異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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悪役令嬢の野菜畑と、働く王子

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卒業式。華やかな会場で、王太子レオは、マイクを握り、震える声で告げた。「シルヴィアーナ・メルコリーニ! そなたとの婚約は破棄する!」

会場はどよめいた。シルヴィアーナ、通称シルヴィは、内心でガッツポーズを決めた。この瞬間を、どれだけ待ち望んでいたことか!

「はい! 喜んでお受けします!」シルヴィは、満面の笑みで答えた。

レオは、予想外の返答に言葉を失った。婚約破棄を告げられたはずのシルヴィは、まるで宝くじに当たったかのような顔をしている。

実は、この婚約破棄劇、シルヴィの綿密な計画だった。前世で社畜として働き詰めだった彼女は、転生したこの世界が、自分がプレイしたクソゲー「王宮恋愛記」だと気づいていた。そのゲームで、彼女は悪役令嬢として、王太子と婚約破棄され、悲惨な最期を迎える運命にあった。

しかし、シルヴィは違う。彼女は、ゲームの攻略法を熟知し、ラスボス級の魔法、「火の玉レシーブ」を駆使して、レオがでっち上げた「婚約者を虐めた」という濡れ衣を完璧に論破したのだ。さらに、慰謝料として莫大な金額を上乗せしてもらう交渉に成功していた。

これで、念願の農場経営が実現する。広大な土地と最新鋭の農機具を揃え、シルヴィは夢のスローライフを満喫するつもりだった。

だが、平穏な日々はそう長くは続かなかった。レオの弟、王子アルフレッドが、農場に押しかけてきたのだ。「姉上は王家に対して何かたくらんでいるのだろう」と、彼はシルヴィを疑っていた。

「たくらみ?そんなもの、ありませんよ!」シルヴィは、明るく笑って答えた。

アルフレッドは、シルヴィの行動を監視するために、農場に居座り始めた。「見張り」と称して。

「別に構いませんよ。後ろ暗いところなんて何もありませんから。どうぞご自由に」

シルヴィは、アルフレッドを雇って、農作業を手伝わせることにした。慰謝料で得た莫大な金額を、アルフレッドの労働賃金として支払うつもりだ。

アルフレッドは、最初は嫌々ながら働いていたが、シルヴィの驚くべき農業スキルと、魔法を使った効率的な作業に、徐々に感心し始めた。

シルヴィは、四大精霊を操り、作物を育て、家畜を飼い、美味しい料理を作り、ダンジョンに潜って珍しい食材を手に入れた。彼女の作る料理は、想像をはるかに超える美味しさで、アルフレッドは毎日、シルヴィの手料理に舌鼓を打っていた。

ある日、巨大なドラゴンが農場に現れた。アルフレッドは怯えたが、シルヴィは、冷静にドラゴンと交渉し、農場に害を与えることなく、仲良く暮らす約束を交わした。

アルフレッドは、シルヴィの強さと優しさ、そして、想像をはるかに超える能力に圧倒された。彼は、シルヴィが、ただの悪役令嬢ではなく、S級冒険者「シルヴィ・リーニ」であることを知った。

そして、アルフレッドは気づいた。シルヴィは、王家に対して何もたくらんでいなかった。彼女が望んでいたのは、ただ、平和で幸せなスローライフを送ることだけだったのだ。

アルフレッドは、シルヴィに謝罪し、彼女を心から尊敬するようになった。彼は、シルヴィの農場で働き続け、彼女のスローライフを支えることを決めた。

シルヴィは、アルフレッドの労働力と、彼の誠実な態度に感謝し、彼に昇給を申し出た。レオからの慰謝料で得た莫大な金額は、まだまだ残っていたのだ。

こうして、悪役令嬢シルヴィは、元婚約者とその弟の労働力と、莫大な慰謝料を元手に、夢のスローライフを手に入れた。彼女の農場は、近隣の人々にも評判となり、繁盛する農園へと成長していった。

そして、シルヴィは、前世の社畜生活とは全く異なる、幸せな日々を送るようになった。すべては、婚約破棄という「幸運」から始まったのだ。
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