異世界ファンタジーまとめ【短編集】

テタの工房

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胡蝶の夢の夜語り

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俺が異世界に転移したのは、小学校低学年くらいの頃だった。記憶が曖昧で、どうやって来たのかさっぱり分からん。ただ、一つだけ覚えていることがある。それは、転移の代償として得た力だ。衛生魔法と、体調管理に特化した魔法。戦闘には全く役に立たない、まるで役に立たない魔法だった。

最初は絶望した。魔法使いって、カッコいい剣を振るったり、火球をぶっ放したりするもんだと思ってたから。俺の魔法じゃ、風邪を引いた猫を治すくらいしかできない。魔法使いとしての人生は、完全に詰んだと思った。

だけど、運が良かった。転移した世界は、魔法が普通に使われる世界だった。そして、俺は偶然にも、ある娼館のオーナーに助けられた。そのオーナーは、俺の魔法を高く評価してくれたんだ。

「お前さんの魔法は、戦闘には向かないが、うちにはうってつけだ。病気で働けなくなった娘もいるし、客の怪我の手当にも使える」

そう言って、オーナーは俺に娼館「胡蝶の夢」の支配人を任せてくれた。最初は戸惑った。娼館なんて、想像もつかなかった。でも、オーナーの言葉は本気だった。

「胡蝶の夢」は、色んな種類の女性が働く場所だった。美しい人間以外にも、雪女やサキュバス、吸血鬼といった人外もいた。最初は怖かったけど、みんな優しくて、すぐに打ち解けた。

俺の仕事は、彼女たちの健康管理と、客とのトラブルの処理だった。魔法で病気や怪我を治し、喧嘩やトラブルを仲裁する。戦闘魔法が使えない俺でも、この娼館では必要とされていた。

それから数年後。「胡蝶の夢」は、この街で最も繁盛する娼館になった。俺の魔法のおかげで、女の子たちはいつも健康で、客も安心して楽しめた。俺自身も、彼女たちと過ごすうちに、この仕事に誇りを持つようになった。

ある日、いつもと違う客が来た。男は、貴族のような身なりをしていた。高慢な態度で、俺に命令口調で話しかけてきた。

「一番人気の娘を連れてこい。そして、俺の部屋に用意しろ」

俺はその男を睨みつけた。「そんなことはできません」と、はっきりと言った。

男は怒り狂った。「生意気な!お前は誰だ!?」と叫び、俺に襲いかかってきた。

その男は、剣を持っていた。俺には魔法で反撃する手段がない。絶体絶命の危機だった。

その時、雪女のユキが俺の前に立ちはだかった。彼女は、男の剣を素手で掴み、簡単に折ってしまった。

「胡蝶の夢の支配人に手出しするとは、ずいぶんと度胸があるわね」

ユキは冷酷な笑みを浮かべ、男を凍らせてしまった。男は、氷の塊と化して、動かなくなった。

他の女の子たちも、男を威嚇するように、それぞれ独自の力を示した。サキュバスの魅惑的な歌声、吸血鬼の鋭い牙、そして、俺の魔法による、迅速な応急処置。

男は、完全に屈服した。そして、土下座をして謝罪した。

その事件の後、「胡蝶の夢」はさらに有名になった。俺たちの結束と、女の子たちの力を見せつけたことで、誰も「胡蝶の夢」に手出ししなくなった。

それから何年も経ち、俺は「胡蝶の夢」の支配人として、そして、彼女たちの仲間として、この異世界で幸せに暮らしている。俺の魔法は、戦闘には役立たないかもしれない。でも、俺には、この魔法で守るべきものがある。それは、「胡蝶の夢」の家族たちだ。

夜が更け、娼館「胡蝶の夢」の灯りは、今日も夜空に輝いている。金と情欲に彩られた夜の中で、俺と彼女たちは、明日への希望を胸に、静かに眠りにつく。
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