異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
78 / 753

薬師の呪縛と、勇者と、そして、彼女の笑顔

しおりを挟む
俺は、アルフレッド。史上最年少で国家公認薬師筆頭になった、超エリート……のはずだった。王都の一等地に屋敷を建て、庭には彼女が憧れていたという伝説の「星影の花」を咲かせた。すべては、幼馴染で婚約者のリリアのために。

リリアは、俺のことをすごく可愛がっていた。いや、可愛がっていた、と思っていた。だって、毎日俺の手料理を喜んで食べて、俺が作った薬で元気になって、俺が作った庭を喜んで散歩していたんだもん。

ところが、ある日、衝撃の事実を突きつけられた。

「アルフレッド、私……勇者様のことが好きなの」

勇者様って、あの、髪は金髪で、目は青くて、いつも笑顔で、だけどどこか抜けてて、戦闘能力は超絶高いけど、日常生活能力はゼロみたいな、あの勇者様?

「……え?」

俺は、言葉を失った。

リリアは、キラキラした目で勇者、レオンのことを語った。レオンが戦場で見せた勇姿、レオンの優しさ、レオンの笑顔……まるで、俺が今までリリアにしてきたこと全部が、空気だったかのように。

「アルフレッドのことは、兄のように……友達のように……大切な存在よ。でも、愛は……違うの」

その言葉は、俺の心に突き刺さった。今まで、俺はリリアのために、必死に頑張ってきた。薬師の勉強に励み、地位を築き、屋敷を建て、庭を作った。全ては、リリアを幸せにするためだったのに。

全てが、無駄だったのか?

その日の夜、俺は酒を飲んで酔いつぶれた。

次の日、二日酔いで頭がガンガンする中、屋敷に人が押し寄せた。

「アルフレッド様!お元気そうで何よりです!」

「薬師アルフレッド様、お待たせいたしました!」

「アルフレッド様、私にお薬をください!」

なんと、王女様をはじめ、貴族の令嬢、隣国の王女、そして、冒険者ギルドの受付嬢まで、みんな俺に群がってきた。

「……え?」

どうやら、俺はリリアに振られたことで、なぜかモテモテになっていたらしい。

リリアは、俺がリリアに夢中だったため、俺の周りには女性が全くいなかったと勘違いしていたらしい。彼女が見ていたのは、俺の「リリアへの一途な愛」という、歪んだフィルターを通しての世界だったんだ。

俺は、彼女に振られたショックで、自分のことを「村人」だと思い込んでいた。彼女に振られた後、初めて自分の本当の価値に気付いたんだ。

王女様は、俺の作った薬を絶賛し、貴族の令嬢たちは俺の屋敷に招待されたいと騒ぎ、隣国の王女は俺と結婚したいと言い出した。冒険者ギルドの受付嬢は、俺に恋をしていたらしい。

俺は、最初は戸惑った。しかし、彼女たちの笑顔を見て、少しだけ心が軽くなった。リリアに振られた悲しみは、まだ消えていない。だけど、俺には、彼女たちという新しい光が見えてきた。

レオン? あの勇者?

彼は、相変わらず空気を読まず、王宮で転んで怪我をしていた。俺は、当然のように彼を治療した。

「アルフレッド、ありがとうな!」

レオンは、いつものように無邪気な笑顔で言った。

俺は、ため息をついた。あの笑顔は、確かに魅力的だ。だけど、もう、俺の心を奪うことはできない。

だって、今は、俺の周りに、たくさんの笑顔があるんだもの。

リリアは、俺のことが好きじゃなかった。でも、それはそれでいい。

俺は、もう悲しくない。

だって、俺は、モテモテなんだもの。


それから数ヶ月後、俺は王宮の庭園で、たくさんの女性たちに囲まれて、笑顔で星影の花を眺めていた。

リリアは、時々、俺の屋敷を訪ねてくる。そして、いつも、申し訳なさそうに、でも、少し羨ましそうに、俺の笑顔を見ている。

ざまぁない。


俺は、最高の薬師であり、最高のモテ男だ。


そして、俺は、彼女たちの笑顔を守る。


それが、俺の、新しい幸せだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...