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第1章 光と「クロード・ハーザキー」
07話 泥棒
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両手一杯に荷物を抱え、指定された場所に向かう。
荷物は持ち出したときよりも重く感じた。
いや、重いのは荷物ではなく、気持ちの方かもしれないが。
指示通り300メートルほど歩くと、大きな岩の陰に洞窟の入り口らしい穴が見えてきた。
「あった・・・ここでいいのか・・・」
洞窟の入り口まで荷物を運び、外から見て少し陰になっている部分に荷物を並べて置く。
洞窟の奥は真っ暗で何も見えないが、そんなに深いようには思えない。
「雨、風がしのげれば充分か・・・」
先程の惨状を思えば、あまり贅沢を言える状況ではなかった。
「じゃ、次・・・食糧だっけ? ちょっとマンション行ってくる」
気持ちを切り替えるつもりで、大きく背伸びをしてから、洞窟を出る。
『ちょ、ちょまれよー!』
――ん? 二度目のイケメン。
呼ばれて振り返ると、国民的スターが・・・
「ってモノマネの方かよ!!」
思わずパソコン相手に突っ込んでしまった。
これは、ノートパソコンに気を遣われているのだろうか。
一呼吸置いてから、何事もなかったように話す。
「ふうぅ・・・なんか行ったらまずかった?」
『私も連れて行ってもらえますか』
「だって重いじゃん、荷物だよ、完全に」
『私は現在、半径3キロ程度なら魔物や人の気配を探ることが出来ます。安全のためにも連れて行って頂きたいです。それに必要なものが見つかった時、その都度進言も出来ますので』
「うーん・・・そうか。安全には変えられないか・・・重いのは我慢するか」
とりあえず抱えていくのは嫌だったので、リュックの中身をその場に出し、パソコンをしまって背負うことにした。
「これでいい?」
洞窟を出て、歩きながら訪ねる。
『・・・・・』
「背中だと画面の文字が見えないから、さっきみたいに会話は出来ないの?」
『映像・・』
『お・・』
『組み合わせ・・・』
『テ・・・』
『やってやるぜー!!!ヒャッハー!!!』
パソコンが、ファイルにある映画やテレビの音声をつなぎ合わせて話しかけてきた。
「うわっ・・・犯行声明じゃん・・・完全になんかの犯人じゃん。それに最後のヒャッハーって・・・気持ち悪いからいいよ、文字で」
俺はそう言って、リュックを前から担ぎ直し。リュックのチャックを開けた状態にして、中でパソコンの画面を開き、歩きながら文字を読めるようにした。
『物を奪い行く時のセリフとしては、正しいと思いますが』
ちょっと読みづらいが、リュックの中に入れたまま文字が読めた。
「モヒカンに半裸で、バイクに乗ってるなら・・・正しいよ、きっと」
『難しいんですね。では少し時間がかかりますが、今からデータを新しく作成して、同一の音声で会話を出来るようにしたいと思います』
「へぇ、そんなこと出来るんなら、最初からやってくれたらいいのに・・・で、少しって、どれくらいかかるの?」
『いまから、約22時間くらいです』
「22時間? 結構かかるんだね。でも便利さを考えたら早いのか? まぁ文字じゃなく会話出来るのは嬉しいかも。明日には会話が出来るなら、楽しみに待つか・・・」
ほどなくして、マンションについた。
念のためパソコンに指示を仰ぐ。
『まずは最上階の奥の部屋から入りましょう。持ち出す物は、食料・医療品・貴金属・武器となるようなものです。余裕があれば、衣服なども持ち出してしまいましょう』
「貴金属も? あ、あぁ、まぁいいか。分かったよ」
そう言って、マンションに足を踏み入れた。
エレベーターは使えないので、最上階の6階まで階段で行く。
廊下や階段は何処も、血の跡やら、ドアや壁を壊したときの瓦礫でめちゃくちゃだった。
息を切らしながら階段を登り切り、最上階の一番の奥の部屋の前に到着した。
ドアは外れていた。
そのまま土足で中に入る。
まずは、台所から物色。
カップラーメン数点と包丁を手に入れる。
救急箱と貴金属はどこだろう?
