短くて怖い話4【短編集】

テタの工房

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水みくじの悪夢

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真夏の太陽が照りつけるアスファルトを、リュウタ、ケンジ、マサト、そして唯一の女の子、ユキの4人は歩いていた。リュウタが先頭に立ち、地図を片手にニヤニヤしている。目的地は、廃墟となった遊園地「グレート・ファンタジーランド」。

「よっしゃ、着いたぜ!」リュウタが叫んだ。錆び付いたゲートが、まるで巨大な口を開けて彼らを待ち受けているようだった。

グレート・ファンタジーランドは、10年前に突如閉鎖された。事故があったとか、祟りがあるとか、様々な噂が飛び交っていたが、最も有名なのは「水みくじで大凶を引くまで出られない」という都市伝説だった。

「マジかよ…本当にあるんだな、こんなの」ケンジは、少し震えた声で言った。

ユキは、リュウタの持っていた古びた水みくじの箱を覗き込んだ。「へぇ…こんなの、本当に当たるわけないでしょ」と、彼女は半信半疑だった。

しかし、リュウタは意気揚々と水みくじを引き始めた。

「よし、俺から!…大吉!」

「嘘だろ!?」ケンジが叫んだ。リュウタは、にやにやしながら笑っている。

次にケンジが引いた。結果は「吉」。

マサトは「中吉」。

そして、ユキが引いた。

「…大凶…」

ユキの声は小さかったが、皆にはしっかりと聞こえた。

その瞬間、遊園地の空気が一変した。さっきまで聞こえていた蝉の声は消え、冷たい風が吹き抜けた。空は、不自然なほど暗くなった。

「何だこれ…?」リュウタは、不安げな表情で辺りを見回した。

その時、廃墟の奥から、奇妙な音が聞こえてきた。それは、子供の泣き声のようでもあり、動物のうなり声のようでもあった。

4人は、恐怖に駆り立てられながら、廃墟の中へ足を踏み入れた。

中は、想像をはるかに超える惨状だった。朽ち果てた観覧車は、まるで巨大な骸骨のようにそびえ立ち、錆び付いたメリーゴーラウンドは、不気味に回転しているようにも見えた。

至る所に、奇妙な落書きがされていた。中には、血のような赤い跡もあった。

彼らは、廃墟の中をさまよいながら、次々と奇妙な現象に見舞われた。突然消える影、聞こえるはずのないささやき、そして、どこからともなく現れる血染めのぬいぐるみ。

ユキは、恐怖で泣き出した。

「もう…帰りたい…」

しかし、出口は見つからない。彼らは、まるで迷路に迷い込んだように、グルグルと同じ場所を回っている気がした。

さらに進むと、彼らは廃墟の一室にたどり着いた。そこには、古い祭壇のようなものが置かれていた。そして、その上には、無数の水みくじが散乱していた。

その中には、大凶の紙が何枚も、まるで呪いのように突き刺さっていた。

そして、祭壇の奥から、かすかな声が聞こえてきた。

「…もう…一人…」

その声は、まるで、かつてこの遊園地で遊んでいた子供のようだった。

リュウタは、恐怖と同時に、奇妙な使命感のようなものを感じ始めた。彼は、この廃墟から脱出するために、何かをしなければならないと感じていた。

彼は、祭壇に置かれた水みくじを一つずつ拾い上げ、丁寧に読んでいった。

「大凶…大凶…大凶…」

どれもが、大凶だった。

そして、最後に一つだけ残っていた水みくじを引いた。

「…吉」

その瞬間、廃墟全体が揺れ、光が差し込んだ。

4人は、出口にたどり着いていた。

彼らは、言葉もなく、廃墟から飛び出した。

振り返ると、グレート・ファンタジーランドは、まるで消え去ったかのように、跡形もなくなっていた。

4人は、二度とあの廃墟には近づかなかった。しかし、あの日の悪夢は、彼らの心に深く刻まれたままだった。

ユキは、その後、水みくじを一切見ることができなくなった。

リュウタ、ケンジ、マサトは、時々、あの廃墟の悪夢を思い出しては、震えるのだった。  そして、彼らは理解した。水みくじの「大凶」は、単なるゲームの終わりではなかったことを。それは、恐怖の始まりだったのだということを。
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