異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
70 / 753

永遠の五歳皇子と魔法使いの少女

しおりを挟む
イルナス皇子は、十六歳にして五歳児だった。ぽっちゃりとした頬、くるんと上がったまつげ、そして、何よりも驚くべきは、彼の精神年齢が本当に五歳だったことだ。

婚約破棄の知らせを受けた時、彼は新しいおもちゃを奪われた子供のように、大泣きした。兄のエヴィルダースが、婚約者であるレティシア王女を奪っていったのだ。イルナスには、その理由が理解できなかった。レティシア王女は、イルナスの持っていた、キラキラ光る宝石よりも、ずっと素敵なものだったのに。

さらに、イルナスは魔力を持たなかった。九歳までに発現するはずの魔力。宮廷では、「童皇子」と嘲笑された。魔法を使えない皇族なんて、役に立たない、存在価値がない、と。

しかし、運命の歯車は回り始めた。真鍮の儀式、次期皇太子を決める儀式で、イルナスは皇太子に選ばれたのだ。誰もが予想しなかった結果だった。理由は簡単だ。他の候補者は、派閥争いに忙しく、イルナスに目を向ける余裕がなかった。まるで、誰も彼を脅威とはみなしていなかったかのようだ。

しかし、歓喜もつかの間。イルナスの味方、老臣ヘーゼンは、彼に亡命を勧めた。宮廷には、イルナスを陥れようとする勢力が渦巻いている。力を持たないイルナスは、生き残れない。

「イルナス殿下、危険です。平民として、静かに暮らすのです。」ヘーゼンの声は、重かった。

そこで、ヘーゼンの弟子であるヤンが登場する。彼女は、魔法使いの少女。黒髪を三つ編みにして、いつも小さな杖を携えている。ヤンは、ヘーゼンの命令でイルナスを誘拐した。いや、正確には、保護したのだ。

誘拐されたイルナスは、最初は怖がっていた。しかし、ヤンは、彼が好きなお菓子を山ほど用意し、一緒に遊んだ。ヤンは、イルナスが本当に五歳児であることを理解していた。魔法使いの少女は、驚くほど子供好きだったのだ。

二人は、辺境の小さな村に身を潜めた。イルナスは、そこで初めて、本当の自由を味わった。宮廷での窮屈な服ではなく、動きやすい服。豪華な食事ではなく、村の子供たちと食べる、素朴なパンとスープ。そして、ヤンとの楽しい日々。

ヤンは、イルナスに魔法を教えた。イルナスは、魔法の才能はなかったものの、ヤンが教えてくれる魔法の理論には、子供らしい独特の視点で理解を示し、意外な発想でヤンを驚かせた。

イルナスは、村の子供たちと遊び、ヤンは、村の人々と協力して生活した。イルナスは、五歳児ながら、子供たちをまとめる不思議な力を持っていた。まるで、小さな王様のように。

ある日、宮廷からの追手が村に現れた。エヴィルダースが、イルナスを排除しようとしていたのだ。しかし、ヤンは、魔法で巧みに追手を欺き、イルナスを守った。

イルナスは、村の子供たちと、ヤンと一緒に、森に逃げ込んだ。そこで、イルナスは、今まで感じたことのない、強い感情に気づいた。それは、ヤンへの友情、いや、それ以上の感情だった。

そして、イルナスは、ヤンに言った。「ヤン、僕、大きくなったら、ヤンと結婚する!」

ヤンは、照れくさそうに頬を染めた。彼女は、イルナスの純粋な気持ちに、心を打たれたのだ。

イルナスは、五歳児のままだったかもしれない。しかし、彼は、村で、ヤンと、そして村の人々と共に、幸せな日々を送っていた。宮廷の陰謀も、兄の策略も、彼には関係ない。彼にとって大切なのは、目の前にいる、大切な人達だけだった。

それから何年も経ち、イルナスはいつまでも五歳のままだった。しかし、彼の心は、大きく成長していた。彼は、魔法使いの少女ヤンと、永遠の五歳皇子として、幸せに暮らした。そして、その幸せは、誰も奪うことができなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...