異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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無自覚剣聖の田舎暮らし

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ベリル・ガーデナントは、鶏の声と朝の光で目を覚ました。50歳目前、腹は出ているし、髪は薄くなってきたが、それでも彼は幸せだった。レベリス王国のど田舎、ひっそりと構える自分の剣術道場で、のんびりとした日々を送っていたのだから。弟子は数人いたが、卒業後は皆それぞれの道へ。最近は新規の生徒も少なく、静かな時間が流れるのが心地よかった。

そんなある日、一人の女性が訪ねてきた。アリューシア。ベリルの元弟子で、かつては道場で一番熱心に稽古していた少女だ。今は随分と大人びて、凛々しい騎士の制服を着ていた。

「師匠!お元気そうで何よりです!」

アリューシアは、元気よく挨拶をし、いきなり衝撃的な事実を告げた。

「実は…師匠を、王立騎士団の特別指南役に推薦したんです!」

ベリルは、固まった。指南役? 自分なんかが?  彼は、自分の実力を冷静に評価していた。確かに剣の腕は確かだが、王国を揺るがすような大物ではない。ただ、田舎で細々と暮らすには十分な腕前だと思っていた。

「冗談じゃないよ、アリューシア。俺はこんな田舎で十分だ」

しかしアリューシアは、譲らなかった。

「師匠の教えがなければ、私は今の自分にはなれませんでした!王都の騎士団長も、師匠の弟子なんです!」

騎士団長?  ベリルは首を傾げた。自分の弟子が騎士団長? そんな大それた話、信じられない。

こうして、ベリルは否応なしに王都へと向かうことになった。王都に着くと、そこには想像をはるかに超える光景が広がっていた。騎士団本部は壮大で、アリューシアは騎士団長、なんと女性だった。そして彼女は、ベリルをまるで英雄のように歓迎した。

「師匠!お待たせいたしました!」

その後、次々とベリルの元弟子たちが現れた。一人目は、王国の最上位冒険者、ギルバート。巨漢で、凄まじいオーラを放っていた。二人目は、魔法師団のエース、セレーナ。美しい顔立ちとは裏腹に、恐ろしい魔力を秘めているようだった。三人は、ベリルを囲み、まるでアイドルを囲むファン集団のように熱狂的な歓迎ぶりだった。

ベリルは、彼らの活躍ぶりに驚きを隠せない。自分が教えた剣術が、ここまで彼らを成長させたとは。しかし、彼らに言われるがまま、特別指南役として働き始めると、その実力は想像以上だった。ベリルは、まるで無意識のうちに、驚くべき戦術を編み出し、騎士団の訓練を革新していった。

ベリルは、自分の強さを理解していなかった。ただ、弟子たちに教えられたことを、彼らがより強くなるように、ただ純粋に伝えていただけだった。しかし、その無意識の指導こそが、彼らを最強へと導いたのだ。

日を追うごとに、ベリルの名声は高まっていった。王都では、彼の指導を受けた騎士たちは次々と活躍し、ベリル自身も知らない間に、伝説的な剣聖として扱われるようになった。

しかし、ベリルはそれを全く自覚していなかった。彼は、ただ弟子たちと過ごし、剣術を教え、時々美味しい酒を飲むだけの、ごく普通の、しがない剣術師範だと思っていた。

ある日、実家の道場から追い出されそうになったベリルは、元弟子たちの協力を得て、王都に立派な屋敷を手に入れた。そこには、彼の元弟子たちが集まり、賑やかに暮らしていた。ベリルは、彼らの熱意に戸惑いながらも、穏やかな笑みを浮かべていた。

彼は、自分がどれほど凄い存在なのか、全く理解していなかった。けれど、彼を慕う弟子たちと、これから先も、穏やかな日々を送っていくのだろう。ベリルは、そう信じていた。そして、それはきっと、彼にとって、最高の幸せだった。
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