異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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高嶺の花の偽りの婚約

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真紅のバラが、ベルベットのテーブルクロスの上で妖しく輝いていた。その傍らに座る、エリーゼ・ド・ヴァロワは、完璧だった。真珠のような肌、漆黒の髪、そして、誰よりも輝くエメラルドグリーンの瞳。学園一の美少女、いや、美少女どころか、学園一の「完璧」少女と噂される彼女は、今、苦い表情を浮かべていた。

原因は目の前の婚約指輪。巨大なルビーが、光を反射して鋭く光る。美しい、と誰もが言うだろう。でも、エリーゼには、この指輪が重く、苦しく感じられた。

相手は、王国の第二王子、アルフレッド・フォン・アストリア。学園一のモテ男。金髪碧眼、スポーツ万能、頭も良く、優しいと評判の王子様は、まさに理想の王子様だった。なのに、エリーゼは、幸せを感じられない。

「エリーゼ、どうしたんだ? 顔色が悪いぞ。」

アルフレッドが、優しく声をかけた。彼の声は、エリーゼの心を少しだけ軽くする。でも、すぐに、重苦しい現実が押し寄せる。

この婚約、実は、偽物だったのだ。

エリーゼの父、ヴァロワ伯爵は、莫大な借金を抱えていた。その借金を返済するため、エリーゼは、アルフレッドと偽りの婚約をすることになったのだ。本物の婚約ではない。あくまで、金銭的な取引。

エリーゼは、アルフレッドに何も話していない。真実を知ったら、アルフレッドはどう思うだろう?失望するだろう。嫌悪するだろう。そんなこと、想像しただけで胸が締め付けられる。

「…何もありません。」

エリーゼは、作り笑いを浮かべて答えた。アルフレッドは、エリーゼの表情の変化に気づいているのか、いないのか。何も言わず、優しくエリーゼの手を取った。

「エリーゼは、本当に美しいな。」

アルフレッドの言葉は、エリーゼの心をさらに重くした。この優しさも、偽物ではないだろうか?エリーゼは、自分が本当に愛されているのか、疑い始めた。

一方、エリーゼには、幼馴染のレオがいる。彼は、いつもエリーゼを支え、励ましてくれた。エリーゼは、レオに本心を打ち明けようと思ったことがある。でも、怖かった。レオを悲しませたくない。レオを、この偽りの婚約に巻き込みたくない。

レオは、エリーゼの婚約を知り、複雑な表情を浮かべていた。彼は、エリーゼへの想いをずっと秘めていた。エリーゼは、彼の優しい笑顔の裏に隠された、悲しみを感じ取っていた。

ある日、エリーゼは、アルフレッドと二人きりでいる際に、思わず本心を吐露してしまった。

「…実は、この婚約は偽物なんです。」

エリーゼは、涙をこらえながら、全てを話した。アルフレッドは、驚きを隠せない様子だったが、すぐに冷静さを取り戻した。

「…そうだったのか。」

アルフレッドは、しばらく沈黙していた。エリーゼは、アルフレッドの怒りを覚悟していた。しかし、アルフレッドは、怒らなかった。

「…だが、僕は、エリーゼと婚約できて、幸せだ。」

アルフレッドの言葉に、エリーゼは、驚きを隠せない。

「…え?」

「エリーゼは、本当に美しいし、優しい。そして、一緒にいて楽しい。僕は、エリーゼを愛している。」

アルフレッドは、エリーゼの手を握りしめ、真剣な眼差しで言った。エリーゼは、涙が止まらなくなった。

「…でも、借金は…」

「心配するな。父に話をして、解決する。」

アルフレッドは、穏やかに言った。エリーゼは、アルフレッドの優しさに、心を奪われた。

そして、エリーゼは、レオに真実を話した。レオは、最初はショックを受けたが、エリーゼの幸せを願って、祝福してくれた。

その後、エリーゼとアルフレッドは、本当の婚約をした。そして、幸せな日々を送った。

偽りの婚約は、エリーゼとアルフレッド、そしてレオの絆を深める結果となった。真紅のバラのように、美しく、そして、強い絆が。
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