異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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王女の恋人と国宝級令息の契約結婚

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テリル・クルジェットは、王国の貴族社会では「変わり者」として有名だった。彼女は蝶の標本を集めるのが趣味で、その数は王宮の図書館にも匹敵するほど。さらに、貴族社会の華やかな舞踏会よりも、森の中での野鳥観察を好んだ。そんな彼女に、国宝級令息イラリオン・スヴァロフからの求婚が舞い込んだのだ。

イラリオンは、戦争で英雄となり、その美貌と才覚で女性たちを虜にしてきた。彼の求婚は、王国中を騒がせた。しかし、その相手がテリルだったという事実に、人々は驚きを隠せない。テリルは、イラリオンのような完璧な男性とは程遠い存在だったからだ。

イラリオンがテリルを選んだ理由は、王女の恋人を出し抜くためだった。王女は、イラリオンと結婚することを国王から命じられていたが、彼女はすでに心許せる恋人を持っていた。イラリオンは、親友である王太子からその事実を知らされ、王女との縁談を回避するために、誰にも予想できない相手を選んだのだ。そして、その「誰にも予想できない相手」が、まさにテリルだった。

求婚の知らせを受けたテリルは、驚きを隠せないながらも、ある条件を提示した。「契約結婚」だ。期限を設け、その期間中に愛し合うことができなければ、離婚する。イラリオンは、テリルとの結婚に恋愛感情は全くなく、あくまで王女との縁談を回避するための手段としてしか考えていなかったが、この条件を受け入れた。彼は、どんな相手でも、契約期間内に愛を育む自信があった。

結婚式は、盛大に行われた。しかし、その様子はどこか異様だった。イラリオンは、テリルの蝶の標本コレクションに感銘を受け、彼女が森の中で野鳥を観察する様子を静かに見つめていた。テリルは、イラリオンの優しさに、徐々に心を開き始める。

契約結婚生活が始まった。イラリオンは、テリルに合わせた生活を送ることにした。一緒に蝶の標本を整理したり、森を散策したり、テリルが好きなことを一緒に楽しむことで、彼女の心の奥底にある繊細な部分を理解していった。彼は、テリルが貴族社会に馴染めず、孤独を感じていることに気づいた。

一方、テリルは、イラリオンの優しさに触れ、彼の完璧な外面の裏にある、人間らしい一面を見ていく。彼は、英雄として崇められることに疲れており、真の幸せを求めていたのだ。テリルは、彼の孤独に寄り添い、彼の心を癒していく。

最初はただ、王女との縁談を回避するための手段だった結婚生活だったが、二人の間には、徐々に特別な感情が芽生え始めた。イラリオンは、テリルの自由奔放で、誰にも媚びない性格に惹かれ、テリルは、イラリオンの優しさ、そして彼の中に隠された脆さに心奪われていった。

契約期間が半分過ぎた頃には、二人は互いに恋心を抱いていた。イラリオンは、テリルへの愛を自覚し、契約結婚が、彼の生涯における最大の幸運だったと確信した。テリルもまた、イラリオンへの愛を認め、彼との未来を真剣に考えるようになった。

契約期間が満了する日、イラリオンはテリルにプロポーズした。それは、契約結婚の延長ではなく、真の愛に基づいた結婚だった。テリルは、彼のプロポーズを受け入れた。

王宮では、王女と王女の恋人の関係が明らかになり、国王は王女と恋人を祝福した。イラリオンとテリルは、王室の祝福を受け、盛大な結婚式を挙げた。そして、二人は、蝶と鳥に囲まれた幸せな日々を過ごした。

イラリオンは、英雄としてではなく、テリルの夫として、そしてテリルは、変わり者令嬢ではなく、イラリオンの愛する妻として、王国で幸せに暮らした。二人の物語は、王国中に語り継がれ、真の愛は、どんな形にもあるということを証明したのだった。
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