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1 挨拶はしっかりと
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「失礼しまーす…うわっ」
扉を開けてまずはじめに目に入ったものは、大量の本と紙が積み重なっている光景だった。床には足の踏み場がないくらい開きっぱなしの資料のようなものであったり、走り書きだろうか落書きのような字でびっしりと埋め尽くされた紙などが散乱していた。また、換気もしていないのだろう。部屋には古いインクのような匂いと埃っぽさが充満している。
(え、待って。俺今日からこんな劣悪な環境で働かなきゃいけないのかよ)
既に一ノ瀬は心が折れそうであったが、ここまで来て引き返してもしょうがないのでどうにか足場を見つけ奥へと進んでいく。
「あのー。今日からお世話になります一ノ瀬ですけどー。どなたかいらっしゃいませんかー!」
少しずつ進みながら声を掛けているのだが返事はおろか、人のいる気配すら感じないしんとした雰囲気である。
(移動してくるってわかってるんだから、せめて置き手紙くらいあってもよくないか?)
課の人はみんな外回りなのだろうか? でもそもそも伝言課の業務内容を知らないから、この先人が帰ってくるのかすらわからない。困った。このままではなにもすることができない。
ふと進めていた足を止めて床に落ちている紙を拾い上げる。そこには『1982年5月13日 多田 明子様』と書いてあり、その下には3行くらい細く小さな文字が書かれてあった。
「1982年って、だいぶ前だな。なんでこんな前の資料が床に落ちてるんだ?」
よく見てみればその他の紙も同じ様な書式で、年代が様々な資料が散らばっていた。
(本当に“伝言課”ってどんな業務をしてるんだ…さっぱりわからん)
一ノ瀬が首を傾げながらうんうん言っていると、入って来た扉の右側にある部屋からドサッと音がすると共に『あイタっ!』と声が聞こえた。
(えぇ!?なになになに!?なんか聞こえたんだけど!てか、いたなら返事しろよ!)
音がした方にそーっと近づく(勿論、紙などは踏まずに)。扉が開きっぱなしの部屋であるそこも、此方同様の有様である。中を覗くと奥にデスクと椅子、それから手前にコピー機があって入り口からはうず高く積み上げられた本で視界が遮られてしまっている。
「あのー、市民課から来ました。一ノ瀬ですがー」
一応不法侵入と思われかねない為、ここに来てから何度も口にしたセリフを言う。
一ノ瀬が声をかけてから少しして、奥から『はーい』と声が聞こえて机の下からドサドサッと音を立てて何かがにょきっと出てきた。窓から入る逆光のせいで人であるという事しか判断できない。
(え?なに?なんかこっち来る!…てか、本やら紙やら崩れてますけど!?)
ズンズンと此方に向かって進んで来る人影は身体に当たり崩れていく本や紙には目もくれず、入り口近くにいる一ノ瀬の一歩手でとまり、こちらを見上げる。
「で?どなたですか?本日は予約入ってませんけど」
「あ、一ノ瀬です。本日からこちらに配属になった…」
「一ノ瀬…?配属…?」
驚いた。出てきた人物はどう見ても大学生、いや高校生にしか見えないような少女だった。
(てか、なんで机の下なんかにいたんだ?この子以外の職員いないのか…?)
「あ!」
「え!?」
急に大っきな声だすから、こっちがビックリしてしまった。なんだか目の前の少女が何かに納得したように“なるほどー”と呟く。と同時に一ノ瀬の腕を掴みグイグイと引っ張っていく。
「あ、あの…そんな速く歩くと、資料にぶつかって…」
「取り敢えず、君には棚の配置から覚えてもらうから」
(こいつ、話聞いてない!?)
「あ、あとコピー用紙切れそうだから補充もしてもらわないと。あとは」
「あのっ!!」
本気で、ぶつかる前に足を止めるため引っ張られている腕をぐっと引き止め、話を聞かない少女に聞こえるように大きな声で呼びかける。するとようやく一ノ瀬の声が届いたのか、さっさか動かしていた足をぴたっと止めこちらに振り向く。
「なに?コピー用紙なら地下の事務倉庫にあるけど」
「いや、そうじゃなくて…」
(普通の会話もままならないのか?この子は)
「じゃあなに?」
「あの、俺は今日からここに配属になった」
「一ノ瀬でしょ?知ってるよ」
「呼び捨てっ…!じゃなくて、ここの職員の人を探してるんですけどっ」
「いるじゃん、ここに」
「へ?」
今なんて言ったか?いや、聞き間違いかもしれない。だってさも同然かのように!しかも真顔で!こんな事を言う人はいないだろう。
「すみません、聞き取れませんでした。今、なんと…」
「だから、職員でしょ?居るじゃんここに。私課長ですけど?」
「はっ!?」
どうしよう。
俺はこの先やっていけるのだろうか。
扉を開けてまずはじめに目に入ったものは、大量の本と紙が積み重なっている光景だった。床には足の踏み場がないくらい開きっぱなしの資料のようなものであったり、走り書きだろうか落書きのような字でびっしりと埋め尽くされた紙などが散乱していた。また、換気もしていないのだろう。部屋には古いインクのような匂いと埃っぽさが充満している。
(え、待って。俺今日からこんな劣悪な環境で働かなきゃいけないのかよ)
既に一ノ瀬は心が折れそうであったが、ここまで来て引き返してもしょうがないのでどうにか足場を見つけ奥へと進んでいく。
「あのー。今日からお世話になります一ノ瀬ですけどー。どなたかいらっしゃいませんかー!」
少しずつ進みながら声を掛けているのだが返事はおろか、人のいる気配すら感じないしんとした雰囲気である。
(移動してくるってわかってるんだから、せめて置き手紙くらいあってもよくないか?)
