異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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黒薔薇の復讐婚

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真紅のドレスが、フローレンスの白い肌に映える。けれど、その美しさは、今にも砕け散りそうなほど脆かった。

一週間前、彼女は婚約者である王子アルフレッドから、婚約破棄を告げられた。理由は、彼女が令嬢エリザベスを虐めたという、些細な出来事だった。些細なことなどではなかった。エリザベスは、フローレンスの美貌と高い家柄を妬み、執拗に彼女を陥れようとしていたのだ。そして、その策略は見事に成功した。

アルフレッドは、エリザベスの涙に濡れた顔を見た時、フローレンスの残酷さを確信したらしい。フローレンスは弁解の機会すら与えられなかった。

「許せないわ。あんなに美しいあなたを、あんな風に扱われたなんて!」

フローレンスの母、公爵夫人イザベラは、娘を慰めようとするが、その言葉は虚しく響くばかりだった。フローレンスは、ただ虚ろな目で、窓の外の枯れ木を見つめていた。

それからというもの、公爵家には不穏な空気が漂っていた。フローレンスは部屋に閉じこもり、食事もろくに取らない。イザベラは、娘の心を癒やすため、あらゆる方法を試みたが、効果はなかった。

そして、ついに決まったのは、フローレンスを、北方の領主である、老齢の伯爵バルタザールと結婚させるという、衝撃的な決定だった。バルタザールは、フローレンスの父である公爵と、長年親交のあった人物だが、その年齢は、フローレンスの祖父とほぼ同じだった。

「こんな仕打ちが許されるのかしら!あの男は、醜悪で、冷酷で、あなたを不幸にするに違いないわ!」

イザベラは、この結婚に猛反対した。しかし、公爵は、王室からの圧力と、公爵家の存続を懸念し、この結婚を受け入れるしかなかった。

フローレンスは、何も言わなかった。ただ、彼女の瞳には、これまで見たことのないほどの深い闇が宿っていた。

結婚式当日。フローレンスは、純白のドレスではなく、黒の薔薇を散りばめた、漆黒のドレスを身にまとっていた。その姿は、悲しみと怒りに満ち溢れ、美しいながらも恐ろしい雰囲気を漂わせていた。

バルタザールは、フローレンスを見て、一瞬、戸惑いの表情を浮かべた。しかし、すぐに、冷酷な笑みを浮かべた。

「美しい花嫁だ。今日から、お前は私だけのものだ。」

バルタザールの言葉は、フローレンスには全く届いていなかった。彼女の視線は、遠く、王宮の方向を捉えていた。

結婚式の宴は、冷ややかな空気に包まれた。誰もが、フローレンスの悲しみと、バルタザールの冷酷さを目の当たりにして、言葉を失っていた。

しかし、宴の最中、突然、騒ぎが起こった。

「王子殿下が、お越しになりました!」

誰かが叫んだ。

アルフレッドが、王宮の衛兵を率いて、宴会場に乱入してきたのだ。彼の顔には、後悔と焦燥が混ざり合った複雑な表情が浮かんでいた。

「フローレンス!誤解だったんだ!エリザベスは、すべてをでっち上げたんだ!」

アルフレッドは、エリザベスの策略を暴露し、フローレンスへの謝罪を述べた。しかし、フローレンスは、彼を見ても、何も感じなかった。

「もう、遅いわ。」

彼女は、冷たい声で言った。

そして、彼女は、バルタザールに近づき、彼の耳元でささやいた。

「あなたは、私の復讐の道具よ。」

その瞬間、フローレンスの瞳に、冷酷な光が宿った。

それからというもの、フローレンスは、バルタザールを巧みに操り、アルフレッドとエリザベスへの復讐を始めた。それは、王室を揺るがすほどの、壮大な復讐劇の始まりだった。

彼女は、バルタザールを利用して、王室に圧力をかけ、アルフレッドを廃嫡させ、エリザベスを国外追放に追い込んだ。

そして、最後に、彼女はバルタザールを殺した。

復讐劇を終えたフローレンスは、黒の薔薇を墓前に捧げた。

彼女は、もはや、可憐な男爵令嬢ではなかった。

彼女は、復讐を遂げた、黒薔薇の女王だったのだ。
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