『タンスなどの引き出しは下から順に開けると効率が上がります。下の引き出しは閉めずに上へ上へと次々に開けてください』
「おっ! 確かに下から開けると閉めなくていいから早いな」
『泥棒のテクニック・初級編です』
いちいち突っ込まないようにしよう。
喋っても会話が文字なので、徐々に口数が減ってきた。
口を閉ざしたまま、黙々と部屋中を物色する。
指輪やネックレスなど、貴金属類を数点見つける。
通帳は必要ないか・・・。
しかし、土足で人の家に侵入して、部屋中あさるとか・・罪悪感が半端ないな。
「やってることは本当にただの泥棒だな・・・でもまぁ仕方ないけど」
『なんでも「仕方ない」で済ませるのはよくない癖です』
文字での指摘は、悪口にしか思えないな。
「そお? まぁそう言われても仕方ないけど」
『また・・・』
「でも仕方ないと思わないと出来ないから・・・」
『それは、そうかも知れませんね』
「人間ってそんなもんだよ。たぶん」
『・・・記録しておきます』
こいつは本当に俺を助けてくれているのだろうか・・・
それとも、なんかデータを記録して、後で美味しく食べる気なのではないだろうか・・・
俺は、他人の部屋を漁るという罪悪感に呵まれながら、いろいろな考えが頭を巡っていた。
荷物は持ち出したときよりも重く感じた。
いや、重いのは荷物ではなく、気持ちの方かもしれないが。
指示通り300メートルほど歩くと、大きな岩の陰に洞窟の入り口らしい穴が見えてきた。
「あった・・・ここでいいのか・・・」
洞窟の入り口まで荷物を運び、外から見て少し陰になっている部分に荷物を並べて置く。
洞窟の奥は真っ暗で何も見えないが、そんなに深いようには思えない。
「雨、風がしのげれば充分か・・・」
先程の惨状を思えば、あまり贅沢を言える状況ではなかった。
「じゃ、次・・・食糧だっけ? ちょっとマンション行ってくる」
気持ちを切り替えるつもりで、大きく背伸びをしてから、洞窟を出る。
『ちょ、ちょまれよー!』
――ん? 二度目のイケメン。
呼ばれて振り返ると、国民的スターが・・・
「ってモノマネの方かよ!!」
思わずパソコン相手に突っ込んでしまった。
これは、ノートパソコンに気を遣われているのだろうか。
一呼吸置いてから、何事もなかったように話す。
「ふうぅ・・・なんか行ったらまずかった?」
『私も連れて行ってもらえますか』
「だって重いじゃん、荷物だよ、完全に」
『私は現在、半径3キロ程度なら魔物や人の気配を探ることが出来ます。安全のためにも連れて行って頂きたいです。それに必要なものが見つかった時、その都度進言も出来ますので』
「うーん・・・そうか。安全には変えられないか・・・重いのは我慢するか」
とりあえず抱えていくのは嫌だったので、リュックの中身をその場に出し、パソコンをしまって背負うことにした。
「これでいい?」
洞窟を出て、歩きながら訪ねる。
『・・・・・』
「背中だと画面の文字が見えないから、さっきみたいに会話は出来ないの?」
『映像・・』
『お・・』
『組み合わせ・・・』
『テ・・・』
『やってやるぜー!!!ヒャッハー!!!』
パソコンが、ファイルにある映画やテレビの音声をつなぎ合わせて話しかけてきた。
「うわっ・・・犯行声明じゃん・・・完全になんかの犯人じゃん。それに最後のヒャッハーって・・・気持ち悪いからいいよ、文字で」
俺はそう言って、リュックを前から担ぎ直し。リュックのチャックを開けた状態にして、中でパソコンの画面を開き、歩きながら文字を読めるようにした。
『物を奪い行く時のセリフとしては、正しいと思いますが』
ちょっと読みづらいが、リュックの中に入れたまま文字が読めた。
「モヒカンに半裸で、バイクに乗ってるなら・・・正しいよ、きっと」
『難しいんですね。では少し時間がかかりますが、今からデータを新しく作成して、同一の音声で会話を出来るようにしたいと思います』
「へぇ、そんなこと出来るんなら、最初からやってくれたらいいのに・・・で、少しって、どれくらいかかるの?」
『いまから、約22時間くらいです』
「22時間? 結構かかるんだね。でも便利さを考えたら早いのか? まぁ文字じゃなく会話出来るのは嬉しいかも。明日には会話が出来るなら、楽しみに待つか・・・」
ほどなくして、マンションについた。
念のためパソコンに指示を仰ぐ。
『まずは最上階の奥の部屋から入りましょう。持ち出す物は、食料・医療品・貴金属・武器となるようなものです。余裕があれば、衣服なども持ち出してしまいましょう』
「貴金属も? あ、あぁ、まぁいいか。分かったよ」
そう言って、マンションに足を踏み入れた。
エレベーターは使えないので、最上階の6階まで階段で行く。
廊下や階段は何処も、血の跡やら、ドアや壁を壊したときの瓦礫でめちゃくちゃだった。
息を切らしながら階段を登り切り、最上階の一番の奥の部屋の前に到着した。
ドアは外れていた。
そのまま土足で中に入る。
まずは、台所から物色。
カップラーメン数点と包丁を手に入れる。
救急箱と貴金属はどこだろう?
『タンスなどの引き出しは下から順に開けると効率が上がります。下の引き出しは閉めずに上へ上へと次々に開けてください』
「おっ! 確かに下から開けると閉めなくていいから早いな」
『泥棒のテクニック・初級編です』
いちいち突っ込まないようにしよう。
喋っても会話が文字なので、徐々に口数が減ってきた。
口を閉ざしたまま、黙々と部屋中を物色する。
指輪やネックレスなど、貴金属類を数点見つける。
通帳は必要ないか・・・。
しかし、土足で人の家に侵入して、部屋中あさるとか・・罪悪感が半端ないな。
「やってることは本当にただの泥棒だな・・・でもまぁ仕方ないけど」
『なんでも「仕方ない」で済ませるのはよくない癖です』
文字での指摘は、悪口にしか思えないな。
「そお? まぁそう言われても仕方ないけど」
『また・・・』
「でも仕方ないと思わないと出来ないから・・・」
『それは、そうかも知れませんね』
「人間ってそんなもんだよ。たぶん」
『・・・記録しておきます』
こいつは本当に俺を助けてくれているのだろうか・・・
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俺は、他人の部屋を漁るという罪悪感に呵まれながら、いろいろな考えが頭を巡っていた。
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