光の声~このたび異世界に渡り、人間辞めて魔物が上司のブラック企業に就職しました

黒葉 武士

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第4章 光と「ブルクハント王国の誘拐犯」

95話 円陣

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「でも、300ってどうして・・・?」
 俺の低い魔素レベルにアマリージョが不思議がる。

「さぁ、なんだろな。さっぱり分からねぇ。言うなれば極端な箱入り息子で、魔素の薄い場所で大事に育てられたんだろうな」
 アマリージョの言葉に、モンローが少しあきれ顔で答えた。

「それかあれよ。実は今3歳ってことでちゅよ・・・ぷぷぷははははははっ」
 ルージュのいじりが止まらない。

『一応説明しておくと、玄人クロードが魔素レベルを測る際、わたしの魔素と同じになっては困るので、私からの魔素供給を止めたからでしょう』
 ヒカリが通信を使って俺たち3人に理由を説明した。

「ま、まあそうなるか」
 俺はちょっと落ち込みながらも、仕方がないと納得する。

「まあ、気を落とさずに・・・ぷぷっ・・・元気・・・出しなさいひょ・・ぷはぁっ」
「姉さん、そろそろいい加減に・・・・げ、元気出してくださいね・・・クロードさんっ」

「なんかな・・・アマリも、半笑いで言われても・・・」
 とは言うものの、真剣に励まされても、素直に元気は出ないんだが・・・。

     ♣

 その後、笑いが落ち着いたルージュへの質問が再開され、30分ほどで全員分の質問と手続きが完了した。

「これ、先に渡しておくぞ」
 そう言ってモンローは各自に情報の記録されたギルドタグを配った。
 銀色に輝く綺麗なタグだ。
 すぐにしまうのも勿体なく感じて、服の中には入れず、外から見えるように首からぶら下げるだけにした。

「それと、さっきも言ったが報奨金の件だな。ギルド登録前という事で本来は出せないのだが、団長の口添えだからな。特別に許可をした。ただ、金額は金貨3枚、30万ギリルが限界だった」

「3枚・・・少ないですよね・・・」

「かなりな。ちゃんとギルドに登録をしていたら、今回戦闘に参加しただけで少なくとも金貨5枚、直接討伐なら金貨50~100枚ってとこだろうな」
 俺の質問にモンローが答えた。

「100枚・・・1000万ギリルかぁ・・・30万とか、もうどうでもいい金額ね。クロードの借金も返せたのに、なんか損した気だわ」
「そうですよ。私なんか、死ぬ思いまでしたのに」
 ルージュとアマリージョが口を揃えて文句を言う。

「もし魔石があるなら、その分色を付けて買取りするようにしてやれるが?」

「ああぁぁぁぁぁ、魔石かぁ。やっぱり高かったのね、アレ。あんな奴に渡すんじゃなかったわ」
「高価なのは分かってただろ。あの時はそれで仕方なかったし・・・」
「はい。もうやめましょう。今さらですし、値段も聞くのは止めておきましょう」

「その様子だと、魔石は持っていないみたいだな・・・。まぁ代わりと言ってはなんだが、君たちのチームは、本来Fランクから始まるところをCランクからスタートとさせてもらった。当然、個人のランクもCランクからスタート。もちろん昇級試験や登録料も免除。あ、今日の登録もタダでいいからな」

「え?お金かかるの? マジで?」
「え?私たちも知らなかったわよね」
「はい、知りませんでした」
『私は知っていましたよ』

「でもお金持ってないよ、俺たち。ヒカリは知ってて、どうするつもりだったの?」

『素材や作った武器を売るつもりでした』

「あ、そっか。それ何となく言ってたような・・・まぁ、それくらい考えてて当たり前か」

「そうよ、ヒカリよ。その辺は全部お任せで大丈夫なんだから」
 胸を張って偉ぶるルージュ。
「なんでルージュが威張るんだよ」
「そうですよ。姉さんはもう少し自分でも考えてください」

「わっはははははっ、君たちは面白いな。冒険者らしくもないし、話をしていても飽きないな。こりゃヴェール殿が楽しそうに話すわけだ」
 モンローが俺たちのやりとりを聞いて急に吹き出して笑い出した。

