異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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氷の令嬢の溺愛

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十四歳のルドルフは、薄暗い部屋で目を覚ました。頭がズキズキと痛む。さっきまで、苦しくて苦しくて、息ができなかった。誰かが毒を盛ったんだ。そう確信した。そして、同時に、記憶が蘇った。前世の記憶が。

前世の自分は、辺境の村で暮らすごく普通の農民だった。名前も、特に覚えていない。特別なことは何もなく、平凡な人生を送っていた。それが、今、このバルディック帝国の第四皇子、ルドルフとして生き返っている。

さらに驚くべきことに、このルドルフは、歴史に名を残す暴君だった。三百年前に、その名を恐れられた男だ。そして、十八歳の時に、愛する女性を奪い、強引に妃にしたことで有名だった。その女性こそ、『氷の令嬢』と呼ばれるリズベット侯爵令嬢。そして、そのリズベットに暗殺される運命にあることを、ルドルフは知っていた。

「絶対に、リズベットと関わるわけにはいかない!」

ルドルフは決意した。前世の記憶と、この世界の歴史を鑑みるに、リズベットは恐ろしいほどに冷酷で、復讐心に燃える女性だった。そんな女性に狙われるのは、避けなければならない。

そこで、ルドルフは父親である皇帝に婚約者を探してもらうことにした。誰でもいい。リズベット以外の誰かと婚約すれば、リズベットの標的になることは避けられるだろう。そう考えた。

しかし、運命はルドルフの思惑をはるかに超えていた。

皇帝から提示された婚約者の名前は、リズベット・フォン・シュタインだった。

「まさか…!」

ルドルフは言葉を失った。婚約を申し出た手前、今さら断るわけにもいかない。どうすればいいのか、頭が真っ白になった。

「…とにかく、暗殺されないように、仲良くしなくては…」

ルドルフは、リズベットに近づき、彼女と少しでも仲良くなろうと努力することにした。まずは笑顔で接し、彼女の好きなものを探り、好意を示すように努めた。

しかし、リズベットの反応は、ルドルフの予想をはるかに超えていた。

リズベットは、ルドルフに異常なほどに執着し始めたのだ。ルドルフの言葉一つ一つに耳を傾け、彼の視線はいつもルドルフを追いかけ、彼のそばを離れようとしない。ルドルフが何かをすれば、すぐに駆け寄り、彼の世話を焼いた。

最初は戸惑っていたルドルフも、リズベットのひたむきな愛情に次第に心を奪われていった。彼女には、冷酷な氷の令嬢というイメージとは裏腹に、純粋で、一途な愛情が隠されていた。

リズベットは、ルドルフの前では、まるで別人のように甘えん坊で、可愛らしかった。ルドルフが少し悲しそうな顔を見せれば、すぐに慰め、ルドルフが喜びそうなことなら、何でもしてくれた。

ルドルフは、前世の記憶と歴史書で知っていた『氷の令嬢』のイメージと、目の前のリズベットの姿が全く違うことに驚愕した。彼女は、歴史書に描かれた冷酷な女性ではなかった。誰にも見せない、ルドルフだけへの愛情を、惜しみなく注いでくれた。

ルドルフは、リズベットに溺愛されていることに気づいた。それは、予想をはるかに超える、激しい愛情だった。

暗殺されるどころか、溺愛される。ルドルフは、運命の皮肉に苦笑した。しかし、同時に、この溺愛に、幸せを感じていた。

リズベットとの日々は、ルドルフにとって、想像以上に幸せなものだった。彼女はルドルフを支え、励まし、そして、いつも笑顔でいてくれた。前世の平凡な人生とは全く違う、輝かしい毎日だった。

十八歳の誕生日が近づいてきた。歴史では、この日にリズベットがルドルフを暗殺したとされている。しかし、今のルドルフとリズベットの関係は、歴史とは全く違っていた。

リズベットは、ルドルフの十八歳の誕生日を盛大に祝ってくれた。二人の愛は、ますます深まっていった。

ルドルフは、前世の記憶と、歴史という名の呪縛から解き放たれた。そして、リズベットとの、幸せな未来を信じていた。


あの時、毒を盛られたのは、もしかしたら、運命のいたずらだったのかもしれない。もしあの時、死んでいたら、この素晴らしい出会いはなかったのだ。ルドルフは、前世の自分と、今の自分の幸運に、心から感謝した。
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