異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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王の蜜蜂

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レオは、生まれたときから奇妙な体だった。母は出産時に女神の祝福を受けた、と村人たちは囁いた。その祝福とは、二十歳になるまで性別が定まらない、というもの。

レオは幼い頃から、鏡に映る自分の姿に戸惑っていた。時には男らしい鋭い顎のラインが、時には柔らかな女性の頬が浮かび上がる。日によって、いや、時には朝と夕でさえ、その姿は変化した。男の子として、女の子として、どちらの服を着ても、違和感があった。どちらの遊びも、心地よかった。

村では、レオは不思議な存在として扱われた。好奇の目と、畏怖の目。どちらの目も、レオには重くのしかかった。友達も、恋人だってできなかった。誰かと深く関われば、自分のこの曖昧な存在が、相手を傷つけるのではないかと、いつも不安だった。

レオは、騎士になることを夢見ていた。男性として生きていくことを、漠然と望んでいた。剣の訓練は、レオの体を鍛え、心を強くした。しかし、剣を振るう腕の筋肉の下には、時に柔らかな女性らしい肌が感じられた。その矛盾に、レオは苦しんだ。

そんなレオの前に、ある日、王国の使者が現れた。王太子、ジルベールが、レオを正妃候補として選んだというのだ。

レオは言葉を失った。正妃? まさか。自分など、男とも女とも言い切れない、中途半端な存在だ。ジルベールは、レオの奇妙な体を知っているのだろうか? それとも、知らずに、この奇妙な存在を、自分の妻にしようとしているのだろうか?

レオは、王宮へと向かう馬車の中で、自分の胸に手を当てた。鼓動が、胸の中で荒々しく鳴っていた。それは、恐怖と、そして、奇妙な高揚感だった。

王宮は、きらびやかで、威圧的だった。レオは、華やかな衣装を着せられ、多くの貴族たちの視線に晒された。誰もが、レオを女性として見ているようだった。しかし、レオは、女性として扱われることに、激しい拒絶感を覚えた。

ジルベールは、想像以上に美しく、気品に満ちていた。しかし、その美しさは、レオにとって、重荷のように感じられた。ジルベールは、レオの性別について何も言及しなかった。しかし、レオは、ジルベールが自分の本当の姿を知れば、きっと失望するだろうと、確信していた。

レオは、王に謁見した。そして、大胆な提案をした。「私は、女性として後宮に入ることはできません。しかし、騎士として、男の姿のままで、王太子の傍に仕えることを許してください」と。

王は、しばらく沈黙した。そして、ゆっくりと頷いた。「面白い提案だ。ジルベールも、君の力が必要だと考えている。騎士として、王太子の護衛を務めよ」

こうして、レオは王太子の騎士となった。男装のままで、ジルベールと共に過ごす日々は、レオにとって、苦悩と安堵の繰り返しだった。ジルベールは、レオの性別について、一度も触れなかった。しかし、時折、レオの腕を握るジルベールの指先には、不思議な優しさが宿っていた。

ある夜、ジルベールは、レオに語りかけた。「レオ、あなたは、男でも女でもない。あなたは、あなた自身だ」と。

その言葉は、レオの心に深く響いた。レオは、初めて、自分の存在を受け入れることができた。性別など関係ない。自分は、ただ、レオなのだ。

そして、レオは二十歳を迎えた。その日、レオの体は、完全に男性の姿へと変わった。しかし、それは、レオにとって、さほど重要なことではなかった。レオは、すでに、自分自身を愛していた。そして、ジルベールも、レオを愛していた。それは、性別を超えた、純粋な愛だった。

レオは、王国の騎士として、そして、ジルベールと共に、幸せな日々を送った。女神の祝福は、呪いではなく、レオを強く、そして、優しくした。レオは、愛を知り、自分を知り、そして、世界を知ったのだ。
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