「ヴェール? モンローのおっちゃんはヴェールを知ってるのね」

「姉さん!失礼ですよ!」

「あ、いやいいよ。しかし、おっちゃんかよ。俺も年を取ったってことか・・・そりゃそうか。まあ、ヴェール殿は世界でも知られた存在。俺もまあ、こんな所でギルマス(※ギルドマスター)やってはいるが、冒険者の間じゃ、それなりに知られた存在なんだぞ。顔見知りでも不思議じゃないだろう」

「それはそうね。あはははは」
「そうだろ、わははははは」
 何故かバカ笑いをする2人。
 全然、意味がわからないが、何故か意気投合しているように見えなくもない。

『楽しそうなところすみませんが、モンローさん。ちなみに登録料はタダでと言いましたが、本来はどれくらいかかるものなのですか?』


「ん?なんだ、おチビちゃん。って7000超えに向かっておチビちゃんは失礼だったな。えーと、料金は、まず個人の登録に一人3万とチーム登録に2万だ。その後、昇進試験に一人3万、昇進登録に一人5万だ。チームのランクはギルドから査定みたいなものだから登録料だけでランクアップの手数料は不要だ」

『ということは、4人で登録料14万と、昇進三回分で96万、合わせて110万をタダにしてくれたってことですか?』

「ん? 計算早いな・・・よく分からんが、まあだいたいそんな金額だ」

「すいません。私も質問いいですか? 先程から言われている個人とチームのランクって、別々なのですか?」

「本来はな。だが、今はいろいろ形骸化されていて、リーダーのランクが、そのままチームのランクって事になっている。個人のランクは基本的には同じチームで活動していれば、上がるタイミングも同じだしな。メンバーが途中加入したせいで、多少ばらつきのあるチームはあるが、その辺はリーダーが考える問題だからな。ただ、ギルド側から依頼を出すときはチームランクが基準になっているから、リーダーだけランクが高くて、ほかはFランクとかだと、かなり危険にもなるだろうし、死亡者が頻繁に出るようならギルドから依頼ランクの引き下げや、活動休止などの警告が入る場合がある」

「分かりました。ありがとうございます」

「おっと、もうこんな時間か。そろそろ行かなくては・・・すまんな。あとは下の者に引き継いでおくから。それと素材を売るなら地下の商業ギルドだ。今日売る分に関してはうちの手数料を取らないで買い取るように言っておくからな。受付に申し込んで買い取りをしてもらうといい」
 モンローはそう言うと、席から立ち上がり、入り口のドアを開けた。

「「ありがとうございます」」
「ありがと」
『いろいろありがとうございました』
 俺たちも立ち上がりお礼を言う。

「こちらこそドタバタしてすまんな。今日、たまたま職員が流行病で休んでな。現場の手伝いは久しぶりだったが、お前らに会えて良かったよ。だから、全員、いつか死ぬまで、死ぬんじゃないぞ!」
 モンローはそう言いながら、親指を立てて、ドアから出る俺たちを見送ってくれた。

 俺たちは、貰ったギルドタグを服の中に入れ直したあと、誰からとなく円陣を組んだ。
『たった今から私たちは冒険者です。これからやっとスタートです。やらなければならないことは数多いですが、一つ一つ楽しんでいきましょう。それからアマリ。今日からは、さん付けも止めましょう』

「え? どうしてですか?」

『丁寧語までは仕方ないとしても、さん付けは敵に序列がバレてしまう恐れがあるからです。それにもう同じ新米冒険者同士ですから』

「確かに・・・俺やヒカリのことをさん付けで呼ぶと、やっぱ俺たちの方が偉い感じに見えるもんね」
 ヒカリに続いて、俺も賛同する。

「・・・そうですね・・・分かりました。これからはお二人のことを呼び捨てにします」

『はい。ありがとうございます、アマリ。ではこれで本当にスタートです』

「じゃあ、一応気合い入れとく?」
「うるさくしたら迷惑ですよ」
「じゃあ小さい声で・・・」
 ルージュはどうしても気合いが入れたいようだった。

 気がつくと円陣を組んだまま、何となく手を出していた。
 中心で4人の手が重なり合う。
『では参りましょう』

『「「「おーっ」」」』
 ヒカリの合図で、4人一緒に小さなかけ声を出した。
 そして、冒険者として胸を張って階段を降りていった。
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