半魔人

シュガー

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序章-総ての始まり-

プロローグ-前編-

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――それは、自分にとって必然だったとしか思えない、出来事であった。

 俺は、いつものようにこれから一か月の隙間時間にできるバイトを探していた。

バイトと学校だけで精いっぱいだが、案外いろんなことが出来て楽しい。

10年前のあの日、いつものように学校に行く途中で起こったある悲惨な出来事。

連続爆破。それに続くようにして出現した“穴”、“悪魔”。

こうして俺たちは急遽として、悪魔たちとの全面戦争が始まったのだった。


 まあ、こんな、堂々と大きなことを言っているが、実際、戦争は始まったといっても、膠着状態がかれこれ5年間も続いているため、実際のところあんまりそれまでの生活とは変わっていない。
 しかし、その中でももちろん違いは発生した。

 その違いというのは、突如として“魔法”というものが生活の中に入ってきたことである。

その出来事があってから、人類は突如として魔法が使えるようになり、例外なく俺も使えるようになった。

 まあ、使えるようになったといっても、明かりをつけたり、小さな火をつけたり、水を出したり、風を吹かせたりといった、以前のインフラで賄っていたものの代用でしかないのだが。まあ、生活費が少し浮いたと考えたらそれは、それでいいのだが。


 そんなこんなで、生活に魔法が入ってきたがあんまり変わらない世の中で次に発生したのが、“不景気”だ。

 様々な初めてのことに対処するために色々な場所で試行錯誤していった結果、財政難になってしまい、倒産する会社が増えた。

 そのため、就職氷河期どころか、同世代の人はみんなバイトをしていて、ごくまれに才能のあるやつだけが、バイトをせずに正社員として勤めているということになる。

 ちなみに、魔法によって仕事はなくならないのかというと、まったくなくならなかった。
 結局、人間の代わりに今までやらせていたことが、魔法に一部置き換わっただけでそれ以上のことはできるようにはならなかった。

 そういうわけで、コンビニバイトをしながら、アンケートモニターに答えつつ、飲食店の接客業をしている。

 やはり、魔法が使えるようになったおかげで、魔法がなかった時と比べて楽になったらしい(自分はその当時働いていなかったため、よく分からないが)


 そして今日は、つぶれてしまう予定の飲食店のバイトから、ほかのバイトを見つけるためにバイトの求人サイトを見ているのである。

いままでと同じようなバイトは多いが、時間帯がうまく合わず見送ってしまう。

なかなか、掛け持ちをしている人間には辛い。金額的に多いものは基本的にやることが危険なことが多く、自分には向いていないので基本的に見ていない。

しかし、今回はいつも見ている通りにフィルターをつけて、見てみたところなかなか良いものが見つからない。

そのため、俺はいつもなら絶対に見向きもしない高額バイトの欄を見に行ってみることにした。

すると、そこには

――高額治験 対象:健康的な一般人

という、文字列があった。



これが、色々なことが起こる前ぶりであった。


 その治験のアルバイトに応募した結果、見事に受けれることになったので、必要な持ち物を持って会場に行く。

ちなみに必要なものは、身分証明書や保険証など、様々なものが書いてあった。友達や家族にアルバイトで長く家を空けると言っていくことにした。

正直、今月は、あと3000円(一週間)と、何とかなりそうなところであったが、25歳にもなって貯金が一切ないのもさすがにまずいし、この先、今定期的にシフトが入っているバイトがどうなるかもわからないので、この絶好のチャンスに受けることにした。

 治験は結構危険なものだと思われるが、実際は動物実験をして生命体に害がないことを確認してから、行われているのであまり危険なものではないといえるだろう。

また、治験で確認するのは、安全性よりも効果が実際にあるかどうか、そちらの方をしっかり調べるのであろう。

 まあ、そんなこんなでかなり落ち着いて、治験のバイトに行く。

会場について、指定された部屋に行くためにドアを開けると、ガチャッとかなり大きな音が鳴った。

ガチャっと鳴り響くそのドアの音がこの建物が老朽化し始めていることを示しているように思える。

そうして、椅子に座っていると、後ろから3人ほどついてきた。全員男性で自分よりも年上のように見える。

 それに、みんな身なりがよくて、なぜこんなバイトを受けているのだろうと疑問に思ったが、まあ自分にはそんなことは関係ないし、安全に治験が終わることを待つだけだ、と思って用意された椅子に座り、今回の薬に関する資料がおかれていた。

その紙には、魔力増強剤の効果検証と書かれており、言葉通りに体内の魔力量を増やす代物だろう。

 まあ、変なことになってもちょっと気絶するくらいだろうし、大丈夫であろうと思いながら、相手方が来るのを待っていた。


 相手方がやってきて、紙に書いてある内容とほとんど同じような内容を話、自分たちそれぞれに個室が与えられそこで薬を飲んで定期的な食事と検査を受けることの説明をしてきた。

特に変なこともないので、同意書にサインをして案内に従って自分の部屋に行って、くつろぎながら、バイトの予定などのスケジュールを見ていた。

その後、研究員たちが運んできた薬を彼らの前で飲み、食事と検査の時間の予定が書かれている紙を渡してきた。紙によれば、昼食まであと2時間ほどあるのでネット小説を読みながら、時間をつぶしていた。

――それから三時間後のこと

 俺は、昼食をとり昼寝をしていた。そして、急な胸の痛みが俺を襲ってきた。
「うぐっ。」と声を出して、俺はそのまま動けなくなってしまった。

 しばらく寝ていたのだろうか、目が覚めると、そこには特に何もなかったのかのようで倒れる前とそのままそっくりな状況になっていた。まあ、治験なんだしこのくらいあるだろう。と楽観的に考えて、実験が終わるのを待つ。

 そして再び、検査の日がやってきて初日以降は順調に時間が過ぎていった。

 そしてやってきた最終日、俺はいつも通りに投薬を受けて検査を受けて終了までの時間、待っていた。

 やはり、長期間の治験だったということもあってなかなか、用意していた、時間をつぶすものも底を尽きてしまった。

――その時だった。

先日よりももっと強い痛みが俺にやってきた。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

痛みで立つことなど到底できるわけでもなく、その場に痛みで気絶して倒れてしまった。

そして俺は、近くで「ようこそ。」と誰かがつぶやいていたことに気が付くことはなかった。
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