異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
97 / 753

双六の魔王

しおりを挟む
僕は、ゲームのやりすぎで寝落ちしたはずだった。目が覚めると、そこは緑が生い茂る森の中。空は妙に青くて、鳥の鳴き声がけたたましい。

「おい、誰かいるかー!」

声を出してみたけど、返事は何もない。スマホは圏外だし、パニックになってきた。

その時、目の前に現れたのは、奇妙な格好をした男だった。頭に角が生えてて、服はボロボロ。まるで、ゲームに出てくる敵キャラみたいだ。

「お、お前は…人間か?」

男は、ぎこちない日本語で話しかけてきた。どうやら、この世界はゲームの中の世界らしい。しかも、この男は、この世界の魔王、というのだ。

「魔王って…冗談でしょ?」

「冗談じゃない!俺は、この国の王様を倒して、魔王になったんだ!」

魔王は、誇らしげに胸を張った。でも、その姿は、全然怖くない。むしろ、ちょっと哀れだった。

「王様を倒して…それで幸せか?」

「幸せ?…まあ、そうだな。王様の奴隷だった国民は、俺の奴隷になっただけだ。別に、幸せかどうかは関係ない」

魔王の言葉に、僕は少し引いた。確かに、ゲームの世界観と一緒だけど、現実で聞くと、ちょっと違う。

「ところで、お前は何しに来たんだ?」

魔王は、急に僕のことを気にし始めた。

「ゲーム…いや、寝落ちしたんだと思う」

「ゲームか…なるほど。面白いな」

魔王は、急に目を輝かせた。どうやら、彼はゲームが好きらしい。

「実はな、俺は双六が大好きなんだ。でな、お前と双六勝負をしようと思う!」

魔王は、大きな双六盤を取り出した。それは、宝石で飾られていて、すごく豪華だった。

「双六?…勝ったらどうなるの?」

「勝ったら、この世界のどこへでも行けるぞ!好きなだけ、自由を満喫できる!」

魔王は、ニヤリと笑った。これは、もしかしたら、現実逃避のチャンスかもしれない。

ゲームの知識を活かして、俺は魔王と双六勝負をすることにした。

最初は、魔王の圧倒的な強さに押された。彼は、ずる賢くサイコロを振るし、ルールを捻じ曲げる。

「おいおい、反則だろ!」

「ルールなんて、俺が決めるんだ!」

魔王は、悪びれることなく、言った。しかし、僕は諦めなかった。ゲームの知識を駆使し、彼の隙を突いていく。

何度も何度も勝負を繰り返し、最終的に、僕は魔王を破った。

「…まさか…負けたか…」

魔王は、信じられないという顔をしていた。

「約束通り、どこへでも行けるぞ」

僕は、少し考えた後、こう言った。

「この世界から、帰りたい」

魔王は、驚いた顔で僕を見た。

「…そうか。わかった。お前を元の場所へ送り返してやる」

魔王は、不思議な力を使い、僕を元の部屋へと送り返してくれた。

目が覚めると、自分の部屋だった。ゲームの画面が、そのまま残っていた。

全て夢だったのかもしれない。でも、魔王との双六の勝負は、鮮明に覚えている。

それからというもの、僕はゲームをやる気がなくなった。

ゲームの世界は、現実とは違う。現実には、魔王も、双六勝負もない。

でも、あの魔王との出会いは、僕の人生を変えた。

あの双六盤、あの宝石の輝き、そして魔王の哀愁漂う顔。

あれは、きっと、忘れられない思い出になった。

そして、僕は、現実の世界で、自分の「自由」を探し始めた。それは、魔王がくれた、最高の贈り物だったのかもしれない。

それから数年後、僕は、小さなカフェを開いた。決して大金持ちになったわけではないけれど、自分のペースで、自由に暮らしている。

時々、あの魔王のことを思い出す。

彼は、きっと、今もあの世界で、誰かと双六をしているのだろう。

そして、僕は、自分の作ったカフェで、静かにコーヒーを飲む。

それは、魔王との双六勝負で得た、本当の自由だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...