偽りのトリアーダ〜義兄弟の狂愛からは逃げられない〜

草加奈呼

文字の大きさ
22 / 41
第三章 束の間の幸せ

18.5 告白 sideポポロム

しおりを挟む
 休日、僕はリアさんと約束どおり公園へ日光浴に来ていた。
 僕の勤める病院は、比較的ちゃんと休日が取れる体制なので、こうしてリアさんと一緒に過ごせる時間があるのは本当にありがたい。もちろん、急患が出た時は別だけれども。

 リアさんは、最初恥ずかしそうに上着を着ていたが、その隙間から見える水着や肌の色も僕にとっては愛おしくてたまらなかった。
 シートの上に座ると、リアさんは上着を脱いだ。あらわになった黄色基調のビキニの水着は、先日僕が買ってあげたものだ。

 途中でリアさんが日焼け止めを塗ろうとしたので、15分だけ何もなしで日光浴をしましょうと止めた。
 この間は、小麦色に焼けたリアさんも、白い肌のリアさんもどちらも好きだなんて言ったけれど、僕はやはり、リアさんは白い肌の方が似合うと思った。

 15分後、リアさんが日焼け止めを塗り出したかと思うと、急にソワソワし始めた。
 どうしたのかと思っていると……。

「あの……。すみません、背中だけお願いしていいですか!?」

 挙動不審になっていたリアさんが、日焼け止めを差し出してきた。

「えっ」
「今朝、お父様にお願いするのを忘れてて……」

 リアさんは申し訳なさそうな、照れた風な顔をして言った。
 きっととても勇気を出して言ってくれたのだろう。
 僕はその勇気を無下にしないために、日焼け止めを受け取った。
 
「そ、それじゃあ、失礼して……」
「はい、思いっきりやっちゃってください!」
「そんな、力まなくても……」

 リアさんは綺麗に背筋を伸ばし、背中を向けて座った。
 本当は身体に塗る時は直接クリームを出した方がいいのだが、これ以上リアさんを混乱させるのもどうかと思い、一旦手に出すことにした。
 チューブを押して右手にクリームを適量出す。
 背中の中心に手を当てると……

 ぴと。

「ひゃあぅ!?」
「えっ、す、すみません……!?」

 いつもよりオクターブ高い声を聞いて、驚いて手を離す。

「い、いえ、すみません……。思ってた以上に冷たくて」

 ああ、そうか。いくら天気がいいと言っても、外気温は18度くらいだ。
 そのままクリームをつけたら冷たいに決まってますよね。
 リアさんのかわいい声を聞きたくて、もう一度やりたい衝動を抑えながら、手のひらで丁寧にクリームを伸ばしていく。

 あの痛ましい事件の時のアザは、もう残っていない。
 とてもキレイな肌だ。
 
 良かった……。

 このまま……。
 このまま、テオさんの事は忘れたままで……いてくれたらいいのに……。

 日焼け止めを塗り終えてしまった。
 もっと触れていたい。
 あのお酒の時のような理性が効かない状態ではなく、ちゃんとリアさんを感じたい。

 愛おしさが溢れ、リアさんを後ろから抱きしめてしまった。

「せ、先生……?」
「終わりました」
「いえ、あの……恥ずかしいです……。人目が……」
「周りはカップルばかりですよ。こちらの事なんて気にしていません」

 耳元で囁く形になってしまい、リアさんはぴくりと緊張で肩を震わせた。

「リアさん。僕は、もう我慢できません」

 僕は、リアさんの肩を掴んでこちらを向くようにした。
 これだけは、目を見て真っ直ぐに言いたいと思った。

「あなたの事が好きです。ずっとずっと、昔から……。素敵な女性になって、僕の前に現れた時は驚きました」

 それを聞いたリアさんは、真っ赤になって俯いてしまった。

「先生……。とても、嬉しいです。でも……私でいいんですか……?」
「どうしてそう思うのですか?」
「だって、私は……」

 そこで、リアさんは言葉を止めて視線を逸らした。
 ああ、おそらくリアさんはアルフレッドさんとのことを覚えている。
 それを気にしているのだ。

 テオさんとの記憶は失くしても、心の奥深くにはアルフさんの存在があるのだろう……。
 それでもいい。

「かまいませんよ」

 僕は、不安にさせないように笑顔を作った。

「全部まるごと、あなたを愛します」

 そう言うと、リアさんは泣き声を殺しながら大粒の涙を溢した。

「ううっ……」
「泣かないで、リアさん」
「ありがとう……ございます……。そんな風に言ってもらえたのは、初めてです……。よろしく、お願いします……」

 僕は雑踏の中、リアさんの涙が他の人の目に触れないように抱きしめた。

 好奇の視線をリアさんに勘付かれないように包み込む。
 これでいい。これでいいんだ。
 リアさんを幸せにするのは、僕の役目だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日7時•19時に更新予定です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

【ヤンデレ八尺様に心底惚れ込まれた貴方は、どうやら逃げ道がないようです】

一ノ瀬 瞬
恋愛
それは夜遅く…あたりの街灯がパチパチと 不気味な音を立て恐怖を煽る時間 貴方は恐怖心を抑え帰路につこうとするが…?

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...