課の人はみんな外回りなのだろうか? でもそもそも伝言課の業務内容を知らないから、この先人が帰ってくるのかすらわからない。困った。このままではなにもすることができない。
ふと進めていた足を止めて床に落ちている紙を拾い上げる。そこには『1982年5月13日 多田 明子様』と書いてあり、その下には3行くらい細く小さな文字が書かれてあった。
「1982年って、だいぶ前だな。なんでこんな前の資料が床に落ちてるんだ?」
よく見てみればその他の紙も同じ様な書式で、年代が様々な資料が散らばっていた。
(本当に“伝言課”ってどんな業務をしてるんだ…さっぱりわからん)
一ノ瀬が首を傾げながらうんうん言っていると、入って来た扉の右側にある部屋からドサッと音がすると共に『あイタっ!』と声が聞こえた。
(えぇ!?なになになに!?なんか聞こえたんだけど!てか、いたなら返事しろよ!)
音がした方にそーっと近づく(勿論、紙などは踏まずに)。扉が開きっぱなしの部屋であるそこも、此方同様の有様である。中を覗くと奥にデスクと椅子、それから手前にコピー機があって入り口からはうず高く積み上げられた本で視界が遮られてしまっている。
「あのー、市民課から来ました。一ノ瀬ですがー」
一応不法侵入と思われかねない為、ここに来てから何度も口にしたセリフを言う。
一ノ瀬が声をかけてから少しして、奥から『はーい』と声が聞こえて机の下からドサドサッと音を立てて何かがにょきっと出てきた。窓から入る逆光のせいで人であるという事しか判断できない。
(え?なに?なんかこっち来る!…てか、本やら紙やら崩れてますけど!?)
ズンズンと此方に向かって進んで来る人影は身体に当たり崩れていく本や紙には目もくれず、入り口近くにいる一ノ瀬の一歩手でとまり、こちらを見上げる。
「で?どなたですか?本日は予約入ってませんけど」
「あ、一ノ瀬です。本日からこちらに配属になった…」
「一ノ瀬…?配属…?」
驚いた。出てきた人物はどう見ても大学生、いや高校生にしか見えないような少女だった。
(てか、なんで机の下なんかにいたんだ?この子以外の職員いないのか…?)
「あ!」
「え!?」
急に大っきな声だすから、こっちがビックリしてしまった。なんだか目の前の少女が何かに納得したように“なるほどー”と呟く。と同時に一ノ瀬の腕を掴みグイグイと引っ張っていく。
「あ、あの…そんな速く歩くと、資料にぶつかって…」
「取り敢えず、君には棚の配置から覚えてもらうから」
(こいつ、話聞いてない!?)
「あ、あとコピー用紙切れそうだから補充もしてもらわないと。あとは」
「あのっ!!」
本気で、ぶつかる前に足を止めるため引っ張られている腕をぐっと引き止め、話を聞かない少女に聞こえるように大きな声で呼びかける。するとようやく一ノ瀬の声が届いたのか、さっさか動かしていた足をぴたっと止めこちらに振り向く。
「なに?コピー用紙なら地下の事務倉庫にあるけど」
「いや、そうじゃなくて…」
(普通の会話もままならないのか?この子は)
「じゃあなに?」
「あの、俺は今日からここに配属になった」
「一ノ瀬でしょ?知ってるよ」
「呼び捨てっ…!じゃなくて、ここの職員の人を探してるんですけどっ」
「いるじゃん、ここに」
「へ?」
今なんて言ったか?いや、聞き間違いかもしれない。だってさも同然かのように!しかも真顔で!こんな事を言う人はいないだろう。
「すみません、聞き取れませんでした。今、なんと…」
「だから、職員でしょ?居るじゃんここに。私課長ですけど?」
「はっ!?」
どうしよう。
俺はこの先やっていけるのだろうか。
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