異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

文字の大きさ
581 / 753

魔王の虚飾

しおりを挟む
古ぼけた王宮の地下室。埃っぽい空気の中、緊張感だけが張り詰めていた。王様は、震える手で魔法の円を描いていた。今まさに、勇者召喚の儀式だ。

「さあ、我が国の未来を託す勇者よ!現れ給え!」

王様の叫び声が、地下室に響き渡る。すると、円の中心から、光が噴き出した。眩しい光が収まると、そこに立っていたのは、なんと、ぽっちゃりとした女の子だった。

「えっと…私、勇者…?」

女の子、リリアは、勇者召喚の儀式で選ばれたという事実を受け止めきれていない様子だった。彼女は、冒険なんてしたことのない、ごく普通の女の子だったのだ。魔法なんて、全く使えない。剣も、一度も握ったことがない。

「勇者様…お、お願いですから魔王を倒してください…」

王様は、リリアにすがるように懇願した。国は、魔王の脅威に怯えていた。毎年、魔王軍によって村が襲われ、人々は苦しんでいた。

リリアは、自分が勇者であるという事実に、戸惑っていた。しかし、人々の苦しむ顔を見て、彼女は決意した。自分が、この国の未来を救わなければならないと。

「…分かりました。魔王を倒します!」

リリアは、勇気を振り絞って宣言した。しかし、その心の中には、不安が渦巻いていた。彼女は、魔王がどんな存在なのか、全く知らなかったのだ。

リリアは、王宮の騎士、ガストンと共に魔王城へ向かった。ガストンは、勇者召喚に何度も立ち会ってきたベテラン騎士だったが、内心はリリアのぽっちゃりとした体型と、全く戦闘経験がないことに不安を感じていた。

魔王城は、想像を絶するほど巨大だった。そして、その城の内部は、迷宮のように複雑に繋がっていた。リリアとガストンは、数々の罠や魔物と戦いながら、魔王の居城へと進んでいった。

そして、ついに魔王と対峙する時が来た。魔王は、想像をはるかに超える姿をしていた。巨大な体躯、鋭い牙、そして、燃え盛るような赤い目。しかし、リリアは、その魔王の姿を見て、あることに気付いた。

魔王の体は、まるでマトリョーシカ人形のように、いくつもの層で構成されていたのだ。一番外側の層を破壊すると、その内側に、さらに小さな魔王が現れる。そして、その魔王を倒すと、またさらに小さな魔王が…

リリアは、この魔王が、実は創世神によって作られた、無限に再生する存在だと悟った。創世神は、人間に試練を与え、成長を促すために、この魔王を生み出したのだ。

リリアは、ガストンに指示を出した。「あの魔王、実はマトリョーシカ人形みたいになってる!一番内側の小さい魔王を倒せば、全部終わるよ!」

ガストンは、最初は信じなかったが、リリアの言葉通りに、一つずつ魔王の層を破壊していった。そして、ついに、一番内側の、小さな魔王が現れた。それは、驚くほど弱々しい姿をしていた。

リリアは、持っていた木の枝で、小さな魔王を軽く叩いた。小さな魔王は、悲鳴を上げて消滅した。

すると、巨大な魔王の体は、崩れ落ち、消滅した。魔王城も、跡形もなく消え去った。

リリアとガストンは、無事に王宮へ戻った。リリアは、魔王を倒した勇者として、国民から称賛された。しかし、リリアは、自分が本当に勇者だったのか、疑問を感じていた。彼女は、ただ、創世神が仕組んだゲームをクリアしただけなのかもしれない。

それでも、リリアは、人々を救うことができたという事実を、心の底から喜んでいた。そして、彼女は、これからも、人々のために、自分の力を使い続けようと誓った。王様は、リリアに感謝し、国を豊かにする政策を進め、平和な時代が訪れた。

しかし、誰も知らなかった。創世神は、すでに次の魔王、そして次の勇者召喚の準備を始めていたことを。  それは、永遠に続く、創世神の壮大なゲームの始まりだったのだ。  リリアの勝利は、ほんの一つの幕切れに過ぎなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...