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第1章

第4話(マルクコス視点)

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やっぱり、一目見て素晴らしいと思ったあの子はとても頭がよかった。

家庭教師を始めてから5年目にして、やっとこの仕事をしていてよかったと思った。

俺は絶対に離さないぞ、こんな素晴らしい人が自分の主人になってもらえたらいいのにな。

なんて、この仕事をしていくうえで絶対に抱いてはいけない思いを抱きつつ俺は彼アンサール君に教えていく。

彼の勉強への熱心さは人一倍だ。

もともと本を読むのが好きであるということも関係しているのだろうが、きっと彼が将来を見据えているからだろう。

この前、「なぜ、こんなに一生懸命に勉強するのですか。」

と聞いたところ

「将来、じっくりと数学の勉強をしたいからです。」

と言われたのでさすがだなあ、と思った。

彼が数学に物凄い興味があるのは知っていたが、最近俺が彼に魔法を見せてから魔法にも興味を示している。

正直に言って、魔法はどちらかと言うと暗記系だから、あまり好まないものだと思っていたがどうやら、彼曰く

「魔法陣は、規則性があるから。」

と、彼の興味をとても引いたらしい。

俺は彼の第一印象をとても頭がいいと評したが彼はもしかしたらそれ以上の天才かもしれない。

確かに、生まれくるときからすべてができる天才と言うものではないのだろう。

だが、彼は好きなことにひたむきに頑張れる研究者として物凄く適性のある人物だ。

きっと将来、彼が社会に出てからその後も、きっと、彼の名前が語り継がれていくだろう。

これは俺の憶測でしかないが、これは正しいものいやそれ以上のものになるかもしれないと、家庭教師として接してきて思った。

もし、彼が研究者になったのだとしたら、俺も彼の傍で彼の研究を見たい、と言うか一緒に研究をしたい。

最近はそう思うようになってきた。

もう、いっそのこと諦めてこのまま自分の主人になってもらえたらなあ、一生隣にいることが出来るのに。

こんな考えが出るくらい、彼の知性は俺を魅了してしまったらしい。

しかし、まだ俺には彼を入試で合格させるという試練があるのでそれをすることが出来ない。

きっと彼なら、合格することはできるだろうが、できるなら余裕で合格してほしい。

そんなこんなで色々考えながら俺は彼の家庭教師をしている。

いつかこの関係も終わってしまうが、その後は今よりもいい関係になっていることを俺は強く望む。
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