異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
136 / 753

魔王軍の料理番、勇者を討つ

しおりを挟む
深い森の中、私は一人だった。辺りは薄暗く、不気味な音が聞こえてくる。2年前、事故で夫を亡くし、シングルマザーとして必死に生きてきた私。息子、蓮と一緒に異世界に召喚されてから、もう数ヶ月が経つ。

召喚したのは、この世界の「勇者」を名乗る連中だった。蓮は、まだ中学一年生。そんな子供を魔王と戦わせるなんて、とんでもない話だ。必死に反対したけれど、邪魔者扱いされ、この森に捨てられたのだ。

絶望しか感じなかった。力もない、魔法も使えない、ただの平凡な主婦が、この森で生き残れるわけがない。涙が止まらなかった。

その時だった。

「大丈夫か?」

低い声が聞こえた。振り向くと、大きな体に鋭い爪を持つ、ゴブリンが立っていた。ゴブリンって、絵本でしか見たことないような…怖い生き物だ。

しかし、ゴブリンは私を襲わなかった。むしろ、心配そうに私を見ていた。

その日から、私はゴブリンたちと暮らすようになった。最初は怖かったけれど、ゴブリンたちは思ったより優しい連中だった。彼らは、人間に追われ、この森でひっそりと生きていた。

彼らの生活は、決して豊かではなかった。食べるものも少ない。そこで、私の特技が役に立った。

私は料理が得意なのだ。夫が大好きだった料理を、毎日作ってあげた。そして、ゴブリンたちにも、私が知っている限りの料理を振る舞った。

最初は警戒していたゴブリンたちも、私の料理の美味しさに心を奪われた。特に、私が作った「肉じゃが」は、彼らの間で大ヒット。ゴブリンたちは、私のことを「料理上手な人間」と呼ぶようになった。

日を追うごとに、ゴブリンたちとの距離は縮まった。彼らの悲しみや喜びを共有し、私は本当の家族のような気持ちになった。

ある日、ゴブリンの王、グルーチョが私に言った。

「人間と戦うのは嫌だ。だが、このままでは、我々は滅ぼされるだろう」

グルーチョは、人間を倒すのではなく、共存する方法を探していた。そして、そのために、私の力を必要としていた。

私の料理は、ゴブリンたちの士気を高め、人間との交渉の役に立つかもしれない。そう考えたのだ。

私は、ゴブリンたちの願いを叶えることにした。私の料理の腕と、持ち前の機転を利かせて、人間とゴブリンの橋渡しをしよう。そう決めた。

最初は小さなことから始めた。人間が捨てた食べ物を集め、ゴブリンたちと分けて食べることから。徐々に、人間との接触を増やしていった。

そして、ある日、私は魔王軍の一員になっていた。

まさか、こんなことになるなんて…想像もしていなかった。

魔王軍の幹部として、私はゴブリンたちと協力し、人間との交渉を進めていた。

しかし、その交渉の最中、私は蓮と再会することになる。

蓮は、勇者として、魔王軍と戦うために、この地に来ているのだった。

母と子の再会は、戦場で敵同士として。

私の心は、激しく揺れた。

「蓮!逃げて!」

私は叫んだ。しかし、蓮は私の言葉を無視し、剣を構えて襲いかかってきた。

「お母さん…邪魔だ!」

蓮の目は、冷たかった。

私は、涙をこらえながら、蓮に料理を差し出した。

「これは…肉じゃがよ。あなたが小さい頃、一番好きだった料理」

蓮は、一瞬、私の言葉を聞き入っていた。しかし、すぐに冷静さを取り戻し、剣を振り下ろした。

私は、反撃するしかなかった。

私の武器は、包丁と、機転。そして、愛する息子を守るため、私は戦う。

ゴブリンたちと協力して、私は蓮を倒すことはできない。しかし、蓮を無事に連れ帰る方法を見つけ出さなければならない。

アラフォーおばさんの反撃は、今、始まったばかりなのだ。  この戦いは、母と子の戦い、人間と魔物の戦い、そして、生き残るための戦い。

私は、この森で、そしてこの世界で、生き延びなければならない。蓮を取り戻すため、そして、ゴブリンたちを守るため。

私の戦いは、まだまだ続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...