異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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悪役令嬢の自衛戦略

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カサンドラは鏡に映る自分の顔をまじまじと見つめた。鮮やかなルビー色の髪、エメラルドグリーンの瞳、そして、いかにも「悪役令嬢」然とした鋭い顔立ち。  ああ、確かに悪役令嬢っぽい。小説で読んだ通りの、まさにそれだ。

婚約者である王子、リヒャルトは優しくてイケメンだけど、正直、どうでもいい。王子妃になるなんて、全然興味ない。むしろ、この婚約自体が、私の人生における最大の災難になりそうな予感がビンビンする。

なぜなら、私はこの顔で生きている限り、いつ「悪役令嬢」として冤罪を着せられるかわからないからだ。  悪役令嬢といえば、主人公の邪魔をして、最後は悲惨な最期を迎えるのがお決まり。私の場合、実家もろとも滅ぼされる可能性すらある。それは絶対に避けたい。だって、美味しいケーキが食べられなくなるかもしれないんだもの!

そもそも、この婚約、私の意思とは全く関係ない。王家とカサンドラ家の政治的な取引の結果だ。私はただ、静かに美味しいケーキを食べて、趣味の刺繍に没頭したいだけなのに。

まず、第一段階。王子には、優しく、でも距離を置く。  「王子様、婚約は大変光栄ですわ。でも、私、実は…虫が苦手なんですの。」と、さりげなく弱みを見せる作戦だ。虫が苦手な悪役令嬢なんて、誰も信じないだろう。予想外の弱みを見せることで、警戒心を解かせる作戦だ。

次に、ヒロインであるセシリア。彼女は天使のように美しく、心優しく、まさに理想の女性。  だが、私は彼女を敵視するつもりはない。むしろ、仲良くなりたい。だって、仲良くなれば、私が悪役令嬢扱いされる可能性が減るじゃないか!

セシリアには、積極的に近づいてみた。「セシリア様、あの、一緒に刺繍しませんか?私の新しい針、すごく使いやすいんですよ!」と、持ち前の明るさで誘ってみる。セシリアは最初は戸惑っていたが、私の熱意に負けたのか、笑顔で承諾してくれた。

意外にも、セシリアは気さくで話しやすい子だった。一緒に刺繍をしながら、お互いの趣味や好きなものなどを話していると、あっという間に時間が過ぎた。  セシリアは私を悪役令嬢とは全く思っていないようだった。

しかし、安心はできない。いつ、何がきっかけで「悪役令嬢」のレッテルを貼られるかわからない。だから、常に証拠を確保しておく必要がある。

王宮のあらゆる場所に、小さな隠しカメラを設置した。もちろん、魔法で隠してあるから、誰にも気づかれない。これで、もし私に罪を着せようとする者がいたら、証拠を掴むことができる。

さらに、王宮の噂話や陰謀を聞きつけるために、侍女や使用人たちにこっそり金貨を配って、情報を集めるスパイ網を構築した。  これは、私のもう一つの趣味、情報収集の腕の見せ所だ。

そして、最後の策。それは、王宮から逃げることだ。  もちろん、普通に逃げるわけじゃない。  私は王宮の地下通路の秘密の抜け穴を発見し、そこに脱出用の馬車と十分な食料、そして金貨を隠しておいた。もし、状況が悪くなったら、すぐに逃げ出すことができるように。

日々、王子とセシリア、そして王宮の人々との交流を続ける中で、私は少しずつ、この世界に慣れていった。  そして、同時に、あることに気づいた。

リヒャルト王子は、私を「悪役令嬢」とは思っていない。彼は、私の強くて芯のある性格に惹かれているのかもしれない。  セシリアも、私をライバルとして見ているのではなく、友として接してくれている。

もしかしたら、私は悪役令嬢として描かれる運命ではなかったのかもしれない。  私の策謀は、自分を護るためのものであったが、結果的には、私自身と周りの人間との関係を築く助けになった。

鏡に映る自分の顔。相変わらず、悪役令嬢っぽい顔をしているけれど、今は、この顔でいることに、それほど不安を感じない。  美味しいケーキを食べながら、刺繍をして、時には王子やセシリアと楽しく過ごす。  これが、私の幸せな「悪役令嬢」の自衛戦略なのだ。  そして、地下通路の抜け穴は、私の秘密の隠れ家として、これからも大切に保管しておくことにした。
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