくれよ!と思ったが、その考えは早々に諦めた。一ノ瀬は学んだのだ。すべては、
『課長だから仕方がない』
の言葉で済むことを。
「でも帰ってくる時間が分からないのは困る…帰ってきたら伝えてもらえるよう言っておこう。でも今から何しようか…」
仕事はサボらない。一生懸命するものである。そう思った一ノ瀬は今の職場環境を見て、初めからやろうとしていたことを今からすべきだとおもった。
「よし、掃除するか」
それは『掃除』という名の職場環境改善作業であった。
「おはようございます…」
「おはよう、早いね」
「ええ、始業の前に昨日の復習をとおもいまして」
「あら、関心関心」
「まあ、仕事覚えるのは早い方ですし。努力は怠りません」
昨日、あれから2時間程掛けて資料を探し出すのと配架の順番のメモをして、家に帰ってからもメモを元に復習をしていた。なので、また確認のために朝早めに来て再確認をしようと思っていたのだ。
というか1時間程早く来たはずなのだが、既にオフィスに課長がいて驚いた。結構朝型なのだろうか。
「課長、出社早いんですね」
「いや、今日はたまたま。いつもは昼近くにしか来ないよ」
「は?それって遅刻なんじゃ…」
「私夜型だから、早起きとか出来ないんだよねー。まあ今まではこの課、私しか居なかったから。大丈夫だったし」
「…課長、今度からは俺がいる事忘れないでくださいね」
「えー…まあ、一ノ瀬が目覚まし役してくれるんなら…」
(いや、無理だろ!大体、部下に起こされる上司って聞いたことないぞ!)
まったく、とんでもない人だなあと思ったがコレがジョークであるというくらいは分かる。そこは受け流す一ノ瀬であった。
そしてふと、思い出す。
「そういえば課長、昨日は資料についてしか聞かなかったんですけど、他に業務をするにあたって覚えておく事ってあります?」
昨日は資料についての事だけで手一杯で他のことに気が回らなかったが、これだけが業務であるというわけではないだろう。そう思い、一ノ瀬は聞いてみたのだが…
「うーん、あるにはあるけど…一つひとつ挙げるの面倒くさいから追々でいいんじゃない?」
「え、いや、準備とか覚える期間とかが…」
「さっき仕事覚えるの早いって言ってたじゃん。まあ、心配しなくても大丈夫でしょ」
……はぁ!?
(この上司、大変変わり者だと思っていたが、“面倒くさがり屋”の間違いだったのか!)
確かにそれならば今まで見てきた部屋の汚さに納得がいくし、早起きが出来ない(しない)理由もきっとこれだろう。
(てか、さっきのジョークじゃなかったのか…。なんか、俺が来るまでの数年間、この人はこんな状況で仕事していたのかと思うと…)
はあ、とため息を吐く。いくら見た目が若いからと言っても彼女はれっきとした社会人でしかも課長である(しかし部下は最近出来た)。それなのにこの体たらくではきっと昨日のように一ノ瀬に雑用を言い付け続けるのだろう。
取り敢えず最初の目的を果たすため、地下資料室の鍵をとり、一ノ瀬は資料室へと向かった。
「あ、下行くんならコレ戻してきて」
「え゛…」
どうやら嫌な予感は的中していたようだ。
「よし、こんなもんかな」
昨日メモを取って帰って正解だったようだ。ものの30分で復習が終わり、頭に殆ど順番が入っているからか課長から頼まれていた資料を戻す作業も終わった。
きっとさっきの感じではミーティングなどしないだろうけど一応、と思い始業10分前には資料室を出て課のオフィスに戻った。
の、だが……
「なんで居ないんだよ…!」
あれから始業時間はとうに過ぎ、それから更に20分は経っているのだが一向に課長が姿を見せない。せめて置き手紙か声を掛けるくらいはしてくれよ!と思ったが、その考えは早々に諦めた。一ノ瀬は学んだのだ。すべては、
『課長だから仕方がない』
の言葉で済むことを。
「でも帰ってくる時間が分からないのは困る…帰ってきたら伝えてもらえるよう言っておこう。でも今から何しようか…」
仕事はサボらない。一生懸命するものである。そう思った一ノ瀬は今の職場環境を見て、初めからやろうとしていたことを今からすべきだとおもった。
「よし、掃除するか」
それは『掃除』という名の職場環境改善作業であった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる