異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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平凡令嬢の不本意な事件簿

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アリシャは、ヒルヘイス子爵家の令嬢だった。前世の記憶がある、と聞いても驚く人は少ない。この世界では、前世の記憶を持つ人間は珍しくなかったのだ。アリシャ自身も、その一人。だけど、記憶があるだけで、特に特別な能力があるわけでも、目立つ才能があるわけでもなかった。ごくごく普通の、どこにでもいる令嬢だった。

別にそれが嫌ではなかった。平凡で、穏やかな日々を過ごすのが、アリシャにとって一番幸せだったのだ。派手な社交界の華やかなパーティーよりも、静かな書斎で本を読む方が好きだったし、激しいダンスよりも、ハーブティーを飲みながら庭を散歩する方が好みだった。

そんなアリシャの平凡な日々は、ある婚約披露パーティーで一変した。

それは、子爵家と公爵家の繋がりを強める、盛大なパーティーだった。きらびやかなドレス、豪華な料理、そして、どこまでも続く社交の輪。アリシャは、その華やかさに圧倒されながらも、静かに隅っこでハーブティーを啜っていた。

しかし、その静けさは、長くは続かなかった。

庭園の噴水近くで、若い女性が倒れているのを発見したのは、アリシャだった。最初は、酔いつぶれたのかと思った。しかし、近づいてみると、女性の顔色は青ざめ、息も絶えていた。

アリシャは、心臓がバクバクと音を立てているのがわかった。初めての体験だった。死体を見たのは、初めてだった。

悲鳴を上げることもなく、アリシャは冷静に、誰かに知らせようと考えた。しかし、その瞬間、誰かが彼女の肩に手を置いた。

「大丈夫ですか?」

振り返ると、そこには、婚約者の兄である、グラント公爵家の令息、レオンが立っていた。金髪の美しい青年は、心配そうにアリシャを見ていた。

レオンは、アリシャと同様に、女性の死体を発見した。そして、アリシャの冷静さに驚いたのか、事件の解決に協力しようと申し出た。アリシャは、内心「巻き込まないで!」と叫びたかったが、レオンの真剣な眼差しに押されて、渋々承諾した。

「…仕方ないですね。でも、私、全然役に立たないですよ?」

アリシャは、そう言いながらも、レオンと共に、女性の死因を調べ始めた。

まず、女性の身元を特定した。彼女は、隣国の伯爵令嬢、エミリーだった。そして、エミリーの遺体から、微量の薬物が検出された。

「これは…毒ですね」

レオンは、冷静に分析した。アリシャは、薬物に関する知識はほとんどなかったが、レオンの言葉にうなずいた。

二人は、パーティーの参加者たちに聞き込みを行った。エミリーに恨みを持つ者、エミリーと親しい者、様々な証言が飛び交った。

中には、エミリーの不倫を匂わせる証言もあった。アリシャは、少し驚いた。こんな華やかなパーティーの裏側では、想像もつかないようなことが起こっているのかと。

しかし、レオンは、冷静にそれらを分析し、徐々に事件の真相に近づいていった。

そして、最終的に明らかになったのは、エミリーが、パーティーに招待された別の令嬢に嫉妬し、彼女を陥れようとしたこと、しかし、逆に罠にはまってしまったことだった。嫉妬と策略が絡み合った、複雑な事件だった。

事件解決後、レオンはアリシャに感謝の言葉を述べた。アリシャは、内心「別に、何もしてないんだけど…」と思っていたが、レオンの言葉に、少しだけ嬉しくなった。

平凡な日々を過ごしたいと思っていたアリシャだったが、予想外の事件に巻き込まれたことで、少しだけ、人生に彩りが加わった気がした。そして、レオンとの関係も、少しだけ、変わった気がした。

パーティーの後、レオンから頻繁に誘われるようになった。最初は、事件の報告や、今後の対策など、公的なものだった。しかし、だんだんプライベートな誘いも増えていった。

アリシャは、レオンの優しさに戸惑いながらも、少しずつ彼に惹かれていった。平凡な令嬢アリシャの、不本意な事件簿は、予想外の恋へと繋がっていくのだった。  そして、アリシャは、平凡な日々を、少しだけ、特別なものに変えていくのだった。
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