異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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休暇中のアクシデント

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レクスターはソファに深く沈み込み、ため息をついた。三日間の強制休暇。商会の仲間たちの心配はありがたいが、正直、こんなに暇なのは久しぶりで落ち着かない。普段は書類の山に埋もれ、取引先との交渉に奔走している。休暇なんて、まるで異国の言葉のように感じられた。

リュシエンヌは買い物に出かけている。今日は彼女の大好きなイチゴのタルトが焼き上がる日だ。あの甘酸っぱい香りが、今にも漂ってきそうだ。リュシエンヌは、自分が想像する以上に、この休暇を喜んでくれるだろう。いや、喜んでくれる……はずだ。

だが、レクスターの心には、ちょっとした不安が芽生えていた。結婚して一年。リュシエンヌとは穏やかな日々を送っているつもりだが、どこかぎこちない部分もあった。以前の自分の失態を、彼女は本当に許してくれているのだろうか?  あの時の自分の醜態は、今でも鮮明に思い出せる。社交界で冷遇されていた日々、そしてリュシエンヌとの出会い。あの時、彼女がいなければ、自分は今頃どうなっていただろうか。

そんなことを考えていると、玄関のチャイムが鳴った。リュシエンヌが帰ってきたのだ。レクスターは急いで玄関に向かい、ドアを開けた。

「ただいま!」

リュシエンヌは、両手にいっぱいの買い物袋を抱えていた。その笑顔は、いつもと変わらなかった。しかし、レクスターは、彼女の顔色が少し悪いことに気がついた。

「どうしたんだ? 顔色が悪いぞ」

リュシエンヌは、少し戸惑った表情で言った。

「ちょっと、転んじゃって…」

彼女は、少しだけ腫れた膝を見せた。どうやら、転んで擦り傷を負ったらしい。レクスターはすぐに応急処置をし、心配そうにリュシエンヌの様子を見守った。

「大丈夫か? 医者に見てもらった方がいいんじゃないか?」

「大丈夫、大丈夫。たいした事じゃないわ」

リュシエンヌは軽く笑ったが、その笑顔は少しぎこちなかった。レクスターは、何かを隠しているのではないかと感じた。

夕食の準備をしながら、リュシエンヌは何かを思い出したように、急に言葉を切り出した。

「あのね、レクスター。実は…」

彼女は言葉を詰まらせ、ため息をついた。

「今日、宝石店に寄って、ネックレスを見たんだけど…」

レクスターは、リュシエンヌが何を言おうとしているのか、すぐに理解した。彼女は、高価なネックレスを欲しがっていたのだ。そして、それを買えなかったことを、申し訳なく思っていた。

「リュシエンヌ…」

レクスターは、彼女の言葉を遮った。

「お金の心配はいらない。欲しいものは何でも買っていいんだ」

リュシエンヌは、レクスターの言葉に驚き、そして少しだけ涙ぐんだ。

「でも…」

「大丈夫だ。休暇だから、明日一緒に選んであげよう。好きなだけ選んでいいんだぞ」

レクスターは、リュシエンヌの頭を優しく撫でた。彼女が転んで怪我をしたこと、そして高価なネックレスが買えなかったことを、彼女は心配していたのだ。だが、レクスターにとっては、リュシエンヌの笑顔こそが、何よりも大切な宝物だった。

翌日、レクスターはリュシエンヌを連れて、宝石店を訪れた。リュシエンヌは、最初は遠慮がちだったが、レクスターの励ましに、次第に笑顔を取り戻していった。彼女は、一つ一つ丁寧にネックレスを選んでいった。その姿は、まるで子供のように無邪気で、レクスターは心から幸せを感じた。

休暇の二日目、三日目も、レクスターとリュシエンヌは二人で過ごす時間を楽しんだ。普段は忙しくてなかなかできなかった、散歩やピクニック、そして、ただ一緒に過ごす時間。それだけで、二人の距離はぐっと縮まった。

休暇が終わる頃には、リュシエンヌの顔色はすっかり良くなり、レクスターも、休暇の充実感と、リュシエンヌへの愛情で満たされていた。強制的な休暇だったけれど、結果的に、二人にとってかけがえのない時間になった。そしてレクスターは、改めてリュシエンヌへの愛を再確認したのだった。
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