異世界ファンタジーまとめ【短編集】

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辺境伯ギュギュンタロスと、奪われた婚約者

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辺境伯領の領主、ギルバート・フォートレスは、書類の山に埋もれていた。机の上、床、そしてなんと、頭の上にも書類が積み上がっていた。そのどれもが、彼の新しい婚約者、公爵令嬢エリザベス・ド・ヴァロワに関する情報だった。

「……ええと、ヴァロワ家系図、ヴァロワ家所有地一覧、エリザベスの趣味嗜好、得意料理、苦手なもの、好きな色、嫌いな色、愛用する香水、過去に飼っていたペットの種類と名前……そして、なんと、宇宙艦隊所属歴?」

ギルバートは、額に汗を滲ませながら、書類を一枚一枚めくった。辺境伯とはいえ、彼の領地は辺境とはいえ銀河系の一角であり、宇宙艦隊なんてものは聞いたことがなかった。エリザベスは、なんと宇宙艦隊の准将経験者らしい。しかも、蛮族の襲撃から領地を守ったこともあるという。

「蛮族……って、あの、宇宙船に乗って襲ってくるやつらか? うちの領地は、せいぜい山賊ぐらいしか来ないのに……」

ギルバートは、情報量の暴力に圧倒されていた。彼は、王都で出会ったエリザベスに一目惚れし、結婚を申し込まれたのだ。しかし、この膨大な情報量の前に、彼は完全に委縮していた。エリザベスは、王宮の社交界では静かで上品な令嬢として知られていたが、その裏には、想像を絶する経歴が隠されていたのだ。

さらに、書類の山から一枚の古い写真が出てきた。そこには、エリザベスと、見慣れない男が写っていた。男は、エリザベスに腕を回し、満面の笑みを浮かべている。そして、その男は、ギルバートの妹、セリアに瓜二つだった。

「……まさか、この男が……」

ギルバートは、冷や汗をかいた。彼は、セリアが王都で何をしているのか知らなかった。まさか、エリザベスと関係があるなんて考えもしていなかった。まさか、婚約破棄なんてことになるとも思っていなかった。

その晩、ギルバートは、エリザベスと会うことにした。彼女は、予想以上に美しく、気品に満ちていた。しかし、ギルバートの心は、不安でいっぱいだった。彼は、エリザベスに、妹と男の写真を見せた。

エリザベスは、少し驚いた表情を見せた後、静かに説明を始めた。

「あの男は、私の双子の兄です。彼は、宇宙艦隊で活躍していましたが、数年前に事故で亡くなりました。セリア様とは、王都で知り合い、親しくしていたようです。写真については、兄の遺品整理をしていた時に見つかりました。セリア様には、兄の死を知らせていませんでした。」

ギルバートは、言葉を失った。セリアは、エリザベスの兄の死を知らされていなかったのだ。そして、エリザベスは、その事実を隠していた。なぜ?

「兄は、生前、セリア様に好意を抱いていたようです。私は、兄の気持ちを尊重し、セリア様と、兄の代わりとして親しくしていました。しかし、結婚は、兄の望みではありませんでした。私は、ギルバート様と結婚する意思は、本物です。」

エリザベスの言葉は、誠実で、ギルバートの心を揺さぶった。彼女は、自分の過去を隠していたが、それは、ギルバートを傷つけるためではなかった。兄の遺志と、自分の気持ちの板挟みになっていたのだ。

ギルバートは、エリザベスの過去に驚愕し、そして、少しだけ、彼女の強さに惹かれていた。宇宙艦隊の准将、蛮族との戦い、そして、兄の死と、その後の複雑な感情。それら全てを受け止め、それでも前を向いて生きている彼女の姿に、彼は心を打たれた。

彼は、書類の山を片付けることを諦め、エリザベスに抱きついた。「結婚しよう。君の過去は、問題じゃない。むしろ、興味深い。」

エリザベスは、微笑んだ。「ありがとうございます。でも、宇宙艦隊の訓練は、あなたにも受けてもらう必要がありますよ。蛮族の襲撃は、いつ起こるか分かりませんから。」

ギルバートは、ため息をついた。辺境伯の仕事に加えて、宇宙艦隊の訓練までしなければならないのか。情報量の暴力は、まだ終わっていなかった。しかし、彼の心には、希望と、少しの興奮が芽生えていた。彼の新しい生活は、想像をはるかに超えるものになるだろう。そして、それは、決して退屈なものではなかった。  彼の辺境伯領は、銀河系の中でも、最もエキサイティングな場所になるだろうと、ギルバートは確信していた。そして、その中心には、彼の愛するエリザベスがいた。
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