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第四章 選択
23.5 養父《ちち》と息子 sideポポロム
しおりを挟む──リアさん……リアさん……
ずっと好きだったのに……。
僕が、リアさんの義兄だったら……良かったのに……。
何故僕は、嘘でも「愛している」と言えなかったんだろう……。
リアさんと初めて会ったのは、十九年前。
ダニエルさんたちが、戦後初めて家族でこの家に遊びに来た時だ。
まだ赤ん坊とも言えるリアさんを見て、その時は純粋に赤ん坊に対して「かわいい」と思っていた。そして、同族が生き残っていた事がとても嬉しかった。
その後、僕とリアさんが会う事はなかったが、時々ダニエルさんが叔父に手紙と共に家族写真を送ってくれていた。写真の中で少しずつ成長していくリアさんを見て、僕は恋をした。
だけど僕が知っているリアさんは、15歳で止まっていた。もしかしたら、レナーテさんが亡くなられたからかもしれない。
僕は立派な医者になって、いつかリアさんを迎えに行こうと思っていた。
しかし、あの痛ましい事件が起きてしまった。
リアさんが僕の勤める病院に運ばれて来た時は驚いた。
おそらくリアさんがゴンドル族だったため、同族である僕がいる病院に救急隊から連絡が入ったのだろう。
僕が救いたかった。
僕が幸せにしたかった。
僕は今まで、一体何のために頑張ってきたんだろう……?
暗がりの中、ベッドに顔を埋めて涙を流した。
微かに残るリアさんの香りが、胸の内側をくすぐる。
外から車の音が聞こえて、やがてそれはバタンと扉を閉める音がして遠ざかっていった。
タクシーを呼んだのだろう。
「おーおー。電気も付けずに」
そう言って、ノックもなしに叔父さんが入ってきた。
急いで涙を拭く。
この人は、僕が辛い時ほどこうやって飄々とした態度でやってくる。
初めて出会った時からそうだった。
優しくて、厳しくて、時々何を考えてるかわからない、それが僕の養父。
患者のご婦人方からはすごく慕われているのに、特定の相手を見つけようとしない。
最初は、僕という存在が邪魔をしているのではないかと思っていた。
でもこの人は本当にそういう気がないのだと、大人になってようやく気づいた。
「叔父さん……」
声を発するとまた泣いてしまいそうだった。
この年齢になって失恋して泣くなんて。
情けないと思われるかもしれない。
「おまえの気持ちはわかってるつもりだ。けどな、言っただろう? リアちゃんの気持ちを尊重しろって」
「……はい。すみません、取り乱しました……」
本当に。気持ちを切り替えなければ。
「おまえがやるべき事はなんだ? リアちゃんの望みを、叶えてやることじゃないか?」
「それは……」
リアさんはまた家族──兄弟で暮らしたいと思っている。
それには、テオさんが出来る限り日常生活を送れるように手助けしないといけない。
残念ながら、僕は医者であってもテオさんに対してできることは、たかが知れている。僕が「治す」なんて事は、とてもおこがましく傲慢な事なのだ。
「おまえなら、できると俺は信じてる」
「叔父さんは、僕を買い被りすぎですよ」
「そんな事はない。おまえは俺の、自慢の『息子』だからな───」
叔父さんは、僕の頭をポンポンと叩いた。
まるで子供扱いしている。
だけど、『息子』と言われた事がほんの少しだけ、嬉しかった。
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