異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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鉄格子の楽園

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深い真紅のバラが、鉄格子の向こうで妖しく揺れていた。その向こう側、薄暗い部屋の中央に置かれた椅子に、私は座らされていた。聖女マナ。魔王を倒し、世界を救った、はずだった聖女が。

誘拐犯は、ルイス・フィルドー。乙女ゲーム『聖女と魔王の恋物語』の攻略対象キャラ、最強の大魔術師。ゲームではクールで、ちょっと近寄りがたい雰囲気の彼だったが、今の彼は…ただただ、不気味だった。

「ねぇねぇ誘拐犯、そろそろ飽きてきたんだけど」

私はため息をつきながら、鉄格子に寄りかかった。ルイスは、優雅にワインを嗜んでいた。

「なんだい? 慈悲深き聖女よ。飽きるほど、楽しい時間だったろう?」

彼の言葉には、皮肉がたっぷり含まれていた。楽しい時間?魔王討伐後、いきなり拉致監禁されて楽しいわけがない。

「楽しいわけないでしょ!ゲームのエンディングで、私が魔王を倒した直後でしょ?何なのよ、この状況!」

「ふふふ…君は、ゲームのエンディングを知りすぎている。本来なら、ここでハッピーエンドを迎えるはずだったのにね」

ルイスは、ワイングラスをゆっくりと置いた。その瞳は、まるで獲物を狙う獣のようだった。

「で、何がしたいわけ?身代金?それとも…私の命?」

「どちらも違う。私は、君を…独り占めしたいだけだ」

彼の言葉に、背筋が凍った。独り占め…だと?乙女ゲームの攻略対象キャラなのに、私は彼を攻略した覚えがない。彼と恋愛イベントが発生した記憶は、全くないのだ。

「はぁ?冗談でしょ?私は、勇者と結婚して、幸せな日々を送るはずだったのに!」

「勇者?あの、間抜けな男か。君は、彼を愛していたのかい?」

ルイスは、嘲笑うように口元を歪めた。確かに勇者、アレックスは…少し抜けていた。でも、彼と結婚するエンディングを迎えたことは事実だ。

「愛してたとか、そういうんじゃない!ゲームのシナリオ通りに、進んだだけよ!」

「シナリオ…面白い言い回しだね。だが、私のシナリオは、君をこの鉄格子の中に閉じ込めることだ」

それから数日後、ルイスは私のために豪華な食事を用意してくれた。美味しい料理、美しい食器…まるで、私を甘やかすかのように。

「ルイス…なんで私を?」

「君は、特別だ。他の女性とは違う。ゲームの聖女とは、まるで別人格のようだ」

「ゲームの聖女…って、私じゃないの?」

「いや、君は…ゲームの聖女の魂を宿した、別の存在だ。純粋で、強くて、それでいて…脆い」

ルイスは、私の手を優しく握った。その温もりは、まるで…本物の愛情のようだった。

「だから、君を独り占めしたい。この世界で、君だけを愛したい」

彼の言葉は、最初は恐ろしかった。しかし、彼の真剣な眼差しを見て、私は…少しだけ、心が揺らいだ。

それから数週間、ルイスは私を監禁しながらも、優しく接してくれた。美味しい料理を作ってくれ、綺麗な花を飾ってくれ、時には、一緒に本を読んだり、星空を眺めたりもした。

「ルイス…私、あなたを…少し好きかも」

ある夜、私は彼にそう告白した。彼もまた、私を抱きしめ、深くキスをしてきた。

「私もだ、マナ。君を愛している」

鉄格子の楽園…それは、決して理想的なものではなかった。しかし、ルイスとの日々は、予想外の幸せを与えてくれた。

ゲームのエンディングは、書き換えられた。魔王を倒した聖女は、最強の魔術師に愛され、鉄格子の楽園で、永遠の幸せを手に入れたのだ。


しかし、それはほんの一時的な幸せに過ぎなかった。ルイスの愛は、所有欲と執着に満ちていた。彼の愛は、私の自由を奪い、私を彼の所有物として扱うものだった。

ある日、ルイスは私に、魔法の力を与えた。彼の魔法は、強大な力を持っていた。彼は私に、彼を助けるよう、世界を支配するよう求めた。

私は、彼の愛が、歪んで狂気に染まっていることに気づいた。そして、私は、彼の愛から逃れることを決意した。

逃亡計画は、緻密に練られたものだった。ルイスが油断した隙を突き、私は魔法の力を使い、鉄格子を破壊した。そして、私は、この楽園から、飛び立った。

自由になった私は、再び、この世界を救うために戦い続けることを誓った。ルイスの愛は、私を苦しめた。しかし、その苦しみは、私を強くした。

私は、もう二度と、誰にも縛られることなく、自由に生きると決めた。そして、いつか、真の幸せを掴むだろうと信じていた。
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